2021年12月27日月曜日

職員労働組合・横浜市従大学支部 2021-2022年度 活動方針について

12月17日、2021-22年度の横浜市立大学職員労働組合・横浜市従大学支部の大会を開催し、活動方針について下記の通り決定しましたのでお知らせします。


職員労働組合・横浜市従大学支部 2021-22年度 活動方針

  1. 働きやすい職場環境の確保への取り組み

    社会環境の激変とそれに伴う大学への要求の多様化、公的助成の削減など日本の大学を巡る環境は年々厳しさを増しています。特に横浜市立大学においては、法人化以降、全員任期制の導入、国立大学の比ではない大幅な経費の削減、市OB・市派遣幹部職員への経営権の集中による非効率な業務の増加と現場負担の増大など、国立大学法人、多くの公立大学法人に比べ非常に不安定な経営環境下に置かれることになりました。

    労働契約法の改正と法人化以降の取り組みの結果、固有常勤職員の任期制は廃止されたものの、それのみで固有常勤職員をめぐる諸問題が解決されたわけではなく、人材育成、人事評価、労働時間等の職場環境に関する多くの問題が残されています。雇用契約法改正による非常勤職員の一般職への移行に関しても、給与の改善は伴わないままの責任と負担のみの増が懸念され、新たに設けられた有期雇用職員から一般職への転換に関する公平性への疑念、一般職における短時間勤務とフルタイム勤務における時間当たりの給与格差など幾つもの問題が残されています。

    また、財政の膨張を支えていた附属病院経営の悪化はコロナ禍に伴う緊急支援という非常事態に伴う要因により一時的に好転していますが、あくまでも一時的な状況であり、今期中期計画における経営拡大方針という支出の拡大を前提とする基本的な方向性の下、固有常勤職員の給与体系の変更や教員に対する給与・賞与・退職金の削減提案など、しわ寄せが一般教職員の人件費に及んでいます。

    マクロ経済環境は消費税引き上げの影響に加え、新型コロナ禍による経済的打撃により、さらなる深刻化の可能性があります。過去の若年層の極端に偏った固有総合職採用と「法人財政の厳しさ」を謳いながら同時に行われている近年の経営拡大という構造的要因と併せ、今後、法人の経営はさらに悪化することが予想されます。組合の警告に耳を傾けることなく実施されたこれらの施策のつけを、経営責任を問うことなく一般教職員、そして学生に転嫁することは容認できるものではありません。さらに今回の新型コロナ禍は、在宅勤務など労働環境の激変をもたらしていますが、この点への法人の対応も十分なものではありません。

    大学に働く職員の職域を代表する労働組合としてこれらの問題に取り組み、法人化時の「固有職員の処遇は市職員に準じる」という労使合意を遵守させるとともに、職員の労働環境の改善、安心して働ける職場の確保に全力を挙げます。
  2. 組織拡大への取り組み

    法人化以降、市派遣職員の引き上げ・定年退職、固有職員の転職等に伴う組合員の減少が続いおり、固有職員の組合員については、すべての職種で様々な問題を抱え、かつ多忙化により目前の業務以外に目を向けるゆとりさえ失いつつある状況で組合の維持・拡大は依然として容易ではない状況です。

    また、若年層に広くみられる、労働環境や雇用条件等に問題を感じる場合、労働組合に加入して職場の改善に地道に取り組むのではなく転職を選択するという傾向は本学においても共通しており、固有職員組合員の退職による組合の脱退も続いています。

    組合ニュース【公開版】を通じた情報提供、問題提起等によりプロパー職員の組合に対する信頼・期待は高まっていますが、これを新規組合員の獲得・組織の拡大へとつなげていく必要があります。特に、近年は新規職員の一括採用が無くなり、これに合わせて実施していた広報・勧誘活動も行われない状態が続いているため、これらの取り組みの立て直しを図ります。また、職場集会、学習会などを通じてずらし勤務の試行導入や業務の多忙化で難しくなっている組合員相互の交流を確保・促進し、組合の基盤を強固なものとします。
  3. 常勤固有職員の給与体系変更、人事考課制度変更問題への取り組み

    2017年度来、交渉を行ってきたこれらの問題については一昨年8月、9月に相次いで大枠で合意しました。しかし、制度の具体的設計、運用等に関しては懸念すべき点が残っており合意時に確認した一定期間経過後の検証も合意時の約束に反し行われていません。また、市職員との処遇差が生じている住居手当に関しては、一昨年来、たびたび交渉再開を求めているにも拘らず、以前として交渉が行われないままとなっており、引き続き交渉再開を求めるとともに格差の解消に取り組みます。
  4. 嘱託職員、契約職員の一般職への移行に伴う問題への取り組み

    雇用契約法改正による非常勤職員の一般職への移行に関しては、一昨年7月に大枠に関して合意しましたが、その時点で本学嘱託職員と横浜市嘱託職員で月額4万円以上に格差が拡大していた給与についての改善は実現しませんでした。それにもかかわらず、正規職員化に伴い責任と負担のみの増が懸念される状況で、また、制度変更後の有期雇用職員から一般職への転換に関する公平性への疑念、一般職における短時間勤務とフルタイム勤務における時間当たりの給与格差など幾つもの問題が残されています。短時間勤務契約でありながら超勤の恒常化により実態としてはフルタイム勤務となっているにもかかわらず、この時間当たりの給与格差により、超勤手当を合わせても同じ時間働いたフルタイム契約の一般職より給与が少ないなどの問題も発生しており、これらの問題の解決を求めるとともに、横浜市嘱託職員並みの給与の獲得を目指して取り組みを継続します。
  5. 大学専門職の雇用問題への取り組み

    大学専門職制度は、国内の大学関係者等の大学職員の高度化への要請に対する先進的取り組みとして導入されたものでしたが、法人化直後から大学の経営権を事実上掌握した市派遣幹部職員によって、その趣旨を無視した制度運用が行われ、告発本の出版など様々な問題が起こってきました。組合執行委員でもある大学専門職2名についても3年ごとの契約更新の度に様々な問題に見舞われ、前回の契約更新に際しては、「学務教授」への変更について、教員、固有職員、横浜市職員に比して著しく均衡を逸した実現困難な基準を一方的に示すなど、職員の高度化や専門化とは相反する人事政策上の動きが続いています。労働契約法の規定により無期雇用転換権が発生しているため、任期制の問題は法人の方針とはかかわりなく強制的に解決されることになりましたが、高度専門職としての適正な処遇を求め、今後も取り組みを継続します。
  6. コンプライアンスに基づく労使関係確立への取り組み

    1.でも記したよう法人化以降積み重ねてきた交渉や組合ニュース【公開版】等を通じた指摘がある程度の影響を及ぼした模様で、法人化後の数年間の状況に比べれば担当者レベルでの対応に関してはある程度の改善が認められるものの、法人化後、事実上人事権等を掌握する市派遣幹部職員の労働3法、労働契約法を始めとする関係法令、制度等への知識・認識の不足が本学の労使関係の底流を流れており、それが人事制度、制度運用、個別の雇用関係トラブルに大きく影響を与えています。ただし、近年、政府の労働政策上の修正を反映したものと思われる労働基準監督署からの厳しい指導もあって、法人としても組合との関係も含め法令順守の姿勢を示さざるを得ない環境下に置かれています。これも追い風として関係法令及びそこで保障された労働者・労働組合の権利の尊重に基づく労使関係の確立を求め取り組みを続けます。
  7. 新型コロナ禍による雇用労働環境への影響に対する取り組み

    新型コロナ禍により、大学では民間企業などと同様に広く在宅勤務が行われるとともに、学生への教育の短期間でのオンラインへの切り替え、経済的困難におちいった学生への支援措置などの新たな取り組みが必要となりました。これに伴う労働環境上の問題については、すでに複数回にわたって当局側に対して要求や交渉を行っていますが、在宅勤務についてそもそもそれが業務命令によるものであることを否定するなど、非常時であることを考慮しても当局側の認識や対応には不審な点が目に付き、様々な問題が残されたままとなっています。適切な労働環境の確保と雇用環境の維持を目指して取り組みを続けます。
  8. 横浜市従本部、教員組合等との連携

