2022年12月23日金曜日

職員労働組合・横浜市従大学支部 2022-23年度 活動方針について

12月16日、2022-23年度の職員労働組合・横浜市従大学支部の大会を開催し、活動方針について下記の通り決定しましたのでお知らせします。


職員労働組合・横浜市従大学支部 2022-23年度 活動方針

1.働きやすい職場環境の確保への取り組み

 社会環境の激変とそれに伴う大学への要求の多様化、公的助成の削減など日本の大学を巡る環境は年々厳しさを増しています。特に横浜市立大学においては、法人化以降、全員任期制の導入、国立大学の比ではない大幅な経費の削減、市OB・市派遣幹部職員への経営権の集中による非効率な業務の増加と現場負担の増大など、国立大学法人、多くの公立大学法人に比べ非常に不安定な経営環境下に置かれることになりました。

 労働契約法の改正と法人化以降の取り組みの結果、固有常勤職員の任期制は廃止されたものの、それのみで固有常勤職員をめぐる諸問題が解決されたわけではなく、人材育成、人事評価、労働時間等の職場環境に関する多くの問題が残されています。雇用契約法改正による非常勤職員の一般職への移行に関しても、給与の改善は伴わないままの責任と負担のみの増が懸念され、新たに設けられた有期雇用職員から一般職への転換に関する公平性への疑念など幾つもの問題が残されています。

 また、財政の膨張を支えていた附属病院経営の悪化はコロナ禍に伴う緊急支援という非常事態に伴う要因により一時的に好転していますが、あくまでも一時的な状況であり、今期中期計画における経営拡大方針という支出の拡大を前提とする基本的な方向性の下、固有常勤職員の給与体系の変更や教員に対する給与・賞与・退職金の削減提案など、しわ寄せが一般教職員の人件費に及んでいます。

 マクロ経済環境は消費税引き上げの影響に加え、円安、新型コロナ禍による経済的打撃などにより、さらなる深刻化の可能性があります。すでに円安、消費税引き上げ等の影響による物価上昇は今年度のわずかなレベルの給与引き上げでは相殺できないレベルに達しており、実質賃金の低下が続いています。過去の若年層の極端に偏った固有総合職採用と「法人財政の厳しさ」を謳いながら同時に行われている近年の経営拡大という構造的要因と併せ、今後、法人の経営はさらに悪化することが予想されます。組合の警告に耳を傾けることなく実施されたこれらの施策のつけを、経営責任を問うことなく一般教職員、そして学生に転嫁することは容認できるものではありません。すでに経営者から市財政の悪化とそれに伴う大学側の「厳しい環境への覚悟」を求める発信がなされるなどの兆候が出ていますが、国公立大学法人化を契機とする公的負担の削減や競争的資金化などが当の政府自身の政策目標に反する学術の世界での日本の「一人負け」状況を生んでいる状況を直視する必要があり、設置者としての責任ある財政負担を求め、法人化時のような急激かつ大幅な交付金の削減が繰り返されないようにすることが必要です。

 大学に働く職員の職域を代表する労働組合としてこれらの問題に取り組み、法人化時の「固有職員の処遇は市職員に準じる」という労使合意を遵守させるとともに、職員の労働環境の改善、安心して働ける職場の確保に全力を挙げます。

2.組織拡大への取り組み

 法人化以降、市派遣職員の引き上げ・定年退職、固有職員の転職等に伴う組合員の減少が続いおり、固有職員の組合員については、すべての職種で様々な問題を抱え、かつ多忙化により目前の業務以外に目を向けるゆとりさえ失いつつある状況で組合の維持・拡大は依然として容易ではない状況です。

 また、若年層に広くみられる、労働環境や雇用条件等に問題を感じる場合、労働組合に加入して職場の改善に地道に取り組むのではなく転職を選択するという傾向は本学においても共通しており、固有職員組合員の退職による組合の脱退も続いています。

 組合ニュース【公開版】を通じた情報提供、問題提起等によりプロパー職員の組合に対する信頼・期待は高まっていますが、これを新規組合員の獲得・組織の拡大へとつなげていく必要があります。特に、近年は新規職員の一括採用が無くなり、これに合わせて実施していた広報・勧誘活動も行われない状態が続いているため、これらの取り組みの立て直しを図ります。また、職場集会、学習会などを通じてずらし勤務の試行導入や業務の多忙化で難しくなっている組合員相互の交流を確保・促進し、組合の基盤を強固なものとします。

3.固有総合職の給与体系変更、人事考課制度変更問題への取り組み

 2017年度来、交渉を行ってきたこれらの問題については2019年8月、9月に相次いで大枠で合意しました。しかし、制度の具体的設計、運用等に関しては懸念すべき点が残っており合意時に確認した一定期間経過後の検証も合意時の約束に反し行われていません。また、市職員との処遇差が生じていた住居手当に関しては、2019年以降はそもそも合意していた交渉再開の要求にも当局側が応じないという状態でしたが、本年2月、当局側が組合の要求通り市職員と同額へと改善する提案を行い、8年越しの交渉にようやく決着がつき、市職員と同等の処遇を回復することができました。今後は人事考課等の残る課題への取り組みを進めます。

4.一般職、有期雇用職員の処遇改善問題への取り組み

 法人化、また嘱託職員の一般職、有期雇用職員制度への移行に伴う市の嘱託職員(現会計年度雇用職員)との給与格差、総合職と一般職、一般職のフルタイム勤務と短時間勤務、一般職と有期雇用職員、それぞれの間での格差問題などへの取り組みを継続して行ってきました。これらのうち、「一般職のフルタイム勤務と短時間勤務の時間当たり給与額の同一化」「有期雇用職員より少ない一般職短時間勤務職員の年次休暇付与日数の改善」「有期雇用職員の一部改善」については2月に当局側より改善の提案があり、長年の取り組みの一部が結実しましたが、給与水準は依然としていわゆるワーキングプアレベルであり、さらなる処遇改善を目指して取り組みを継続します。

5.大学専門職の雇用問題への取り組み

 大学専門職制度は、国内の大学関係者等の大学職員の高度化への要請に対する先進的取り組みとして導入されたものでしたが、法人化直後から大学の経営権を事実上掌握した市派遣幹部職員によって、その趣旨を無視した制度運用が行われ、告発本の出版など様々な問題が起こってきました。組合執行委員でもある大学専門職2名についても3年ごとの契約更新の度に様々な問題に見舞われ、前回の契約更新に際しては、「学務教授」への変更について、教員、固有職員、横浜市職員に比して著しく均衡を逸した実現困難な基準を一方的に示すなど、職員の高度化や専門化とは相反する人事政策上の動きが続いています。労働契約法の規定により無期雇用転換権が発生しているため、任期制の問題は法人の方針とはかかわりなく強制的に解決されることになりましたが、高度専門職としての適正な処遇を求め、今後も取り組みを継続します。

