2020年7月13日月曜日

「新型コロナウイルス感染症と関連した今後の勤務態勢・職場環境等に関する要求」への当局側回答

6月17日付「組合ニュース公開版」でお知らせしたように、緊急事態宣言解除と神奈川県知事の大学への休業要請解除を受けて、「新型コロナウイルス感染症と関連した今後の勤務態勢・職場環境等に関する要求」を提出しましたが、6月30日、当局側より以下の通り、回答がありました

質問及び要求回答
1.教職員・学生の心身健康、生命を守るための適切な措置の実施

国、神奈川県、関連学会等の各種ガイドライン、チェックリストなどを参考に、例えば職員の職場における物理的距離を確保すること、教職員・学生の健康状態を把握することなど教職員・学生のキャンパスにおける心身の健康、生命を守るための適切な措置を講ずること。また、今後第2波、第3波の再流行も懸念されるところであり、今回対応が泥縄となり確保が困難であった消毒液等の物資、機材について、その流通が回復している間に必要量の確保に努めること。
これまでも適宜通知において、執務室等内の消毒、3密の回避、マスク着用の励行や換気の実施を依頼してきたところです。県のガイドラインにおいても、「十分な距離を保てず、近距離での会話や発声が必要な場合は、飛沫を飛ばさないよう、マスクの着用を徹底させること。」とありますので、引き続き、新たな生活様式と併せて、周知していきます。

健康管理や感染予防対策については、学生、教職員のための大学における感染予防の手引きを作成し、周知しています。

心身の不調への対応については、保健管理センター、2病院の健康管理室で相談を受けています。

消毒液等の物資、機材については、執務室消毒用の次亜塩素酸ナトリウムや防護資材は一定量を、手指消毒液は例年の2倍量を確保したところです。
2.教職員の育児、介護等の負担に関する適切な配慮

緊急事態宣言は解除されたものの、幼稚園、小学校、保育園、福祉施設等に関しては、新型コロナウイルス感染拡大前と同じ状態での利用が出来ない施設も多い。家庭において育児、介護の負担のある職員については、個別の事情を考慮した勤務形態、業務配分とすること。
育児、介護の負担がある職員については、休暇の取得や短時間勤務制度の活用を推進するなど、ダイバーシティ推進計画を着実に進めてまいります。
3.在宅勤務に伴う教職員の業務準備、業務実施の費用負担に対する補償

今回の原則在宅勤務への移行は、組合ニュース(公開版)(4月9日)で指摘したように、4月8日に突然「明日から原則在宅勤務」という指示のみが出されて始まった泥縄式のものであり、後に(組合の指摘もあってか)決定した「大学のPCを自宅に持ち帰って業務に使用することも可」という措置を除けば、そのためのPCや周辺機器の購入、通信費、在宅勤務による光熱水費の増等についてすべて各教職員の負担とされたままである。業務命令に基づく業務を遂行するための費用は雇用者側が負担するのは当然であり、この点に関し制度面での改善並びにこれまでの各教職員の私費による負担分について補償を行うよう求める。
通知では、「原則テレワークにより業務を遂行することとしますが、業務の性質等によりテレワークが難しい場合等については出勤可」としています。なお、いただいた課題等については今後の制度設計の際の参考とさせていただきます。
4.有期雇用職員、アルバイト職員等の雇用の維持

今回の緊急事態宣言、またその前段階での「自粛」に伴う経済面での影響は現在進行中の事態でもあり、その全体像を明らかにすることは困難だが、既に一部で解雇などの問題が発生している。緊急事態宣言に基づく業務縮小の間、アルバイト等についても解雇を行わず法定の休業手当の支払いに努めた経営姿勢について評価するとともに、今後も有期雇用職員、アルバイト職員等も含め教職員の雇用を維持するよう求める。
有期雇用職員及びアルバイト職員の雇用については、法令に則り適切に運用してまいります。
5.給与の維持

同様に安易な教職員給与の引き下げ等を行わないよう求める。本学の財政については、例えば2019年7月29日付の「本学の財務・人件費の状況と今後の職員の処遇に関する質問書」とそれへの回答に見られるように、組合が懸念し自制を求めてきたにもかかわらず近年経営方針として支出を増大させる拡大路線を取り続けてきたものであり、それに伴う財政状況の悪化については一般の教職員が責任を負うべきものではない。今般の新型コロナウイルスに関しても、日本の地方財政制度、大学法人の会計制度の仕組み等により、すでに例年並みの資金が確保されており、今回の新型コロナウイルス感染症を理由として安易な教職員給与の引き下げ等を行う環境にはない。
法人職員の給与については、地方独立行政法人法第51条で「退職手当以外の給与及び退職手当の支給の基準は、同一又は類似の職種の国及び地方公共団体の職員の給与を参酌し、かつ、他の特定地方独立行政法人の職員及び民間事業の従事者の給与、当該特定地方独立行政法人の業務の実績及び認可中期計画の第26条第2項第3号の人件費の見積りその他の事情を考慮して定められなければならない。」とされておりますので、給与改定の際にはこれらの要件を考慮するとともに、引き続き組合と協議してまいります。
6.就業規則、規程の適切な改正