    本学の労働環境は、法人プロパー教職員にとって非常に厳しい状態が続いています。横浜市従本部、病院組合、近年、金沢八景キャンパスにおける諸問題について共同で要求、交渉を行うことが増えている教員組合等との連携を深めつつ、山積する問題に取り組んでいきます。
にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ

日大事件と学校法人ガバナンス改革会議報告書 -リアリズムの欠如という病-

 日本大学前理事長とその側近とされる理事による一連の事件は逮捕、法人役員の地位の喪失などにより過去、彼らに絡んだ疑惑の浮上時とは異なる道を辿ろうとしているようです。これだけで日大が高等教育機関としてまともな方向へと変われるのかは、前理事長が理事長就任以前から長年にわたって法人内に扶植して来たであろう勢力の巨大さを考えると楽観はできないでしょうが、それでも1つの幕引きとはなるのでしょう。

 この日大事件と並行するように私学のガバナンスを巡る、これまでとは毛色の異なる新たな“改革”の検討が進んでおり、その最終的な結論が「学校法人ガバナンスの抜本的改革と強化の具体策」として12月3日に取りまとめ、公表されています。

 「毛色の異なる」としたのは、今回の“改革案”がこの20年ほどの“大学改革”の歴史 ― 文科省主導から財務省の意向が強く反映された時期、そして第2次安倍政権成立以降長く続いた官邸を主たる舞台とした与党政治家、産業界、経産省系官僚などの意向により決定される時期 ― とは異なる勢力により主導され、政策的にも連続よりも断絶の色彩が強いからです。具体的には、各種報道によれば今回の検討は10月の衆院選には出馬せず議員としては引退することになった厚労族有力議員の強いイニシアティブによるもの、ということのようです。なぜ厚労族が?と疑問に思ったのですが、当該議員は単なる厚労族というよりは企業への社外取締役導入にも大きな役割を果たし公益法人改革を主導した、「ガバナンス改革」に強い関心を持つ政策志向の強い政治家で、その人物がコーポレートガバナンス、公益法人ガバナンスと手掛けた末に、いわば議員としての最後の仕事として選んだのが学校法人ガバナンスだったということのようです。

 このような経緯を反映して、今回の案はこれまでの「トップダウンの強化」という全体的な方向性、私立大学に関するものとしては2004年私立学校法改正等による理事長、理事会の権限強化、評議員会の原則諮問機関化といった方向性から一転して、外部者のみからなる評議員会に理事等の人事権、予算・決算、中期計画、事業計画等に関する排他的決定権を与え(「評議員会を最高監督・議決機関とする」)、学内者中心の理事会は評議員会の決定を実行する執行機関へと変更するというもので、「学校法人ガバナンスの抜本的改革と強化の具体策」に明記されているように、変更された公益法人制度、特に社会福祉法人制度に倣ったものです。

 このような“改革”を行わなければならない理由として、冒頭で理事長や理事による不祥事が相次いでいることが真っ先に挙げられており、このうち「理事が背任容疑で逮捕されたりする例」とあるのは時期的にみても恐らく日大の前理事長側近とされる理事の逮捕(10月7日)のことと思われます。また、件の厚労族議員もインタビューで「現行法のままでは、どの大学でも『第二、第三の田中理事長』を容易に許すことになりかねません。」と日大事件をガバナンス改革の必要性の根拠として挙げています。

 さて、以下、これらについて思うところを記していきます。

1.「現行学校法人ガバナンス制度の問題点」の根拠として日大事件は不適切ではないか

 前理事長逮捕以後、堰を切ったように大手メディアで前理事長の来歴や学内権力掌握の過程に関する情報が流れるようになりました。それら報道によれば前理事長の日大関係者としての第1歩は日大紛争、あるいは日大闘争と呼ばれる学生運動とその鎮圧の過程(1968年,1969年)での経営側の「文字通りの」物理的暴力行使を担った体育会系学生等の集団のリーダーとしてであり、その後は、もともと体育会が学内に影響力を持っていたという日大の特殊な環境のもと、暴力団関係者との付き合いを公言、学内関係者を威圧、意に沿わない経営幹部や職員に懲罰人事を行うなどして法人、学内の主要な地位を自身に忠誠を誓う人物で固め、独裁的権力を確立したと伝えられています。

 これらの報道、そして3年前のタックル事件以降の、自らは全く表に出ずにひたすら時間の経過による“風化”を待つかのような振る舞いから浮かぶのは、権力や金自体への執着とそのためには文字通りの手段を選ばない価値観、そして学術、教育研究、公的な倫理や責任への無関心といった特徴を持つ特異な人物像です。大学という組織と結びついたのが不思議なくらいで、日大に相撲部というものが存在しなければ彼が日大と接点を持つことも無かったのではないでしょうか。

 また、今となってはその報道に少なからざる事実が含まれていたのだろうと考えざるを得ない、ずっと以前から前理事長やその周囲の問題点を報じていたFACTAと敬天(報道の結果、前者はスラップ訴訟、後者は直接的に社員が襲撃を受けました)の情報も加えれば、前理事長の権力掌握と維持には、法人・大学外部の、暴力団との関係に加えて、政治家、検察OB等からなる弁護団、法務・警察関係者などの存在も与っていると指摘されていて、これまた普通の大学であれば出てこないであろう単語のオンパレードです。

 この問題は、本来、2005年に当時の瀬在総長が田中常務理事(当時)の経営者としての行動に不審を抱き(業者との金銭授受や裏社会との交際)調査を行った前後に総長や他の常務理事に拳銃の実弾や脅迫状が送られてきた、という時点で警察・司法が介入すべき性質の問題だったのだろうと思います。大学だろうと民間企業だろうと、こういった人物にひとたび権力を掌握され、外部に訴えても無駄だと暗黙の裡に示され、組織内にも組織のミッションや一般的な道徳、遵法精神よりトップへの忠誠を優先させる人間がある程度の数になった時点で、それはもう一般的なガバナンス云々の次元の問題ではありません。刑事、民事の事件として処理されるべき性格の問題でしょう。
https://bunshun.jp/denshiban/articles/b2029
https://facta.co.jp/article/201808015.html
https://president.jp/articles/-/25325?page=1
https://news.nifty.com/article/item/neta/12113-1358357/
https://news.yahoo.co.jp/articles/8b0243d0dbe672d0c83bc64034f32bae05e1525b
https://news.yahoo.co.jp/articles/72f95eb8cb1db17640997fc4f5d83a434188ee54
https://president.jp/articles/-/52690?page=1

2.「外部者のみから成る組織」に経営者人事、予算・決算、計画等の排他的決定権を与えればグッド・ガバナンスが実現するという根拠は?

 日大事件にページを割きすぎました。以下、できるだけ要点だけにします。

 上述のように、日大前理事長の権力掌握と維持には、当人の尋常でない権力・金銭欲と大学人として以前の一般的な意味でのモラルの欠如、体育会がもともと学内で力を持っていたらしい日大の特異性に加え、暴力団、政治家、検察OB等の「外部者」の存在が与っている、と報じられています。「外部者のみから成る組織」に経営者人事、予算・決算、計画等の排他的決定権を与えればグッド・ガバナンスが実現するという根拠は何でしょう?