6.コンプライアンスに基づく労使関係確立への取り組み

 1.でも記したよう法人化以降積み重ねてきた交渉や組合ニュース【公開版】等を通じた指摘がある程度の影響を及ぼした模様で、法人化後の数年間の状況に比べれば担当者レベルでの対応に関してはある程度の改善が認められるものの、法人化後、事実上人事権等を掌握する市派遣幹部職員の労働3法、労働契約法を始めとする関係法令、制度等への知識・認識の不足が本学の労使関係の底流を流れており、それが人事制度、制度運用、個別の雇用関係トラブルに大きく影響を与えています。ただし、近年、労働基準監督署からの厳しい指導もあって、法人としても組合との関係も含め法令順守の姿勢を示さざるを得ない環境下に置かれており、また、昨年度来、当局側担当者が法人化以降初めて、学内諸規定に問題があるものが存在することを認め改善に取り組み姿勢を示すなどの変化も認められます。これらも追い風として関係法令及びそこで保障された労働者・労働組合の権利の尊重に基づく労使関係の確立を求め取り組みを続けます。

7.横浜市従本部、教員組合等との連携

 本学の労働環境は、法人プロパー教職員にとって非常に厳しい状態が続いています。横浜市従本部、病院組合、近年、金沢八景キャンパスにおける諸問題について共同で要求、交渉を行うことが増えている教員組合等との連携を深めつつ、山積する問題に取り組んでいきます。


にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ

2022年11月11日金曜日

今年度の給与・特別給について

 10月12日、本年度の横浜市職員の給与と特別給(ボーナス)に関する横浜市人事委員会の勧告が発表されました。
https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/saiyo-jinji/romu/kyuyo/kako.files/04gaiyou.pdf
給与については、横浜市内民間事業所の給与との比較に基づき新規学卒者に対する初任給の5000円引き上げ(大卒者)等若年層を中心とした給与の引き上げ、特別給(ボーナス)については0.1月分引き上げ年4.40月とするというものです。

 繰り返しお伝えしてきたように、法人化時に職員の処遇については「市職員に準じる」ことを合意し、以後はこの合意が守られる場合には基本的にそのまま受け入れ、これを逸脱した場合には大学独自に交渉を行い法人化時の合意を確認、市職員と同様の処遇を確保するよう交渉を行ってきました。例えば、当局側が「法人化時の合意など知らない」と言い出した際の再確認をめぐる交渉、
https://ycu-union.blogspot.com/2016/07/blog-post_94.html
https://ycu-union.blogspot.com/2016/09/blog-post.html
財政難を理由に法人固有職員の住居手当について市職員との格差が最大で月額1万円以上に拡大、7年以上に渡って要求と交渉を重ね再び市職員と同額にまで引き戻した住居手当をめぐる交渉などです。
https://ycu-union.blogspot.com/2022/03/blog-post_98.html

 今年度は上記のように10月12日に市人事委員会が給与、特別給とも引き上げの勧告を出したわけですが、11月9日、当局側より大学においても「市に準じて給与、特別給とも引き上げる」との説明がありました。具体的には大卒者の初任給を5000円引き上げるほか、30代半ば程度までの若手職員を対象に給与表の引き上げの改定を行うというものです。特別給についても市人事委員会勧告通りの引き上げとなります。

 また、かつての嘱託職員、現在の一般職については給与の0.22%引き上げを行うとの説明がありました。特別給についても月額給与が算定の基礎になるので僅かですが引き上げになります。一般職については、かつての嘱託時代においても法人化後は市の嘱託と給与格差が拡大する傾向にあり、繰り返し引き上げを求めていました。給与はそのままで任期制から無期雇用の一般職に移行して以降は市にはない独自の人事制度となり、市との比較というよりは非正規時代の給与水準のままで業務負担が増大している状況などに照らして給与引き上げを求め続けているものの、こちらについては残念ながら当局側が受け入れない状態が続いています。とはいうものの、制度変更提案時には基本的に嘱託時代と同様に短時間勤務が主となるという想定だったものが実際には残業してのフルタイム勤務状態が続発し、希望する個別職員のフルタイム勤務への契約変更の交渉や短時間勤務とフルタイム勤務の時間当たり給与額が異なっている(短時間勤務の方が低い)状態だったところ、時間当たり給与を同額とする成果を獲得したりもしています(こちらも4年かかってしまいましたが)。
https://ycu-union.blogspot.com/2022/03/blog-post.html

 もう一つ、一般職の「試用期間」的な位置づけをされている有期雇用職員(1年契約最大3年まで)については、市の会計年度任用職員と同様に引上げ等はないとの説明がありました。有期雇用職員については、そもそもその位置づけからして疑問があり、新制度提案時に試用期間は一般職として採用後に普通の試用期間とすれば済むことであり、別の職種とすること自体がおかしいと指摘した経緯があるのですが
https://ycu-union.blogspot.com/2017/07/blog-post_27.html
制度が発足して以降はそれはそれとして、実際に雇用されている人がいる以上、組合として権利を擁護する対象であり、一般職とセットで給与引き上げを求め続けています。

 このように今年度は、市と同様に(最近の物価上昇分をカバーできるレベルではありませんが)給与、特別給とも引き上げ、市にない独自制度である一般職については給与、特別給ともわずかな額の引き上げ、有期雇用職員に関しては処遇改善はないということになります。総合職等、法人化時の合意の対象となる職種については合意を逸脱しない限りは市における交渉に委ねていますが、そこに含まれない一般職、有期雇用職員については大学独自で交渉するしかありません。しかし、一時期に比べ一般職、有期雇用職員で組合に加入する人は大きく減っている状態です。

 安倍、菅政権後、それまで報道されないか大きく報道されることのなかった日本経済と日本の労働者を巡る惨状(先進国中で一国だけ、あるいはイタリアと日本のみ各種数値が他の諸国に比べ劣後し続けており、1人当たりの給与額やGDPで30年前は0.6倍程度だった韓国にも抜かれているか間もなく抜かれる等)が次々と大手メディアでも取り上げられるようになっていますが、日本の労働者の給与が上がらない一因として、労働者が労働組合に入らないため経営者に給与引き上げ圧力が働かないという点も指摘されています。今後、黙っていても生活水準が向上していくという人はますます少数になっていく可能性が高いでしょう。恒例ですが、組合への加入を呼びかけて終わりとします。
https://ycu-union.blogspot.com/2010/04/blog-post_284.html