在宅勤務、時差出勤については、既に組合より就業規則、規程等の根拠が無いか疑義のある状態であることを指摘し、当局側もその点については対応を約束したものの、未だに改正がなされていない。改めて適切な改正を行うよう求める。
在宅勤務及び時差出勤については、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、時限的かつ緊急的に試行実施しているものです。

今後、本格的に実施する際には、組合及び職場代表者の意見を聞いて必要な改正を行ってまいります。

1.については、基本的に職員の感染等を防ぐための対応としては「マスク」と「部屋の換気」、それに「手洗い、手の消毒」などで、担当や係ごとに机をくっつけた「島」になって数10センチから1メートル程度の至近距離で仕事をするという密集した執務環境については特に対応は行わないという事でした。要求文にある通り、組合としては在宅勤務との組み合わせなどにより出勤する職員を2分の1から3分の1程度として職員間の物理的距離を確保することを求めていました。本学に限らず、多くの大学が実験、実習などで部分的に対面授業の再開を試みていますが、その際には教室の収容人数を2分の1や40%程度に限定して学生間の物理的距離を確保するのが普通で、学生に関してはそのような対応を取りながら、職員については密集した業務スタイルを放置するのでは意味がないのではないかと危惧します。

また、手指消毒液については例年の2倍を確保したとのことですが、例年であれば各校舎の入り口に置かれた手指消毒液を利用する人は少数で、それを基準として2倍ではとても足りないのではないかと懸念されます。現時点では後期の授業形態をどうするか決まっていないようですが、例えば対面授業を拡大するといった決定を下して、その後で必要な消毒液の量を計算、確保しようとしてもその時点で確保できる保証はないでしょう。いつもながらstrategyやlogisticsについては、ちぐはぐな対応が目につきます。

2.については、当局側回答の様なダイバーシティ推進計画の遂行という観点ではなく、非常事態下における必要な対応として要求したものです。当局側もとりあえず対応自体は否定していませんが、問題が発生した場合には速やかに組合までご相談ください。

3.ですが、事務局長指示により原則在宅勤務という方針が取られていたはずですが、回答受け取りの場では「在宅勤務は職員が自発的に行ったものだから経費補償は不要」という予想していなかった斜め上の説明が返ってきました。回答文においても「業務の性質等によりテレワークが難しい場合等については出勤可」とありますが、これについては、原則在宅勤務という指示が出た際には学内情報システム利用の関係で在宅勤務が難しい業務を担当している場合などを想定しているという説明でした。常識的に考えても「在宅勤務をしたくないので出勤したい」などの事態を想定、許容している文章とは読めません。この問題については、到底承服できない回答のため、近く再度要求を行う予定です。

4.及び5.については、現時点というよりは今後のために組合として立場、見解を示し、予め当局側の対応について釘を刺しておきたいという趣旨のものです。特に5.については、これまでも度々指摘してきたように「財政難を謳いつつ推進された拡大方針」により新型コロナ感染症拡大以前から財務状態が悪化しており(例えば「本学の財務状況と職員の処遇に関する質問書への回答 ― 組合の警告通りの赤字転落、そして教職員人件費へのつけ回しの懸念 ―」)、今回の事態による収入減や支出増への対応に潜り込ませる形で、いわばどさくさ紛れにその処理が行われることを強く懸念してのものです。

最後に6.ですが、在宅勤務については現在も事務局長名で「推奨」されている状態であり、新型コロナの感染状況を見ても、在宅勤務が続くという前提で直ちに制度改正を行うべきものです。

また、「時差出勤」については、「ずらし勤務」という名称でなんと2010年から「試行」が続いています。組合はこの間、「何年にも渡って実施するものを『施行』とは言わない」、「休憩時間の確保、残業開始時間の調整などで対応がしっかり行われるのであれば基本的に反対するものではないので、正式に制度改正の提案を行うよう」求め続けてきましたが、なぜか当局側は一向に対応を行おうとせず「試行」状態を続けることに固執し続けています。「試行」のギネス世界記録でも狙っているのでしょうか、わけがわかりません。

回答はこのようなものでしたが、上に書いたように少なくとも3.の在宅勤務に関わる経費の問題については再要求を行います。続報をお待ちください。

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ

0 件のコメント:

コメントを投稿