3.トップダウン型ガバナンスの成否はトップの資質、能力に依存する、はずだが…

 「『トップダウンの強化』という全体的な方向性」、とこれまでのガバナンス面での“大学改革”の特徴について表現しました。その意味では、「外部者」のみの評議員でも学内の理事長、学長、理事でも同じ話ではあるのですが、ごく当たり前の問題としてトップダウン型の意思決定の成否はトップの資質、能力に大きく依存します。

 大学に限っても、法人化以降、「トップガバナンス」があれほど強調されているにも関わらず、欧米、ことに米大学のトップと比較した場合、あちらの学長やプロボストがプロフェッショナル経営者化しているのに対して日本の場合はそうではありません。民間企業に関しても「プロフェッショナル経営者」と呼ばれる存在はごく限られており、その中には「焼き畑農業専門」と陰で呼ばれるような人まで含まれています。「トップが強い命令を発し、それに無条件に従うこと」が「トップダウン型ガバナンス」だと思い込んでいるのではと思われるようなケースもあります。

 トップダウン型の組織という器を、その根幹を満たす経営プロフェッショナルの存在を考慮せずに設計、実装してしまうのはいったいなぜなのでしょう。官民とも「メンバーシップ型」が組織の中心を占めてきた、という事情も無縁ではないでしょうが。

4.その他

 「学校法人ガバナンスの抜本的改革と強化の具体策」そのものに関する全体的、包括的な疑問点、問題点については、いい加減長くなったので書くのはやめます。探せばネット上でも色々出てきますので、そちらを参照ください。ただ、最も問題と思われる点について記しておくなら、評議員について、どういう資質・能力を持っていることが必要かという資格要件に触れられていない(「外部者であること」以上は書かれていない)のと、その評議員によって構成される「最高監督・議決機関」である評議員会自体が暴走や不適切な決定を行う危険についてどうするかは書いていない、という点でしょう。

 「学外者」が、日本の高等教育について「個人的経験の一般化や何十年も前から現在に至るまでも流通している間違いだらけの言説、情報の影響」を免れ、正確な知識、見識を持って「最高監督・議決機関」の一員としての業務を担いうるかは、21世紀に入って以降の産業界、政治家などの“大学改革”についての言説を見る限り楽観はできそうもありませんし(他大学の関係者が評議員たりえるかは現段階では確たることは言えないのと、仮に認められても「大学関係者同士の馴れ合い」と非難されることも懸念されます)、一つの組織の暴走を防ぐために他の組織に全権を与える、というのは、ではその組織が暴走したら?とキリがありません。完全な「学外者」だけの組織がどこまで真剣にその大学のことを考え、責任を負おうとするかも疑問です。その他、仕掛けた当事者が「最高監督・議決機関」と明記してある評議員会について、「ガバナンス構造において、最高、といった概念は存在しません。」と言っているのも不可解です。

 私学関係者等も入れて再検討が行われることになりそうですが、この件に限らず、そろそろ時間をかけて「実際上手くいくのか」を真剣に検討して政策立案を行うべきではないでしょうか。

(菊池 芳明)
にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ

2021年12月9日木曜日

大学部門の一斉休業日について(強制ではありません)

※このニュースは7月30日に公開した内容を年末の一斉休業用に再編集したものです。元のニュースはこちらからご覧になれます。

 2017年度より導入された大学部門における一斉休業日ですが、今年度の年末は12月28日に設定されています。
 一斉休業日は過去には、年末は年次有給休暇または振替休暇で取得するよう局長通知がありました。
 そもそも年次有給休暇については、法律上、労働者の請求する時季に与えられるものとされており(労基法第39条第5項)、雇用者による制限は原則として認められません。
 そのため、昨年度、休暇の位置づけを確認する要求書を提出し、当局から回答を得ています。(詳細は「大学部門の一斉休業日に関する要求書」と当局側回答をご参照ください。)

 年末の一斉休業日については法に則り適切に運用するとの回答を得ましたので、以後、年次有給休暇を強制取得させるという通知が出ることはないはずです。

 繰り返しますが、「一斉休業日」は強制的に特別休暇などの休暇を取得させられる日ではありません。他の日に取得したいので「一斉休業日」には休まないとしても一切問題はありません。管理職から休暇取得を強制されるなどトラブルに見舞われている方は組合までご相談ください。

 付言しておくと、組合は「一斉休業日」を設定することに反対はしていません。過去、東日本大震災後の節電が叫ばれた時期に対応の一例として「一斉休業日」を挙げたこともあります。(詳細は人事給与システム問題、夏季の勤務体制・職場環境、ずらし勤務試行問題に関する協議要求をご参照ください。)
 この件に限りませんが、曖昧な制度設計や運用を繰り返すことによって組織としての運営コストを増加させていること、職員の心理的安全性を低下させていること、教職員の利益を損ねていることなどが問題なのです。

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ

2021年10月7日木曜日

10月からの金沢八景キャンパスにおける36協定について

 9月27日、金沢八景キャンパス過半数代表者と当局側との間で10月1日からの金沢八景キャンパスにおける新しい36協定が締結されました(現在、金沢八景キャンパスには労働者の過半数で組織される労働組合がないため、労働者代表としての過半数代表者を選出し、その過半数代表者が36協定の締結、就業規則改定時の意見書の作成等にあたっています)。

 過半数代表者から36協定締結に際して職員組合に意見が求められましたが、これまでのものと同じ内容であり、協定締結自体に関しては問題はないと考えると回答しました。

 因みに現在の協定の内容のうち、第7条第1項の通常の残業上限時間を超える一時的、突発的な残業を行う場合の業務の具体的列挙(以前は当局側は第7条での具体的業務の列挙を拒んでいました)、同じく第7条2項のその場合の労働者の健康・福祉の確保のための措置は、職員組合が数年にわたり指摘、要求を続けた末に勝ち取ったものです。

 なお、他のキャンパスについても過半数代表者と当局側の間でそれぞれのキャンパスにおける36協定が締結されているはずです。基本的には金沢八景キャンパスと同様の内容ですが、異なる部分もキャンパスによってはあります。36協定は単に締結するだけではなく、わかりやすい場所に掲示するなどの方法で労働者に周知されることが必要とされています。本学の場合、基本的に学内ネット上に置かれていることになっていますので、金沢八景キャンパス以外の方は各自でご確認ください。

時間外労働及び休日労働に関する労使協定書

 公立大学法人横浜市立大学(以下「法人」という。)と金沢八景キャンパス事業場の職員の過半数を代表する者(以下「八景キャンパス事業場過半数代表者」という。)は、労働基準法第36条第1項に基づき、時間外労働及び休日労働に関し、次のとおり協定する。

(定羲)
第1条 この協定において「時間外労働」及び「休日労働」とは、次に掲げる労働をいう。
(1) 時間外労働とは、法定労働時間を超えて行う労働及び勤務を要しない日に行う労働をいう。
(2) 休日労働とは、法人職員就業規則第40条に規定する休日に行う労働をいう。

(時間外労働・休日労働を必要とする場合)
第2条 法人は、次のいずれかに該当するときは、時間外労働又は休日労働を命ずることができる。
(1) 対外的事由により、法定労働時間内にその業務の実施が不可能なとき
(2) 入学試験、就職等の学生支援業務が集中し、法定労働時間内の勤務では処理が困難なとき
(3) 入学試験関連業務を行う必要があるとき
(4) 契約等により時期の限られた業務を実施する場合であって、作業を予定どおり進捗又は完了させるとき
(5) 専門的な技術、知識、経験等を必要とする業務を行う場合であって、その業務の処理を他の職員に代替させることができないとき
(6) 災害又は災害発生のおそれのある時など、臨時に作業を行う必要があるとき
(7) 各種システムの運用、操作等を行わなければ法人の運営に支障がでるとき
(8) 緊急を要する施設管理・補修のための業務を行う必要があるとき
(9) 決算に関する計算及び書類作成を行う必要があるとき
(10) 月内、期末等の経理事務等が繁忙なとき
(11) 各種行事又は会議の資料作成及びその他行事・会議開催に係る業務を行う必要があるとき
(12) その他前各号に準ずる事由が生じたとき
2 職員は、正当な理由がある場合には、時間外労働及び休日労働を拒むことができる。

(時間外労働及び休日労働を必要とする業務の種類及び職員数)
第3条 時間外労働及び休日労働を必要とする業務の種類及び職員数は次のとおりとする。
(1) 事務系職員 169 人
(2) 技術·医療技術系職員 8 人
(3) 医務系職員 2 人
(4) 教員 l35 人
(5) 非常勤職員 29 人
(6) 非常勤教員 16 人

(延長することができる勤務時間数)
第4条 この協定によって延長することができる勤務時間数は、次のとおりとする。
(1) 1日につき4時間
(2) 1か月につき45時間以内
(3) 1年につき360時間以内

(勤務させることができる勤務を要しない日及び休日数)
第5条 この協定によって延長できる、勤務を要しない日及び休日(以下「休日等」という。)数は1か月につき4日以内とする。