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ

大学設置基準改正 ― 教育研究実施組織、今後の影響 ―(前編)

 前回8月11日付の組合ニュースで設置基準改正案の教育研究実施組織のつじつまの合わない部分についてあれこれと推測してみましたが、蓋を開けてみると全部はずれでした。

 「従前の教員組織等が果たしてきた役割や必要性は変わらず、教員や事務職員等の役割や連携等について、学内の規程等に明記すること等により、引き続き担保されることが求められる」「必ずしも今回新たに規定した『教育研究実施組織』に対応する新たな組織を設けたり、新たに人員を配置したりすることを求めるものではない」(大学設置基準等の一部を改正する省令等の公布について(通知))などという説明が出てくるとは予想していませんでした。

 旧設置基準第3条および第7条の「教員組織」をわざわざ上書きまでして消し、代わって「教育研究実施組織」を書き入れたにもかかわらず、「従来の教員組織が果たしてきた役割や必要性は変わらない」、つまり学部教授会の位置づけは変わらない、そして「『教育研究実施組織』に対応する新たな組織を設けることは求めない」、つまり「組織」と法令に明記したにもかかわらず「組織」を作る必要はないというのですから、では、一体何のために改正を行ったのかということになります。

 あからさまに何か裏面の事情が存在するのだろうと疑わせる展開ですが、その点につきネット上でかつ無料という範囲での観測では、北大の光本先生がインタビュー記事だったかで今回の改正設置基準と教育再生実行会議の後継である教育未来創造会議の「我が国の未来をけん引する大学等と社会の在り方について(第一次提言)」(2022年5月10日)との関連性を指摘していて、それが正解なのだろうと思われます。光本先生が指摘されたのは、第一次提言の「現在35%の自然科学系専攻学生割合をOECD諸国最高の50%程度に」とする目標との関連性だったと思うのですが(あいにく当該記事は既に削除されたようでネット上には見当たらず、保存もしておかなかったのでうろ覚えの記憶になります)、それは当然スケジュール面にも影響するはずで、実際、「我が国の未来をけん引する大学等と社会の在り方について(第一次提言)」のページを見ると9月になってから工程表が追加されており、そこでは「学修者本位の観点から、最低基準性を担保した上で大学の多様で先導性・先進性のある教育研究活動を促すため、教員や校地・校舎等の規定も含めた大学設置基準等の改正を行う。【2022 年末まで】」とあります。

 もう少し具体的に言うと、わずか10年で大学生に占める自然科学系の学生の比率を15%程度引き上げるというかなり無茶な目標であり、その実現のために①専任教員の学内でのいわば使い廻しや非常勤教員、企業等の実務家の在職のままでの活用などがより容易となる基幹教員制度や②授業科目の自ら開設の原則、単位互換等の60単位上限、遠隔授業の60単位上限、連携開設科目に係る30単位上限、校地・校舎面積基準など広い範囲で設置基準の規定の一部または全部の免除を受けられるという特例制度の活用によってより低コスト、短期間での自然科学系学部学科の設置や定員増などを容易とするため、設置基準の改正を急がされた、という経緯だと思われます。なお、いくつかの情報をつなぎ合わせるともともとの改正設置基準の施行の予定は2024年4月だった可能性が高そうです。これであれば大学分科会における検討期間は1年~1年半は取れたはずですので実質的な議論や修正もできたはずです。

 ここでいわば割を食ったのが教育研究実施組織や旧基準での学生部、事務局に関わる変更部分です。前述の基幹教員制度や特例措置については、大学分科会の質保証システム部会における検討(2021年6月~2022年3月)を経て3月に「新たな時代を見据えた質保証システムの改善・充実について」(審議まとめ)として取りまとめられており、大学分科会での実質的な議論は飛ばしたとしてもそれなりの検討は既にしました、という主張は出来ないこともないのに対して、教育研究実施組織をはじめとする組織に関わる部分については「新たな時代を見据えた質保証システムの改善・充実について」(審議まとめ)でも「現在は大学設置基準の様々な箇所に分散して規定されている教員や事務職員、各種組織に関する規定を一体的に再整理する。」程度であり、内容的にも教育の質保証よりは「大学ガバナンス改革」の系譜に位置づけるべきもので、改めて大学分科会での議論、検討が必要な問題であったはずです。しかし実際には5月の分科会に省令案骨子案の提示、次回6月に改正省令案提示、次の9月の分科会ではもう改正の諮問と議決、しかもいずれも他の議題と一緒に審議というスケジュールで、これでは実質的な審議など望むべくもありません。改正された設置基準と通知等の解説部分に不審が生じるのは当然で、(相変わらずの官邸優位の状況ではあるので、そちらの意向や政治的状況にも影響されそうですが)教育研究実施組織については第2幕が数年内にあるかもしれません。

(菊池 芳明)
にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ

2022年8月11日木曜日

大学部門の一斉休業日について(強制ではありません)

※このニュースは2021年7月30日に公開した内容を今年度用に再編集したものです。元のニュースはこちらからご覧になれます。


 2017年度より導入された大学部門における一斉休業日ですが、今年度の夏季は8月12日と15日に、年末は12月28日に設定されています。

 一斉休業日は過去には局長通知にて、年末は年次有給休暇または振替休暇で取得するよう通知がありました。

 そもそも年次有給休暇については、法律上、労働者の請求する時季に与えられるものとされており(労基法第39条第5項)、雇用者による制限は原則として認められません。

 そのため、昨年度、休暇の位置づけを確認する要求書を提出し、当局から回答を得ています。(詳細は 「大学部門の一斉休業日に関する要求書」と当局側回答 をご参照ください。)

 繰り返しますが、「一斉休業日」は強制的に特別休暇などの休暇を取得させられる日ではありません。他の日に取得したいので「一斉休業日」には休まないとしても一切問題はありません。管理職から休暇取得を強制されるなどトラブルに見舞われている方は組合までご相談ください。

  付言しておくと、組合は「一斉休業日」を設定することに反対はしていません。過去、東日本大震災後の節電が叫ばれた時期に対応の一例として「一斉休業日」を挙げたこともあります。(詳細は 人事給与システム問題、夏季の勤務体制・職場環境、ずらし勤務試行問題に関する協議要求 をご参照ください。)

 この件に限りませんが、曖昧な制度設計や運用を繰り返すことによって組織としての運営コストを増加させていること、職員の心理的安全性を低下させていること、教職員の利益を損ねていることなどが問題なのです。

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ

大学設置基準改正案 ― 教育研究実施組織と教授会

 30年前の大綱化以降、最大の変更となるであろう大学設置基準の改正案ですが、この稿を書いている8月8日時点ですでにパブリック・コメントが終了、9月7日の大学分科会で改正案が了承されれば、後は文科省の内部手続きで予告通り10月1日より施行されることが確実と思われます。

 今回の改正案は、改正自体は前から予告され、部分的な議論等は質保証システム部会など行われていたものとはいえ、改正案そのものではなく方向性を示す骨子案が最初に示されたのが5月17日の第167回の大学分科会、具体的な改正案が示されたのが次の6月22日の第168回大学分科会、そして次回9月7日の169回で改正案承認の議決を取り中教審としての議決とし、後は省内の手続きだけで改正、告示、10月1日施行という記憶にないスピード改正です。

 主な内容として3点、紹介しておきます。

 第1が、「専任教員」の「基幹教員」への変更。これは「専ら当該大学の教育研究に従事」し「一の大学に限り、専任」である現在の「専任教員」を

①「教育課程の編成その他の学部の運営について責任を担う」
  &
②「当該学部の教育課程における主要授業科目を担当する教員(専ら当該大学の教育研究に従事する者に限る。)」 or ③「当該学部の教育課程における年間8単位以上の授業科目を担当する教員」
を満たす「基幹教員」に変え、その「基幹教員」のうちの「もっぱら当該大学の教育研究に従事するもの」が「必要最低教員数(現在の「基準教員数)」の4分の3以上」を占めなければならない、というもの、言い換えれば4分の1までは「もっぱら」他の組織の業務に従事する者で可とするものです。

 これは、これまで私学団体及び産業界がそれぞれの立場から要求していた「専任教員」に係る要件緩和の要求に応えるものですが、教職員組合などからは「これまでの専任教員の削減や専任教員の労働強化につながる」等の批判が出ています。その他にも、「基幹教員」のハードルがかなり低い ― ①については、現在の実務家教員のみなし専任と同様、具体的には教授会等への参画などですが、全部に参加せよというわけでもないでしょうし、そもそもきちんと参画の実態を確認できるのか、そしてそれで「責任を担う」というほどの感覚を喚起できるのか、②は「月額報酬 20 万円以上を想定」、つまり年間240万というワーキングプア水準でもいい ― ことや、それによって非常勤講師の低コストでの「基幹教員化」などという新たな問題も生じかねないことなどの懸念もあります。オンラインの活用など、うまく使えば厳しくなる経営環境下での教育水準の維持や向上につなげることもできるでしょうが、その逆も可能な制度変更と言えます。

 第2が、設置基準の適用に関する特例制度です。これは簡単に言えば「特区制度」と同じ発想、制度 ― 現在の法制度の枠内でできないことを国に申請し、認められれば特例として法制度の適用を緩和や除外する ― であり、設置基準の制限の下では実現できないという取り組みについて文科大臣に申請、認められれば関係する設置基準の適用の緩和や除外の対象となるというものです。これまた、適切に運用されれば新しい試みと成果などにつながる可能性はあります。一方で、①対象となる範囲が広く、本来設置基準の緩和方向での改正ーあるいはリバタリアン的発想に立つならいっそ完全に自由化してしまう―などで対応するのが筋ではないか、②特区方式ということは「認可する側」の裁量、判断次第ということであり、政府機関の裁量の増大とその判断への依存というのは、民主主義、自由主義と法治主義の組み合わせにとっては決して望ましいことではない、③近年の大学と大学関係者の「態度、志向」から見て、インナー情報と認可可能性の増大を求めて(本当に有効かはともかく)認可官庁の天下りを受け入れようとする動きが出るだろう等が懸念されます。

 そして最後が今回のサブタイトルにした「教育研究実施組織」です。改正案の第3条に「学部は、専攻により教育研究の必要に応じ組織されるものであつて、教育研究上適当な規模内容を有し、教育研究実施組織、教員数その他が学部として適当であると認められるものとする。」、また第7条に「大学は、その教育研究上の目的を達成するため、その規模並びに授与する学位の種類及び分野に応じ、必要な教員及び事務職員等からなる教育研究実施組織を編制するものとする。」とあり、改正骨子案にある「『教員組織』~について、事務職員等も参画し教育研究活動を行うことを明確化する観点から、『教育研究実施組織』に改め」の通り、これまでの第3条の法文の「教員組織」を「教育研究実施組織」と置き換えたものです。

 さて、ところで「教員組織」とは一般的には「教授会」を指すものと解されています。そして「教授会」については「大学設置基準」ではなく「学校教育法」第93条で規定されているもので、関連して学校教育法施行規則に「代議員会」が規定されています。しかし、今回の改正はあくまでも「大学設置基準」だけで「学校教育法」は改正対象ではありません。

 ということは、素直に解するなら設置基準改正により学部には「教育研究実施組織」を置かなければならなくなるが、一方で学校教育法の「教授会」の規程は手付かずでそのままとなっていることから「学部教授会」も存続する、ということになります。あいにく大学分科会当日は傍聴し損ね、公表資料とパブリック・コメントの資料からのみの判断ですが、そのように解していました。

 ただ、同時にいくつか腑に落ちない点もありました。第1に「なぜ、こんなに急ぐのか」、第2に設置基準の「教員組織」、つまり「教授会」を「教育研究実施組織」に置き換える一方で学校教育法が手付かずというのは片手落ちな感がある、ないしは1つの学部内に2つの組織が併存するわけで非効率では、あるいはどう棲み分けるのだろうか、といった点です。そして第3、これは第2に繋がりますが、改正案の「教育研究実施組織」に関する規定は不十分に思えます。「教員及び事務職員等からなる」ことは書かれていますがその権限等が不明です。例えば、学長であれば学校教育法で「学長は、校務をつかさどり、所属職員を統督する。」(第92条第3項)と定められており、教授会であれば同じく学校教育法第93条第2項、第3項にその権限が列挙されています。