(休日等勤務の時間数の限度)
第6条 前条の規定により休日等に勤務させることができる時間数は、1日の休日等につき8時間以内とする。ただし、必要と認められる場合には第4条第1項第1号で定める1日の延長時間の範囲内において延長することとするが、第4条の各号の延長時間には算入されない。

(限度時間を超える時間外労働)
第7条 法人は、第2条第1項各号に掲げる業務に従事する職員のうち、一時的又は突発的に第4条に定める限度時間を超えて業務を行う必要がある場合であって、その業務が次号に掲げる事由に該当する場合には、労使の協議を経て、年6回を限度として、第4条各号に関し1か月80時間まで及び1年につき720時間まで延長することができる。
(1) 入学試験、定期試験、卒業・進級判定に関する業務
(2) 学部設置認可申請・届出に関する業務
(3) 緊急を要する学生への対応業務
(4) 予算・決算業務
(5) 3月・4月の採用・退職手続き及び年末調整業務
(6) 大規模災害の発生時対応
(7) 重大な施設(電気、機会、機器等)のトラブル対応
(8) 大規模な施設の改修
(9) 大規模なシステムの改修の業務
(10) 臨時かつ緊急対応が求められる市会業務及び外部機関への対応
(11) 公的機関による立入調査のうち臨時に実施されるものへの対応
(12) 時限的なプロジェクトに関する業務
(13) 国・県等の補助金事業への申請・事業報告等の対応
2 前項を適用した場合において、法人は当該職員の健康・福祉の確保のため、次の各号に掲げる措置を実施する。
(1) 保健管理センターによる相談
(2) 産業医等による助言・指導や保健指導

(時間外労働の割増賃金率)
第8条 時間外労働の時間数が1か月45時間を超えた場合又は1年360時間を超えた場合の割増賃金率は2割5分とし、1か月60時間を超えた場合の割増賃金率は5割とする。

(育児又は家族の介護を行う職員の時間外労働等の制限)
第9条 第4条、第5条及び前条の規定にかかわらず、育児又は介護を行う職員が請求した場合には、法人職員の育児・介護休業等に関する規程第20条、第20条の2及び第21条の規定により、時間外労働及び深夜勤務を制限する。

(有效期間)
第10条 この協定の有効期間は、令和3年10月1日から令和4年3月31日までとする。

令和3年9月27日

横浜市立大学理事長 小山内 いづ美

横浜市立大学金沢八景事業場労働者過半数代表者 山根 徹也

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ

36協定締結にあたっての過半数代表者の意見書

 前述のように、組合としては現在の36協定の内容自体には反対していないのですが、その前提となる職員の勤務体制、具体的には在宅勤務の在り方に関しては、1年半以上に渡って問題があるものとして改善を求める要求を繰り返しています。
(関連する組合ニュースの量が多すぎて全部にリンクを張るのは大変なので、こちらからご確認ください。

 しかしながら、当局側は横浜市の制度以上の対応を行うことは拒み続けており、コロナ禍下においても基本的に出勤しての勤務を基本としていた市職員に対して、事実上、経営者、管理職等の意向による在宅勤務が続いた市大職員という違いを無視した制度設計と運用は実態との大きな乖離を生んでいて、極めて問題です。このため、過半数代表者に対して「36協定自体は問題ないと考えるが、前提となる職員の勤務の在り方、具体的には在宅勤務に関連した制度設計・運用には大きな問題があるにも関わらず、当局側は実質的な交渉を拒み続けており、その点につき過半数代表者から当局側に見解を示していただけないだろうか」と要望し、その結果、過半数代表者から9月27日の協定締結時に下記の意見書が当局側へ手渡されました。

横浜市立大学理事長 小山内 いづ美 様

36協定締結にあたっての意見書

横浜市立大学金沢八景事業場労働者過半数代表者 山根 徹也

 日ごろのご尽力に敬意を表します。

 さて、すでに職員組合・教員組合から要望が出ておりますが、在宅勤務の枠組みについての就業規則を検討していただきたきたいと考え、36協定の前提ともなる事柄であることから同協定締結にあたって、この意見書を提出させていただきます。

 要望は以下のとおりです。

 現行の就業規則では、勤務体制の在り方について、新型コロナ禍下での、実際には法人や上司の指示、意向に基づく在宅勤務であるにも関わらず、「個人的事情に基づく職員自身の願い出による在宅勤務」と位置付けられており、内容上「個人的事情による在宅勤務の希望を特に許可しているのだから、在宅勤務に関わる経費は職員本人が負担」としているのは勤務実態と乖離しています。

 この問題について、職員組合が1年以上に渡って繰り返し制度の改善、経費の法人負担を要求しているにも関わらず、同組合に対してはできないという口頭回答のみがあったほかは、その後は同組合との交渉に応じようとしないことは極めて遺憾であります。さらに、就業規則上の規定なしに在宅勤務時の経費を職員の自己負担とし続けていることは、違法行為の疑いが強いことを指摘せざるを得ません。

 本事業場の労働組合、特に職員組合との誠実な交渉を行い、事態の改善に取り組むよう要求します。

(以上)

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ

2021年8月11日水曜日

本学における職域接種について(学生の皆さんへ)

 7月22日付の組合ニュース【公開版】で、教員組合・職員組合の連名で6月25日に新型コロナワクチン接種に関して「学生、教職員への新型コロナワクチン接種に関する要求」を大学に行ったこと、また、その後、職域接種の申請の結果について問い合わせを行ったところ、7月12日付で「申請に対する承認可否の回答がまだ来ないため待っている状態」との回答があったことをお知らせしました。

 その後、7月21日、学内教職員に対して、接種の実施日が確定した旨の情報が流され、これに少し遅れて組合に対しても同様の連絡がありました(学生を対象とした連絡は更にこれに先立って行われたようですが、具体的な日時について組合は承知していません)。

 これにより8月12日から八景キャンパスでワクチンの接種が始まるはずです。

 上記の学生、教職員、また組合への連絡以降は、学内にはワクチン接種に関する公式の追加情報はほとんど流されていないのですが、職員組合から追加の問い合わせを行った結果、ワクチンは(すでに接種を行っている医学部・附属病院関係者を除いた)希望する学生、教職員に不足が生じないだけの量を確保している、との回答を得ています。

 それ以降については公式の情報がないため非公式の情報によるものですが、実際の学内の接種希望者数は確保されたワクチン数を大きく下回っており、特に学生の希望者は見込みよりかなり少ないレベルにとどまった模様です。このため、大学は学外にもワクチン接種の打診を行うなどしているという話もあります。

 最初に書いた通り、両組合合同で行ったのは「学生、教職員への新型コロナワクチン接種に関する要求」と学生の皆さんに対する対応も含めたものです。組合のブログが学生の皆さんに届く可能性は少ないでしょうが、それでもワクチン接種についての呼びかけを行いたいと思います。

 まず、ワクチン接種は任意であり、その点は両組合の共同要求でも第4項として確認を求めています。それを前提としたうえでの話ですが;
  1. 職域接種を希望した他大学においてワクチンがいつ届くかわからず職域接種を断念せざるを得なかった、ワクチンの供給数が要望を大きく下回ったなどの話も聞こえてきており、それらの大学の学生に比べれば希望すれば確実にワクチン接種を受けられるというのは非常に幸運な状況と言える。
  2. 今回の職域接種を見送った場合、各自治体での65歳以下への接種の状況を考えると後期授業開始までにワクチンの2回接種を受けることは難しそうである。
  3. 首都圏で急速に拡がっているデルタ株は、これまでのタイプに比べ強い感染力を持っているらしいことが複数の専門機関、専門家によって指摘されている。
  4. すでに神奈川県内では感染しても十分な医療を受けられる状態ではなくなっている。
  5. 副反応のリスクについては、現時点では感染症の専門家、学会などは、新型コロナに感染、重症化するリスクに比べればはるかに小さいとしている。(例えば、日本感染症学会「COVID-19 ワクチンに関する提言(第3版)」P.10)
などが現状において考慮すべき条件として挙げることができます。