 ただし、この点については、現行設置基準の事務組織に関する規定「大学は、その事務を遂行するため~事務組織を設けるものとする。」(第41条)に照らすと、似たようなレベルの規定の仕方(「大学は、その教育研究上の目的を達成するため~必要な教員及び事務職員等からなる教育研究実施組織を編制」(改正案第7条第1項)と言えないことも無いから、これでいいのだという考え方もあるかもしれません。とはいえ、学部内で似たような人的構成の「教授会」と併存するというのであれば、両者の関係、それぞれの権限を明確にしておかなければ問題が起こるのは当然予想されることで、やはりなんとも落ち着きません。     

 上記のように当日傍聴し損ねたこともあり、誰か傍聴して何か聞いていないか、あるいは何か背景等について知っていないか尋ねてまわったりしたのですが、そのあたりは不明のままでした。ただ、あれこれと議論しているうちに、当初の解釈 ― 同一学部内に「教育研究実施組織」と「教授会」が併存する ― とは別の可能性があることに気づかされました。

 些かトリックじみたアクロバティックな論理になりますが、以下のようなものです。

 第1に、大学設置基準第3条における「教員組織」は「教育研究実施組織」に取って代わられることになります。

 第2に、その「教育研究実施組織」は「教員及び事務職員等からなる」とされています(改正案第7条)。

 第3、学校教育法の教授会に関する第93条各項の規定のうち、第4項には「教授会の組織には、准教授その他の職員を加えることができる。」とあります。ご承知のように、学校教育法、大学設置基準等では「職員」という言葉は複数の意味があり、使い分けられています。例えば「学長以下の全教職員」を職員と呼ぶこともありますし、「教育職員」つまり教員を除いた事務職員等を「職員」と呼ぶ場合があります。そして、この学校教育法第93条第4項の「職員」ですが、文科省の行政解釈がどうなっているか、確認しようとしてもこれがなかなか明確な文書としては見つかりません(口頭では昔、関係者にヒアリングしたことはあるのですが、さすがに「根拠」にはできないので)。①しかし、国立大学を含むほぼすべての大学の教授会に関する規定は、教授以外の教員の参加についてはさまざまであるものの、教授、准教授、講師、助教の「教育職員」すなわち教員の範囲としており(文字通りの“若干”の例外あり)、2014年のいわゆる「大学ガバナンス改革」を経てもそのままであること(文科省が行政解釈を変更しているなら、少なくとも国立大学の教授会の「その他の職員」に関する規定、運用が変わっているはず)、②「ガバナンス改革」の折の文科省の「学校教育法及び国立大学法人法等の改正に関する実務説明会」で、教授会に関して大学振興課長が「学校教育法でいう教授会というのは教員によって構成をされる会議という意味で使っております」「教授会については、専門的知見を持った教員から構成される合議制の審議機関である」と述べていることから、文科省自身も教授会の構成員は教授を中心とした教員と解釈している、と考えて良いと思われます。 https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/daigakug/1353253.htm

 で、そのうえでの話になりますが、法令の行政解釈は行政解釈にすぎないとして、仮にこれを「職員とは学長以下のすべての教職員、つまり事務職員等を含む」と文科省が変更したらどうなるでしょう。

 大学設置基準改正案第3条で「教員組織」に取って代わる「教育研究実施組織」は、第7条で「教員及び事務職員等からなる」とされていました。さらに、学校教育法第93条第4項「教授会の組織には、准教授その他の職員を加えることができる。」の「その他の職員」を教員に限定されない、つまり事務職員等を含むと解釈を変更すれば「教授会の組織には、准教授その他の教員、事務職員等を加えることができる。」という意味になります。すると「教員及び事務職員等からなる」(教育研究実施組織)と「教授会の組織には、准教授その他の教員、事務職員等を加えることができる。」(教授会)は構成員が同じ存在となり、教育研究実施組織≒教授会となります。さすがに色々無理はあるのですが、近年、他の政策領域では色々な無茶が行われてきたこと、上記のように考えると「教育研究実施組織」の定義が不十分に思えることや、事実上、大学関係者が反対する時間的余裕がないスケジュールにしたこと(大手メディアでの報道も全くないので、そもそも大半の大学関係者は改正案が出ていることすら知らないのではないかと思います)の辻褄が合ってしまうことなど、論理的な仮説としてはあり得ることではないかと思うのです。安全保障の領域では脅威を「能力」と「意図」という2つの面から評価しますが、ここで言えば学校教育法の「その他の職員」の解釈を変更すれば「教育研究実施組織≒教授会」という「能力」に相当する基盤が成立し、後は「意図」の問題、という構図になります。そして「意図」は容易に変化しうるものとされています(これが軍拡競争をなかなか抑止できない原因の一つなのですが)。

 もう一つ、別の可能性も提示しておきましょう。学校教育法第93条は教授会を「どこに」置くかは規定していません。これもあってガバナンス改革の折、文科省は教授会を置く単位は学部でなくともよい、と繰り返しています。これを今回の話に適用すると、学部には事務職員等を含む「教育研究実施組織」を学部教授会に代わって置くこととし(これなら改正の趣旨そのものに話が合います)、教員のみから成る「教授会」は学部以外の、例えば「全学教授会」のような形で置くようにする、という可能性です。

 どちらにしても色々と問題があって、特に4年前からやっている職員論の共同研究での自分の担当部分 ― 日本の大学の事務職員の本質を、民間企業、官公庁のホワイトカラーと同様の「日本型サラリーマン」(メンバーシップ型)であるという点に求め、その特徴と課題を抽出する ― の暫定的な結論に絡めると非常に心配になるのですが、長くなってきたのでこの辺で。この辺りは機会?気力?があったら紹介したいと思います。

(菊池 芳明)
にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ

2022年6月27日月曜日

就業規則改定案に関する職員組合執行部の見解

  3月23日付組合ニュース【公開版】 から5月9日付組合ニュース【公開版】までの3回に渡って、当局側からの組合に対する5つの提案とそれに対する組合の回答についてご紹介してきました。その後、当局側が合意事項に関連する就業規則の改訂について労基署に届け出る際に金沢八景キャンパス事業場の過半数代表者の意見書の添付が必要な関係で、過半数代表者から職員組合、教員組合に対して改訂案についての見解を明らかにするよう求められ、下記の通りの見解書を作成、過半数代表者に提出しました。

 内容としては5つの提案に対する組合回答の最大公約数的なもので、①いずれも職員の処遇改善につながるものであり、基本的には了承する、②ただし、組合が(当局側との合意に基づき)数年来、交渉を求めてきたにも拘らず当局側が実質的に交渉に応じようとしてこなかった問題が複数含まれていること、今回の提案が実質的な交渉を困難とするスケジュールであったこと(修正を行う時間的余裕がない)などは問題で、今後対応を改める必要がある、③今回の提案、改訂でなお残される問題や運用上の問題が発生した場合などについて、組合から要求があった時は、誠実に対応する必要がある、という3点です。

 過半数代表者からは、同様に意見を求められた教員組合の見解と併せて意見書が作成、当局側に手渡され、すでに労基署に届出がなされています。

 就業規則改定に際しての過半数代表者の意見書は「添付すること」は法的に義務付けられていますが、経営者がその内容に法的に拘束されるわけではありません(労働基準法第90条)。しかし、過半数代表者の意見が尊重されず簡単に無視されるようなことは労働基準法や労働組合法など労働関係法令、制度の本来の趣旨に反するものであり、この意見書の内容が今後の交渉において尊重されるか、今後の交渉を通じ確認していきたいと思います。

就業規則改定案に関する職員組合執行部の見解


2022年5月6日
金沢八景事業場 過半数代表者 藤﨑 晴彦 様

 照会のありました固有職員住居手当等に関する就業規則の改定に関し、職員組合執行部として以下の通り見解を申し上げます。

  1. 今回の改正は、固有職員の住居手当問題をはじめとしていずれも本学教職員の処遇改善や教職員間の処遇格差の是正に関わるものであり、職員組合としても基本的にはこれを歓迎し了承するものである。

  2. ただし、固有職員の住居手当問題、一般職の短時間勤務者の時間当たりの給与額がフルタイム勤務者に比べ劣っていた問題など、職員組合が長期に渡って交渉を求めていた事項に関して、実質的に交渉に応じようとしない期間が長期に渡ったこと、今回の提案が新年度当初からの実施、適用を希望しながら組合への提案は2月末と実質的な交渉を不可能とする時期に提案されたことなどは問題であると考える。繰り返し指摘してきたことであるが、当局側には、法人化により労働基準法、労働組合法等の法令が完全に適用されることになっている点など関係法制の適切な理解、労使対等の原則の尊重などに基づき誠意をもって要求、交渉に臨むよう求める。

  3. また、今回改定でもなお残された処遇の改善や教職員間の処遇格差の是正に係る問題、今回改定された事項の実施に伴う運用上の問題などについて、組合から指摘、要求があった場合、誠実に対応するよう求める。
以上

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ

2022年5月9日月曜日

不妊治療のための休暇の新設提案に対する回答

 2月24日当局側から提案があり、3月15日に回答を行った事項についてのニュース、今回でようやく最後になります。

 提案された改正内容は国家公務員に導入されたもの、およびそれに準じた横浜市のそれと基本的に同一で、年5日(一部の治療については10日)の有給休暇を認めるというものので、取得単位は1日または1時間、常勤の教職員だけでなく一定の条件を満たした非常勤教職員も対象になります。

 これも現状からの改善であり、それ自体に反対する理由はないため下記の通り受け入れる旨の回答を行いました。

 なお、この提案内容については組合員からも特に意見等はなかったのですが、プライバシーの問題も含め実際の運用の段階で課題が出ることも十分あり得る問題です。そのような場合は組合にご相談ください。

2022年3月15日
公立大学法人 横浜市立大学
理事長 小山内 いづ美 様
横浜市立大学職員労働組合(横浜市従大学支部)
委員長 三井 秀昭

不妊治療のための休暇の新設提案に対する回答


市民から期待され信頼される大学教育と運営の確立に向け、日頃の取り組みへのご尽力に敬意を表します。

さて、2月24日付不妊治療のための休暇の新設提案について、以下の通り回答いたします。

  1. 今回提案内容は、国の制度新設に倣って仕事と不妊治療の両立をこれまでより容易ならしめるものであり、提案について了承する。

  2. 制度の運用に当たっては制度の利用者のプライバシーに十分配慮するよう求める。

  3. また、示された提案が提案書としての体裁をなしていないこと、実質的な交渉を困難とする提案時期となった点については今後対応を改めるよう求める。
以上

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ

2022年4月15日金曜日

一般職短時間勤務職員の年次休暇付与日数の改善提案に対する回答

 前回、前々回に引き続き2月24日に突然多数の提案が当局側から示され、3月15日に回答を行ったものの一つです。

 前々回の組合ニュースの「短時間勤務職員の処遇改善について」、前回の「非常勤教職員の休暇制度の見直し提案に対する回答」でも書いたように、本学の非常勤職員制度の改革は、終身雇用に回帰したという点は評価できるものの、明快で分かりやすいとは言い難い屈折を伴うもので、特に、①「一般職(短時間勤務)」という、短時間勤務で給与も低い「嘱託職員」が、有期雇用から無期雇用という点についてのみ変更されたはずの存在と「一般職(フルタイム勤務)」の関係、②「一般職」とその試用期間的位置づけの、1年契約、最大3年までの「有期雇用職員」の関係、という2点については問題点をはらむものとなっていました。

 その一つが、「有期雇用職員」の年次有給休暇が1年目16日、2年目17日、3年目18日であるのに対して、「一般職(短時間勤務)」の年次有給休暇は勤続年数に関わらず16日とされている点です。「有期雇用職員」は「一般職」の試用期間的位置づけにされているわけですが、「有期雇用職員」2年目に「一般職」への転換が認められた場合は1日分、3年目に「一般職」への転換が認められた場合は2日分、有給休暇がなぜか減ってしまう制度設計になっています。

 今回の当局側提案は、この点について、「一般職(短時間勤務)」の年次有給休暇を、1年目16日、2年目17日、3年目18日、4年目19日、5年目以降20日(年数は「有期雇用職員」時から通算してカウント)と改めることで、一種の逆進性を解消しようとするものです。

 職種による非合理な処遇格差の一部を解消する措置であるので、下記の通り、提案自体については受け入れる、ただし労使交渉の在り方等に関して改善を、とする回答を行いました。

2022年3月15日
公立大学法人 横浜市立大学
理事長 小山内 いづ美 様
横浜市立大学職員労働組合(横浜市従大学支部)
委員長 三井 秀昭

一般職短時間勤務職員の年次休暇付与日数の改善提案に対する回答


市民から期待され信頼される大学教育と運営の確立に向け、日頃の取り組みへのご尽力に敬意を表します。

さて、2月24日付一般職短時間勤務職員の年次休暇付与日数の改善提案について、以下の通り回答いたします。

  1. 今回提案内容は、有期雇用職員が一般職の短時間勤務に転換した場合に生じうる年次休暇付与日数の減少を制度面で改善するものであり、提案について了承する。

  2. ただし、育児時間について、既に制度化されている常勤職員においては有給とされているにも関わらず非常勤職員については無給とする根拠は明確ではなく、処遇格差解消の観点から今後再検討を行うよう要望する。