 ワクチンに関しては、専門家による「現時点で確実に言えそうなもの」から誰が信じるのだろうという陰謀論レベルまでの、あまりに大量の情報が入り乱れており、それが接種への慎重な態度を促している面もあるのではと思われますが、あと1か月少々で後期授業が始まることになります。皆さんの参考となるよう、専門家による直近の一般向けの解説を以下、いくつか紹介しますので、接種を迷っている学生の皆さんには、これらの情報、そして自分自身でも信頼できそうな情報を調べたうえで(ネットで日本語情報を探すのなら、例えば検索ワードに「ac.jp」や「go.jp」を加えるなども有効です)自身の選択を考えてみてください。

「水ぼうそうと同じ感染力? 感染爆発を招いているデルタ株にどこまで警戒を強めたらいいのか」
岩永 直子 2021年8月3日

「新型コロナ デルタ型変異ウイルス 感染力、重症化リスク、ワクチンの効果など 現時点で分かっていること」
忽那 賢志 2021年8月1日

「新型コロナワクチンの長期的な安全性への懸念は?」
忽那 賢志 2021年6月21日

「新型コロナワクチンは年齢や性別、基礎疾患によって効果や副反応が異なるのか」
忽那 賢志 2021年6月19日

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ

2021年7月30日金曜日

大学部門の一斉休業日について(強制ではありません)

 2017年度より導入された大学部門における一斉休業日ですが、今年度は夏季が8月12日13日に、年末が12月28日に設定されています。

 一斉休業日は過去には局長通知にて①夏季は夏季休暇として付与される日数のうちから取得することを推奨する。②年末は年次有給休暇または振替休暇で取得するよう通知がありました。

 そもそも年次有給休暇については、法律上、労働者の請求する時季に与えられるものとされており(労基法第39条第5項)、雇用者による制限は原則として認められません。一方で、夏季休暇などの特別休暇については雇用者に対する法令上の制約はありませんが、「推奨」などというあいまいな形で事実上その取得に制限を課すことには問題があると考えます。

 そのため、昨年度①②について、休暇の位置づけを確認する要求書を提出し、当局から回答を得ています。(詳細は 「大学部門の一斉休業日に関する要求書」と当局側回答 をご参照ください。)

 ①の夏季の一斉休業日については「職員が休みやすい環境を作ることを目的に窓口対応及び施設管理等を日曜日や年末年始と同様の扱いとしたもの」との回答を得ました。要するに「窓口等の対外業務がないので休暇が取得しやすい日」であって「強制的に休まなければならない日」ではありません。

 ②の年末の一斉休業日については法に則り適切に運用するとの回答を得ましたので、今年度以降も年次有給休暇を強制取得させるという通知が出ることはないはずです。

 繰り返しますが、「一斉休業日」は強制的に特別休暇などの休暇を取得させられる日ではありません。他の日に取得したいので「一斉休業日」には休まないとしても一切問題はありません。管理職から休暇取得を強制されるなどトラブルに見舞われている方は組合までご相談ください。

 付言しておくと、組合は(キャンパス自体を閉鎖してしまうような、一般的な意味での)「一斉休業日」を設定することには反対していません。過去、東日本大震災後の節電が叫ばれた時期に対応の一例として「一斉休業日」を挙げたこともあります。(詳細は 人事給与システム問題、夏季の勤務体制・職場環境、ずらし勤務試行問題に関する協議要求 をご参照ください。)

 この件に限りませんが、曖昧な制度設計や運用を繰り返すことによって組織としての運営コストを増加させていること、職員の心理的安全性を低下させていること、教職員の利益を損ねていることなどが問題なのです。

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ

2021年7月22日木曜日

学生、教職員への新型コロナワクチン接種に関する要求(教員組合との共同要求)

 新型コロナ禍に対しては昨年来、度々要求と交渉を行ってきました。
(2020年分については https://ycu-union.blogspot.com/2021/01/blog-post.html の記事をご参照ください。
 2021年については https://ycu-union.blogspot.com/2021/02/blog-post.html
 https://ycu-union.blogspot.com/2021/03/blog-post.html
 https://ycu-union.blogspot.com/2021/03/436.html )

 大学においても「職域接種」が可能となり、いくつかの大学で実際に接種が始まっていたものの、本学の対応に関しては一般教職員に対する十分な説明がないこともあり、教員組合と職員組合の共同で6月25日、下記の通り接種対象者、接種に要する時間の取扱い、副反応が出た場合の対応等に関し当局側に要求を行いました。

 要求書提出時に「職域接種の申請自体は行った」こと、加えて要求の2及び3に関しては「特別休暇」の取得を認める、という説明がありました。それ以外については、今のところまだ回答はありません。

 また、その後、職域接種を申請した大学でワクチン供給の見通しが立たないため接種を断念する大学が出てきたことを受け、7月9日に職員組合書記長から人事課に対し本学の状況はどうなっているかの問い合わせを行ったところ、7月12日付で「申請に対する承認可否の回答がまだ来ないため待っている状態」との回答があり、「国からの回答があり次第、両組合にも知らせてもらいたい」と要望しました。

2021年6月25日
公立大学法人 横浜市立大学
理事長 小山内 いづ美 様
横浜市立大学教員組合 委員長 山根 徹也

横浜市立大学職員労働組合 委員長 三井 秀昭

学生、教職員への新型コロナワクチン接種に関する要求


 市民から期待され信頼される大学教育と運営の確立に向け、日頃の取り組みへのご尽力に敬意を表します。

 さて、本邦においてもようやく新型コロナのワクチン接種が本格化し、本学でも6月14日付で職域接種に関連し事務局から学生、教職員へのワクチン接種の意向調査が始まったところです。今回の新型コロナ禍においては、教員組合、職員組合よりそれぞれ教職員の安全確保、在宅勤務の在り方等に関連し様々な指摘、要求を行ってきたところですが、ワクチン接種に関して、以下の通り両組合共同で要求いたします。
  1. 本学で職域接種を行うのであれば、ワクチン接種を希望する本学の学生、教職員等全員に対して可能な限り速やかに接種を行うこと。その際、本学との直接的雇用関係の有無にかかわらず、非常勤講師、非常勤職員、アルバイト、派遣社員等の本学キャンパス内で働く全ての人を対象とすること。ウィルスは常勤、非常勤等の区別を行わないことから、本学全体の安全確保と活動の再開、さらには社会全体の安全と利益に資するためにも必要な措置である。厚生労働省においても6月8日付「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する職域接種向け手引き(初版)」において「職域接種の接種対象者に関しては、(中略)雇用形態によって一律に対象者を区別することは望ましくないという趣旨を踏まえつつ、公平・適切に判断すること」としていることを付言する。

  2. 本学での接種か否かにかかわらず、接種に当たって移動等で時間を要する場合、横浜市と同様に職免等の措置を取り、有給休暇の使用などを求めないこと。この点も全ての教職員等において差別的取り扱いを生じせしめないこと。

  3. 本学での接種か否かにかかわらず、副反応等が生じた場合、同様に職免や診断書なしでの病気休暇の取得等を認めること。同じく、全ての教職員等において差別的取り扱いを生じせしめないこと。

  4. 接種を受けるかどうかについては、個人の自由な意思が尊重されることを明確にすること。
以上

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ

2021年4月29日木曜日

一般職の賃金改善に関する要求書

 この問題についても、それこそ「一般職」が「嘱託職員・契約職員」であった頃から延々と処遇改善要求を続けています。任期制の廃止、有期雇用職員から一般職への転換等での改善は獲得したものの、賃金については、残念ながら何度要求と交渉を繰り返しても当局側は全く譲歩しないという状態が続いています。特にここ1、2年は交渉を行うこと自体にもなかなか応じなくなっていたのですが(「交渉を行っても組合の要求には応えられないので」という、正直と言えば正直な理由の説明がありましたが)、それで諦めてしまえば一般職の賃金はそのままとなってしまいます。年度が改まるのを待って、何度目かの交渉の要求を行いました。内容は以下の通りです。

 また、毎度の呼びかけですが、当事者である一般職の方々が黙っていると経営側は現状に不満はないのだと解釈します。逆に組合に多くの人が加入すればするほど、当局側はその主張、要求に配慮しないことが難しくなります。この機会に組合への加入をご検討ください。

横浜市立大学職員労働組合 加入案内

2021年4月15日
公立大学法人 横浜市立大学
理事長 小山内 いづ美 様
横浜市立大学職員労働組合(横浜市従大学支部)
委員長 三井 秀昭

一般職の賃金改善に関する要求書


 市民から期待され信頼される大学教育と運営の確立に向け、日頃の取り組みへのご尽力に敬意を表します。

 さて、標記の件について、2018年9月26日に協議要求した「一般職の処遇に関する要求書」のとおり横浜市嘱託職員(当時)に比べ4万円以上の較差があり、2019年9月17日に再度協議要求しましたが、現在に至るまで全く改善がなされていません。

 その後、2020年度より横浜市非常勤職員の給与が改定され、市と法人での較差はさらに広がりました。総合職と同様に一般職においても市と較差がある状況は法人化時の合意に反するものです。

 コロナ禍においても法人の業務運営に支障を来すことなく懸命に働く職員の労に報いるためにも、この問題に関する協議を強く求めます。なお、1回目の協議は4月19日~5月14日の間に開催されることを併せて要求します。

以上

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ

日本的共同体と戦略的思考

 以前、ここで何回か「戦略」について書いたことがありましたが;

「戦略論から見た大学改革への対応 -順次戦略と累積戦略-」

「政府主導型大学再編の始まりと“戦略の醍醐味”(3)」

あちこちで言われているように今回の新型コロナ禍での日本政府の対応がしばしば太平洋戦争時のそれを想起させること、それと、近代以前における日本独自の戦略、作戦、戦術等に関する展開、具体的には武士の軍事史におけるそれに関する個人的疑問の一つに対して答えを提示してくれた本が最近文庫化(西股総生『東国武将たちの戦国史』河出文庫 2021)されたのを本屋で見かけたこともあって、また少し日本人と戦略の関係について綴ってみたいと思います。

 大学関係者、それも事務局関係者と話していて、話が噛み合わないこと、その背景にパーセプション・ギャップの存在を感じることがあるのですが、(教員の場合、「考えること」を仕事にしている人たちなので、説明すればそれなりに通じる傾向があるのに対して)事務職員の一部に、自分がどのような思考枠組みに依拠しているかについて認識していない、のはまあ普通のこととして、自分の思考枠組みを相対化することに拒否反応を示す(そして、自分がそのような「防衛反応」を示していることにも気づいていない)、他の思考枠組みについて理解しようとしない強固な傾向性を感じて、内心「これは無理。説明不能」となることがあります。

 その具体的なパターンの1つが、戦略的思考が欠けている、あるいは計画を作って実行することを戦略だと思っている、軍事の領域でいう作戦レベルや戦術レベルを戦略レベルと考える、などの場合です。

  • ちなみに経営学における戦略論は、第2次大戦後に軍事の領域から階層性を持つ諸概念のうち戦略(strategy)という言葉だけを輸入し、内容については独自に発展したもので、作戦(operation)、戦術(tactics)などの言葉については取り入れられませんでした。代わりにというのでもないでしょうが、企業戦略と事業戦略という上位、下位関係にある、現実には組織レベルと結び付きやすい区分があり、さらに企業の機能面に着目した機能戦略という下位区分もあります。軍事のそれが目的、目標の達成のための「行動」を軸として「(大戦略)-戦略-作戦-戦術-(戦技)」として階層化され、そのための組織や戦力整備は「軍政」という、戦略、作戦等の立案に当たる組織(軍令部門)とは別の組織の担当する、別のカテゴリーの問題となっていることに比べると概念として曖昧さが付きまとうように思えること、私自身はもともと軍事戦略に先に親しんだことから、ここでは軍事戦略の枠組みに依拠して話を進めます。

 この点について、3年前から取り組んでいる共同研究の自分の担当部分;

「大学職員の内発性に基づく役割モデルの再構築に向けた日・韓・台比較研究」
「大学職員の内発性に基づく役割モデルの再構築に向けた国際比較研究」
-日本の大学の事務職員の本質を、民間企業、官公庁のホワイトカラーと同様の「日本型サラリーマン」であるという点に求め、その特徴と課題を抽出する-

と相当程度まで密接に関連しているのではないかと思うようになってきました。

 日本の企業、官公庁、それに大学の事務局などは単なる目的達成のための機能的組織ではなく同時に強固な共同体(集団と呼ぶほどニュートラルなものではない)でもあるという特徴を持っています。そして、その「共同体」は、近年、新型コロナや政権スキャンダル絡み、さらにはジェンダー平等問題などで再び人口に膾炙することが増えた「同調圧力」、それも「同質性」を志向する同調圧力が内面化された共同体です。このような共同体においては、共同体の基本的な価値観や行動様式、方向性などはそのまま受け入れ、内面化して、その上で共同体内で割り当てられた個別の役割や仕事に全力をあげることがよしとされがちです。それは言い換えると、戦略レベルの思考は放棄(「基本的な価値観や行動様式、方向性などはそのまま受け入れ、内面化」する)、作戦、戦術レベルに全力をあげるということであり、共同体において自身の利益の最大化を図るのであれば、それが最も合理的な行動ということになります。その当然の帰結ともいえるのが、ちょうど20年前に大手電機メーカーのトップが業績不振の責任を問われた際に口にした「(業績不振は)社員が働かないからだ」という言葉です。さすがに当時批判を浴びはしましたが、戦略レベルの思考は放棄し、作戦、戦術レベルにのみに(共同体内での処世とともに)全力を挙げるというやり方に最も「最適化」した「報酬」として社内の階梯を駆け上ってきたのであれば、「社員が働く」という、戦術か下手をするとさらに下位の戦技レベルに思考が固着してしまうのは必然的な成り行きであり、何もそのトップだけに限られた話ではないでしょう(正確には濱口桂一郎氏の指摘するところの「報酬としての地位」という問題との、いわば2重苦の結果というべきでしょうか)。

 2つ目は、「共同体内で割り当てられた個別の役割や仕事に全力をあげること」の集積が全体の成功につながるのであり、だからこそ個々人は余計なことを考えずに目の前のことに全力を挙げるべきなのだ、という漠とした信念のようなものです。「(大戦略)-戦略-作戦-戦術-(戦技)」という階層において、上位のレベルでの錯誤や失敗を下位のレベルにおける努力や成功で補うことは(特に「総力戦」以降の時代においては)困難であるというのは、軍事の戦略にある程度親しんだ人間にはよく知られたテーゼですが、上記のようなミクロの直接的な集積としてのマクロという信念?世界観?とそれは見事に衝突します。

 ここで少し過去の歴史へと寄り道します。春秋戦国時代が『孫氏』を生み、ナポレオン戦争が『戦争論』を生んだように、戦略的思考は、主に軍事と外交の領域で発達します。日本の近代軍事理論の受容は第2次大戦での大敗北という結果に終わりましたが、それ以前の歴史を振り返ると、外交についてはともかく、武士という戦士階級が数百年に渡って戦争と戦闘に明け暮れていたわけで、戦乱の時代の長さは決して中国、ヨーロッパに劣るものではありません。そして、実際、我々が良く知る武田信玄、織田信長、豊臣秀吉などの戦国時代後期の有名武将たちは戦略レベルの思考、行動(そして当然、より下位の作戦レベル、戦術レベルも)を行っていたとしか思えない行動をとっています。ただし、武士というその基盤を封建制に置いている戦士階級は、封建制の原理そのものが原因となって本来は戦略、作戦といった高度で複雑な軍事行動をとることは難しい存在です。そこから「勝つために有効である」というリアリズムに立脚した高度な思考、行動への飛躍がどこかであったはずなのですが、この点について(少なくとも東国においては、という留保付きですが)一つの回答を示したのが、冒頭にあげた西股総生先生の『東国武将たちの戦国史』です。西股先生は、単なる戦闘の集積としての戦争から脱して武士の戦争に「作戦の時代」をもたらしたのは、ちょうど京都で応仁の乱が行われていたころに関東で起こった「長尾景春の乱」の当事者である長尾景春と、その軍事的ライバルであり、最終的に乱を鎮圧した太田道灌の2人である、としています。