  3. また、示された提案が提案書としての体裁をなしていないこと、実質的な交渉を困難とする提案時期となった点については今後対応を改めるよう求める。
以上

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ

2022年4月3日日曜日

非常勤教職員の休暇制度の見直し提案に対する回答

 これも前回組合ニュースと同様、2月24日に突然提案のあったものです。

 制度変更前の過去の職員人事制度では「嘱託職員」「契約職員」が一般的にいう「非常勤職員」でしたが、制度変更によりそれらが有期雇用でない「一般職」となり、現在の制度では「有期雇用職員」が主として一般的にいう「非常勤職員」になっています。

 横浜市大の場合、この「有期雇用職員」は特殊な位置づけになっており、制度変更時に「一般職」になるための試用期間的な位置づけの職として提案されました(実態としての運用には不明確、疑わしい節もありますが、組合員の減少によりそのあたりは十分に把握できていません。情報提供を歓迎します)。これは原理的に考えればおかしな話であり、制度変更に伴う交渉時に指摘、再考を求めましたが、当局側は受け入れず(「非常勤職員制度の見直しに対する要求」の5.) 、組合としても新たに作られる「一般職」の処遇の設計に限られたエネルギーを注がざるをえず、「有期雇用職員」については従来の「非常勤職員就業規則」に基づく「嘱託職員」の処遇が基本的に継続する形で制度がスタートしました。

 今回提案されたのは、このうち、常勤職員については既に作られている制度の新設、ないし制度はあったものの常勤職員と内容で格差が設けられていた事項の改善、具体的には;
①「配偶者の出産のための休暇」「男性職員の育児参加休暇」の新設
 (日数等は常勤職員と同一)、
②「育児時間」「介護時間」の新設
 (育児時間については常勤職員の場合、有給であるのに対して非常勤職員は無給、具体的な時間などが常勤職員と異なっています)、
③「母性健康管理に関する休暇」の取得事由に「妊娠障害」を新設、
④「子の看護休暇」及び「介護休暇」の時間単位での取得の追加
 (常勤職員については時間単位での取得が認められていたものがなぜか非常勤職員では落ちていました)、
⑤「介護休暇」の有給化
 (これも常勤職員は有給であったものが非常勤職員については無給とされていました)
です。

 非常勤職員の処遇自体については基本的に常勤職員と同様でなければならないというスタンスで各種要求を続けてきましたので(上記のようにまだ常勤職員との扱いの差は残っていますが)、基本的には了解するということで以下のように回答を行いました。

 なお、組合員、特に組合役員の減少に伴い、個々の具体的で細かい問題点、特に組合員等からの要望や情報提供がない場合において、それらのすべてについて組合役員が独自に認識、把握、分析し、要求、交渉へと結びつけることが物理的にも困難になっています。今回の問題で言えば、たとえば「子の看護休暇」「介護休暇」の時間単位での取得が非常勤職員はできないままになっていることなどはこちらの問題認識から落ちていました。組合への加入と情報提供、そして役員として職員の処遇を中心に職場の問題の解決に主体的に関与していただける方を待っています。
https://ycu-union.blogspot.com/2010/04/blog-post_284.html target="_blank"

2022年3月15日
公立大学法人 横浜市立大学
理事長 小山内 いづ美 様
横浜市立大学職員労働組合(横浜市従大学支部)
委員長 三井 秀昭

非常勤教職員の休暇制度の見直し提案に対する回答


市民から期待され信頼される大学教育と運営の確立に向け、日頃の取り組みへのご尽力に敬意を表します。

さて、2月24日付非常勤教職員の休暇制度の見直し提案について、以下の通り回答いたします。

  1. 今回提案内容は、常勤教職員と非常勤教職員との間に存在する各種格差のうち休暇制度に関する複数の問題を是正するものであり、これを了承する。

  2. ただし、育児時間について、既に制度化されている常勤職員においては有給とされているにも関わらず非常勤職員については無給とする根拠は明確ではなく、処遇格差解消の観点から今後再検討を行うよう要望する。

  3. また、示された提案が提案書としての体裁をなしていないこと、実質的な交渉を困難とする提案時期となった点については今後対応を改めるよう求める。
以上

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ

2022年3月23日水曜日

法人固有職員の住居手当の見直しについて

 法人固有職員の住居手当に関しては、2014年度の横浜市における制度変更の市大固有職員への反映に始まり https://ycu-union.blogspot.com/2014/11/blog-post.html 、その際、大学当局が法人化時の「市立大学職員の処遇は市職員に準ずる」という労使合意について「知らない」と言い出したことから、法人化時の合意の取り扱いと住居手当の引き上げの2つの問題を並行して扱わざるをえなくなり、2016年8月には2016年度分の取り扱いについてのみ暫定合意しました https://ycu-union.blogspot.com/2016/09/blog-post.html

 その後、市職員の住居手当がさらに引き上げられたため、さらなる交渉が必要となり、決着がつかないまま、継続協議とすることで合意 https://ycu-union.blogspot.com/2016/11/105003.html 、2017年に入ると当局側が法人化時の合意の変更を言い出し(このあたりから住居手当問題は法人独自の給与・評価制度の問題の一部となり、住居手当自体に関する交渉は時間的制約や優先順位の問題で俎上にのぼりにくくなってきます) https://ycu-union.blogspot.com/2017/02/2.html 、給与・評価制度の暫定措置と継続交渉で同意後 https://ycu-union.blogspot.com/2017/03/541.html 、2017年9月には給与体系の見直しで妥結したものの、住居手当問題は進展しないままとなりました https://ycu-union.blogspot.com/2017/09/blog-post_3.html

 2018年2月には、この問題について改めて当局側に質問書を提示 https://ycu-union.blogspot.com/2018/02/blog-post_24.html 、2018年4月からの住居手当引き上げについては合意通り実施することを確認したのち https://ycu-union.blogspot.com/2018/03/blog-post.html 、改めて交渉再開を要求するものの https://ycu-union.blogspot.com/2018/05/blog-post.html 、実際には当局側の都合で交渉は行われず、せめて回答くらいはきちんと出すよう要求 https://ycu-union.blogspot.com/2019/02/blog-post_10.html 、その後も交渉が再開されないため2019年8月に再々度交渉再開を要求したものの https://ycu-union.blogspot.com/2019/08/blog-post_30.html 、その後は「組合の要求には応じられない」と口頭で繰り返すのみで、当局側は交渉自体に応じようとしない状態が続いていました。

 ところが、先月2月24日、当局側からいきなりこれまで組合が要求してきた通りに「法人固有職員の住居手当を4月から市職員と同額まで引き上げる」旨の提案が示されました。それ自体はもちろん歓迎すべきことであるのですが、近年の交渉時自体に応じようとしない姿勢、一転して組合の要求に全面的に応じることになったにしても、交渉が行われていないため組合にとっても突然の知らせであり、しかも提案と言いながら実際には決定事項を伝達するような内容で、実際、4月から実施の制度を2月末に「提案」されても実際には時間的に「交渉」は困難等々の問題があり、下記の通り、提案は受け入れるものの労使交渉の在り方等に関して改善を求める回答を行いました。

 

 なお、今回法人側が拒み続けてきた要求に応じることにした背景には、交渉開始以来すでに7年以上が経ち、年月の経過に伴い固有職員の年齢が上昇して多くの職員は支給対象外になったことがあるようです。これもまた素直に喜べない要因の一つです。とは言うものの、引き上げ対象となる一握りの固有職員の方には「おめでとう」と申し上げて、7年以上に渡った交渉の区切りとしたいと思います。

2022年3月15日
公立大学法人 横浜市立大学
理事長 小山内 いづ美 様
横浜市立大学職員労働組合(横浜市従大学支部)
委員長 三井 秀昭

法人固有職員の住居手当の見直し提案に対する回答


市民から期待され信頼される大学教育と運営の確立に向け、日頃の取り組みへのご尽力に敬意を表します。

さて、2月24日付の法人固有職員の住居手当の見直し提案について、以下の通り回答いたします。

  1. 今回提案内容は、組合が2014年秋以降、一貫して求めてきた「法人固有職員の処遇は市職員のそれに準じる」という法人化時の合意に基づき住居手当の額を市職員と同様とする、という要求と内容的に一致するものであり、長期に渡る組合の取組が結実したものとして、これを了承する。

  2. ただし、7年以上の時間が経過しており、この間に当時支給の対象であったはずの固有職員の多くが既に支給対象から外れてしまっていること、交渉の継続や再開が約束されながら、口頭で「組合の要求には応えられる状況にない」として実際には交渉に応じない期間が長期に渡ったことなどは遺憾である。

  3. また、今回提案が提案と言いながら決定事項を一方的に伝えるような文章になっていること、そもそも提案書の体裁をなしておらず誰が誰に充てたものかも書いていない点なども問題であり、今後は適切に対応されることを望む。

  4. 4月1日から実施したいとするものについて2月末に提案している点も問題がある。学内手続きとの関係で実際に組合が提案を検討する期間は1,2週間しかないうえに、仮に修正等を求める必要があったとしても既にそのための交渉の時間は残されていない。法人化後、しばしば起こった問題であるが、近年は改善の傾向にあったものであり、実質的な交渉を行うための提案時期の設定、交渉期間の確保について留意されたい。
以上

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ

短時間勤務職員の処遇改善について

 具体的には一般職のフルタイム勤務の場合と短時間勤務の場合とで1時間当たりの給与額が異なっており、一方で短時間勤務の一般職の中に残業が恒常化、実際にはフルタイム化しているにも拘らず時間給が異なっているため、同じ時間勤務しても短時間勤務契約の一般職の方が給与額が低くなってしまうという問題になります。嘱託職員、契約職員制度から一般職、有期雇用職員制度への制度変更時には、そもそも短時間契約者が残業を求められること自体が「ない」とされていたため、このような問題が発生することは組合も予期してなかったのですが https://ycu-union.blogspot.com/2017/07/blog-post_18.html 、制度発足直後から実際にはそのような実態が発生しました。

 このため、組合はとして、まず短時間勤務契約でありながら実態としてフルタイム勤務化しており、かつ本人もフルタイム契約への変更を望んでいる組合員の場合にはそのように要求、契約通りの勤務時間とすることを望んでいる場合には残業を行わせないよう要求という方向で望んでいました(これらについては個別組合員に関する交渉となるため組合ニュースには載せていませんが、毎年の組合活動方針おいて時間給格差の問題として取り上げています https://ycu-union.blogspot.com/2019/12/2019-2020.html 等)。しかし、中には組織当たりの定員枠を理由にフルタイム契約への変更を拒まれ、かつ残業の恒常化によるフルタイム状態が続く例も出て、時間給格差の是正を求まましたが、これについては市大の一般職と横浜市の嘱託職員との給与格差の問題と同様、財政事情を理由に交渉自体に応じないという姿勢が続いていました。

 ところが、住居手当の問題と同様にこれも2月24日、短時間勤務の時給をフルタイム勤務の場合と同額に引き上げるという提案が突然示されました。こちらは「同一労働同一賃金」の原則からしてさすがに合理的な説明がつかないことを認めざるを得なかったのだろうとは思いますが、交渉を拒み続けてきた点等について同じく改善を求める回答としました。こちらは何とか問題発生以降3年程度の期間で解決することができました。制度改正の対象となる一般職の皆さんには、とりあえずのおめでとうを申し上げます。

 なお、一般職、有期雇用職員制度については他にも種々の問題が残っています。組合への情報提供、また加入を歓迎します https://ycu-union.blogspot.com/2010/04/blog-post_284.html

2022年3月15日
公立大学法人 横浜市立大学
理事長 小山内 いづ美 様
横浜市立大学職員労働組合(横浜市従大学支部)
委員長 三井 秀昭

短時間勤務職員の処遇改善提案に対する回答


市民から期待され信頼される大学教育と運営の確立に向け、日頃の取り組みへのご尽力に敬意を表します。

さて、2月24日付短時間勤務職員の処遇改善提案について、以下の通り回答いたします。

  1. 今回提案内容は、2018年の旧契約職員・嘱託職員制度から現行制度への変更以降、短時間勤務職員の一部で残業が恒常化し実質的にフルタイム職員化しているにも関わらず時間当たりの給与額が異なっているためフルタイム職員よりも支給額が低くなる問題について、短時間勤務の時間当たり給与をフルタイムと同額に引き上げることで解決を求める組合の要求を満たすものであり、これを了承する。

  2. ただし、制度変更時に短時間勤務職員の処遇は継続交渉とすることを確認したにも関わらず過去3年余り、実質的には交渉に応じなかったこと、提案書としての体裁をなしていないこと、実質的な交渉を困難とする提案時期等については今後対応を改めるよう求める。
以上

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