 西股先生の著述は、(おそらくは意識的に)非常に読みやすい平易な文章で綴られているという特徴があるのですが、ここで『東国武将たちの戦国史』から戦略-作戦-戦術という階層の関係、不可逆性について述べられている部分を紹介してみます。舞台は永禄12年(1569年)の関東、横浜市大本部キャンパスのある横浜市金沢区からは北西に30、40キロほど離れた現在の神奈川県愛川町三増峠付近で、今川義元が桶狭間で織田信長に討たれた後、今川、北条、武田の三国同盟を破棄、今川家の駿河を武田領に組み込もうとして北条軍の妨害にあった武田信玄が局面の打開を図り北条領に侵攻、甲斐に帰還途中の三増峠付近で追撃してきた北条軍の一部を撃破した戦いです。

 「北条軍を撃破することによって駿河から手を引かせることが、武田軍の作戦意図である。目的は駿河領有、目標は北条軍であり、そのための到達予定地点が小田原であった。」(文庫版248頁)
 「三増合戦は、戦術次元では武田軍の巧みな用兵による勝利ではあったけれど、作戦次元で見れば不本意な会戦であったがゆえに決勝会戦たりえず、戦略次元で評価するならほとんど徒労と言えた。」(文庫版265頁)

 このように、武士の戦乱の時代の末期においては、(それに応じた明確な概念と用語が存在していたかはさておき)自然発生的に生まれた戦略-作戦-戦術という階層的な思考、行動が存在していました。ただしそれは江戸時代の長い平和と封建制身分社会の解体により現在の日本人に受け継がれることはなく、現在の日本人、正確には「国内大学卒」で「学位は学士」、「日本の企業、官公庁等の組織にメンバーシップ型雇用契約で雇用されている」「成人男性」は、組織に重なつて存在している共同体(あるいは組織以上に強力な共同体)の独特な価値観、行動様式の強い影響下にあって、それは「戦略的思考」とは基本的に嚙み合わないものです。

 しかし、「真理はわれらを自由にする」のであり、学問という鏡に照らすこと(ここでは、先人であるかつての戦国武将たちは生き残るために封建制のもたらす軍事上の枷を脱し戦略的思考、行動を行っていたのだ、という歴史研究のもたらす知識、認識)で、無意識レベルにまで定着した固定観念でも解体することは可能です。最近の企業サイドの論理(「メンバーシップ型」「ジョブ型」の提唱者である濱口桂一郎氏いうところの「ジョブ型の皮を被った成果主義のリベンジ」)はともかく、メンバーシップ型雇用システムは、そのもとにある人間の多くにとって、①工業化によるキャッチアップには適合していたが、本当に到来した「情報化の時代」には負の側面の影響が強くなる、②組織が成長する段階では機能するが、組織が縮小する段階では逆機能を起こす、という問題点が次第にはっきりしてきています。少なくとも「戦略的思考のできない」メンバーシップ型の人間でいることは当事者にとっても大学にとってももはや安全な道ではないでしょう。まさか、政府文科省の言うとおりにしていれば将来は安泰、と考えている大学人はさすがにそれほど多くはなくなっているはずです。まあ、問題があるとすれば「真理はわれらを自由に」してはくれますが、「現世的利益」(出世だの高給だの)を約束してくれるわけではないという点でしょうか。

 さて、このテーマでは「計画」の問題など、まだほかにも思うことは多々あるのですが、いい加減長くなったのでこのあたりにします。続きはたぶん書きません。

(菊池 芳明)
にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ

2021年3月31日水曜日

テレワーク制度化に関する提案に対する回答

新型コロナ禍下、根拠は曖昧、運用は不透明という状態で継続されてきた在宅勤務ですが、3月8日にようやく新年度からの制度化のための就業規則の改定等の案が提示されました。

制度としての基本的な性格は、キャンパスへの出勤を原則とし、育児や介護といった事情等のある職員が願い出たものに対して大学側が承認するという、例外としての在宅勤務というものです。その意味では、今回の新型コロナを機にした、一部の民間企業に見られる積極的な在宅勤務の推進のようなものではなく、また、昨春の緊急事態宣言下で広く行われた、強制あるいは事実上の強制による在宅勤務に対応するものでもありません。

すでに新年度までに3週間しかない時点での提案であり、まともな交渉、修正ができるスケジュールではなかったのですが、あくまでも「例外」としての制度に関するものである点も踏まえ、4月以降、組合回答に基づく交渉を行うことを確認の上、3月17日、以下のように回答を行いました。

なお、「在宅勤務」と「テレワーク」では後者の方がより広い概念で、基本的に在宅勤務を対象とする今回の新制度は「テレワーク」よりも「在宅勤務」という呼称の方が適切ではないかと思われますが、当局側の制度名は「テレワーク」となっているため、当局側の制度、文書に関する部分では「テレワーク」の語を用いています。
※「テレワーク」における勤務地は、自宅以外にホテルや駅構内のワーキングスペース等も含まれることが一般的です。

2021年3月17日
公立大学法人 横浜市立大学
理事長 二見 良之 様
横浜市立大学職員労働組合(横浜市従大学支部)
委員長 三井 秀昭

テレワーク制度化に関する提案に対する回答


市民から期待され信頼される大学教育と運営の確立に向け、日頃の取り組みへのご尽力に敬意を表します。

さて、3月8日に提案されたテレワークの制度化に伴う就業規則改正等について、以下の通り回答いたします。

  1. 新制度は「例外的に事情等のある職員が願い出たものに対して大学側が承認する」という、出勤を基本とする中での例外的な勤務としてのテレワークという位置づけのものであり、昨年の緊急事態宣言時におけるような、命令や事実上の強制に基づくテレワークには対応していない。新型コロナの脅威が依然として続いている状況下では、これら新制度に包摂されないテレワークについても、その対応や根拠について明らかにしておく必要がある。

  2. 超過勤務は原則として認めない、ただし、事前に申し出て所属長が命令した場合にはあり得るという制度設計であるが、この1年の国内における企業等の経験からは、テレワークでは実際にはサービス残業が発生しやすいことが明らかになっている。超過勤務を認めないというのであれば、サービス残業が発生しないよう、例えば勤務時間外に上司とのメールのやり取りが行われていないか、大学のシステムへのアクセスが行われていないかなどを過半数代表者が確認するなどの防止措置をとることが必要である。

  3. 「例外的に事情等のある職員が願い出たものに対して大学側がテレワークを『許可』する」のだから費用は原則として本人が負担するとしているが、勤務場所が職場であろうと自宅であろうと大学の業務を遂行しているのであり、そのために必要な費用を大学ではなく本人が負担するというのは、業務遂行に当たって必要な費用は雇用者側が負担するという原理原則に反するものであり、組合としては認められない。また、労働契約法第9条の不利益変更に当たる可能性もある。

  4. テレワークを認めるのは1週間2日まで、ただし「理事長が認める場合」は2日を超えて認めることがあるとされているが、「理事長が認める場合」について明確にされたい。組合としては、例えば、現在の状況下では新型コロナに対して「本人がハイリスク者」「同居家族にハイリスク者がいる」などの場合、希望があれば2日を超えて在宅勤務が認められるべきと考える。

  5. 本学に多数存在する派遣会社社員については、本学就業規則の対象とはならないが、派遣会社との契約を職員と同様にテレワークが可能となるようにすべきと考える。
以上

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ

4月からの36協定について

 4月以降の新たな八景キャンパスに関する36協定が締結されました。内容としては、昨年12月30日付組合ニュース【公開版】で紹介した本年1月から3月までの36協定と同一で変更点はありません。

 ただし、今回から明確に在宅勤務時の残業も協定の対象であることが運用面で確認された点は異なっています。在宅勤務時にサービス残業が発生しやすいことは、この1年の国内での経験から指摘されるところであり、上記「テレワーク制度化に関する提案に対する回答」の2.でも指摘、交渉事項としているところですが、実際にサービス残業を余儀なくされるような場合、組合に相談ください。

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ

2021年2月2日火曜日

緊急事態宣言に伴う在宅勤務に関する申し入れに対する回答

前号でお伝えした「緊急事態宣言に伴う在宅勤務に関する申し入れ」に対して口頭での回答がありました。回答内容は以下の通りです。


1.職員の在宅勤務が業務命令によるものである点を明確にすること

 本来、勤務場所の如何にかかわらず業務命令によらない勤務などはあり得ないはずであり、また、現に在宅勤務に給与が支払われている以上、問題になるはずのない点であるが、在宅勤務における労働者側の支出に関連し、交渉時に当局側からその点について否定する発言があったことを踏まえ、事後に問題が生じないよう、適切な対応が行われることを要望する。
 → (回答)
「就業規則では勤務場所は大学と定められている。したがって在宅勤務は本人の希望を認めているもので命令ではない」
※当局側は「業務命令」を従業員本人の希望と無関係に一方的に出すもののみを指すと考えているようです。これはもちろん解釈としてはおかしいもので、従業員の意見や希望を聞いたうえで「在宅勤務を命令している」のです。在宅での労働が業務命令によらないものだというのであれば、申し入れに書いたようにそもそも当局側には対価としての給与を払う理由がないわけですし、当局側が在宅勤務に際して「就業規則を守るよう」要求している根拠も消滅してしまいます。「業務命令」という言葉の解釈がおかしい旨、説明して再度回答を検討するよう求めました。


2.在宅勤務において超過勤務が発生した場合、法令に従い手当てを支給すること

 この点についても、前回の緊急事態宣言中の在宅勤務に関連して、当局側から「在宅勤務における超過勤務を認めていない以上、超過勤務は存在しない」という実態とは無関係の「あるべき論」からの主張が展開された。今回は、1月から新しい勤怠管理システムが導入されたところであり、在宅勤務についても新システムが適用されるとされていることから、実際の労働時間が把握されることになる。超過勤務が発生した場合は、法令に違反することなく超過勤務時間に応じた手当てを支給されたい。また、管理職が実際とは異なる労働時間を記録するよう指示したり、誘導したりすることのないよう、徹底されたい。
 → (回答)
「通常の大学での勤務と同様に、所属長への事前申告に基づき行われた超過勤務に対して手当が支給される」
※これまでの、「在宅勤務では超過勤務は認めていないのだから超過勤務は存在しない」という冷戦時代の共産圏のイデオロギーのような回答から現実に対応した姿勢へと変わりました。それ自体は評価できるものです(このレベルの対応を引き出すために1年近くにわたって延々と要求、交渉を繰り返さなければならないという点は別として)。ただし、在宅勤務では労働管理が困難になる面がある、緊急事態への対応という性格上、業務に予測しがたい面があるなどの点を踏まえ、現場での運用が硬直的になることで却ってサービス残業などを誘発することにならないよう申し入れました(もちろん、労基法、36協定などの遵守は大前提となります)。


3.個別職員の事情への配慮

 若年層に極端に偏った採用を行ったこともあり、育児、介護等、家庭における個別の事情を抱える職員が多数存在している。在宅勤務においては出勤時よりもこれらの問題に関連する困難が発生する可能性もあり、個別職員の事情を無視した在宅勤務の運用とならないよう、十分な配慮をされたい。
 → (回答)
「前回緊急事態宣言時と違って保育所は休止していない。従業員の個別事情については授業員本人がそれぞれの事情を踏まえて(在宅勤務の申請、勤務を)行っていると思う」
※全般的状況としては、当局側指摘の通り保育所をはじめとして前回に比べましな状況にあるとは言えそうです。ただし、全般的状況と異なる「個別状況」はいくらでも存在しうるものであり、問題があれば今後も組合として要求を行う旨を伝えました。もともと組合員が少なく、すべての部署での問題を把握できているわけではないこと、在宅勤務化等により組合の活動も影響を受けており、特に情報収集での影響が大きいことなどから、組合が把握できていない問題が存在する可能性は十分あると思われます。問題を抱えている方は組合にご相談ください。また、自身の問題でなくても問題を把握している方には情報の提供をお願いします。

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ

SDに関するお知らせ

 以前、大学専門職2人が役員になっていることを活用して組合独自のSDに力を入れていた時期がありました(例えば「本年度の学習会(職員組合SDプログラム)の概要と第1回のご案内」、「『大学職員基礎講座』(特別編)『36協定と労働基準法』ご案内」など)

 その後は、職員の身分、処遇に関する重大な経営方針、制度の変更が相次ぎ対応に追われたこと、講師役の組合役員に余裕がなくなってしまったことなどから久しく開催できていません。

 代わりにというのではないのですが、組合役員が講師を務めるSDがオンライン、学外にも公開の形で行われるのでご紹介します。

タイトル:「新型コロナ禍が照射する日本の大学の課題と大学職員」

開催日時:2021年2月12日(金) 13:00~14:30

 詳細は、広島大学高等教育研究開発センターの
https://rihe.hiroshima-u.ac.jp/2021/01/2-12-2/
ないし、京都大学高等教育研究開発推進センターの
https://w.bme.jp/bm/p/bn/list.php?i=asagao&no=all&m=1932
をご覧ください。

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ

2021年1月13日水曜日

緊急事態宣言に伴う在宅勤務に関する申し入れ

1月7日、政府による再度の緊急事態宣言発出を受け当局側に対して職員の在宅勤務に関して申し入れを行いました。内容は下記のとおりです。当局側からは何らかの回答を行う旨の反応がありましたので、回答あり次第お伝えします。

なお、この問題についての組合のこれまでの取り組み、およびそれに対する当局側の回答等については、

「新型コロナウイルス感染拡大に対する本学の対応に関する質問及び要求」3月10日

「『新型コロナウイルス感染拡大に対する本学の対応に関する質問及び要求』への回答」3月26日

「新型コロナウィルス感染拡大に対応した大学部門の全教職員原則テレワーク化について」4月9日

「新型コロナウイルス感染症と関連した今後の勤務態勢・職場環境等に関する要求」6月17日

「『新型コロナウイルス感染症と関連した今後の勤務態勢・職場環境等に関する要求』への当局側回答」7月13日

「新型コロナウイルス感染症と関連した今後の勤務態勢・職場環境等に関する再要求」7月27日

「在宅勤務でも時間外労働(残業)は記録、申告しましょう」8月8日

をご覧ください。

2021年1月7日
公立大学法人 横浜市立大学
理事長 二見 良之 様
横浜市立大学職員労働組合(横浜市従大学支部)
委員長 三井 秀昭

緊急事態宣言に伴う在宅勤務に関する申し入れ


市民から期待され信頼される大学教育と運営の確立に向け、日頃の取り組みへのご尽力に敬意を表します。

さて、本日、日本政府は再度の緊急事態宣言を発出しました。

前回の緊急事態宣言下においては、初めての事態であったこと、事態の展開が急であったことなどの点は考慮すべきではあるものの、法令上疑わしい対応、個別労働者の事情への配慮の不足などの問題が発生し、一部については現在も組合・当局間での協議・交渉事項となっています。

これらの経緯も踏まえ、職員の在宅勤務について以下の通り申し入れます。

1.職員の在宅勤務が業務命令によるものである点を明確にすること


本来、勤務場所の如何にかかわらず業務命令によらない勤務などはあり得ないはずであり、また、現に在宅勤務に給与が支払われている以上、問題になるはずのない点であるが、在宅勤務における労働者側の支出に関連し、交渉時に当局側からその点について否定する発言があったことを踏まえ、事後に問題が生じないよう、適切な対応が行われることを要望する。

2.在宅勤務において超過勤務が発生した場合、法令に従い手当てを支給すること


この点についても、前回の緊急事態宣言中の在宅勤務に関連して、当局側から「在宅勤務における超過勤務を認めていない以上、超過勤務は存在しない」という実態とは無関係の「あるべき論」からの主張が展開された。今回は、1月から新しい勤怠管理システムが導入されたところであり、在宅勤務についても新システムが適用されるとされていることから、実際の労働時間が把握されることになる。超過勤務が発生した場合は、法令に違反することなく超過勤務時間に応じた手当てを支給されたい。また、管理職が実際とは異なる労働時間を記録するよう指示したり、誘導したりすることのないよう、徹底されたい。

3.個別職員の事情への配慮


若年層に極端に偏った採用を行ったこともあり、育児、介護等、家庭における個別の事情を抱える職員が多数存在している。在宅勤務においては出勤時よりもこれらの問題に関連する困難が発生する可能性もあり、個別職員の事情を無視した在宅勤務の運用とならないよう、十分な配慮をされたい。

以上

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