2019年10月15日火曜日

一般職への登用について(回答)

前回の組合ニュースで紹介した有期雇用職員の一般職への登用方法に関する当局側提案について、9月17日、以下の通り回答を行いました。

2019年9月17日
公立大学法人 横浜市立大学
理事長 二見 良之 様
横浜市立大学職員労働組合 執行委員長
横浜市従大学支部 支部長 三井 秀昭

一般職への登用について(回答)

8月26日付「一般職への登用について」について、以下のように回答します。

一般職のうち、事務職への登用については以下の条件を満たすことが必要と考えます。

① 今年4月の制度変更時に在職期間等の理由で一般職へ移行できず有期雇用職員とされた昨年度までの嘱託職員、契約職員については、原則、一般職に移行させること。

② 担当単位で一般職のポストについて指定、人事部が管理を行うとのことであるが、業務についてそれが一般職のものか有期雇用職員のものか、適用が恣意的なものとなることが懸念される。個別のケースにおいて疑義が発生した場合は、組合との協議を経ること。

③ 今回提案のスキームは各課の課長の裁量の余地が大きいが、制度変更を巡る交渉時においても指摘したように、人事考課と所属長の推薦という要件は個人的関係に起因する客観性や公平性の問題を生じる可能性が高い。この点について、すくなくとも所属長の推薦は不要とすべきである。

以上

回答の①については、昨年9月26日付の「一般職の処遇に関する要求書」でも要求したように「勤務期間が一般職への移行基準を満たさないとして嘱託職員にとどめ置かれた職員がいる一方で、4月以降に採用された非常勤職員がごく短期間に一般職に移行する事例も発生している模様」であるなど、たまたま制度移行時に勤務期間が条件を満たしていなかった旧嘱託職員(現在の名称は「有期雇用職員」)が不合理な取り扱いを受けることを懸念してのものです。

②に関しては、現実の運用において一般職員、有期雇用職員、派遣社員の業務に明確な区分があるのかは疑わしく、にも関わらず人件費や職員数の調整のために「このポストは一般職ではなく有期雇用職員のもの」などとして一般職への転換を拒まれるケースが起こりうることを念頭に置いたものです。

③については、あくまで定型的、補助的業務であるはずの有期雇用職員の評価に大きな差がつくことは想定しにくく、一般職への登用にあたって上司との個人的人間関係に左右されることが心配され、すくなくとも「推薦」は要件から外すべきとしました。

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一般職の処遇等について(要求)

また、今回の当局側提案に際しては、「『一般職』になったので、今後は『フルタイム』を原則としたい」等、制度の在り方自体に変更が行われることが示唆され、正式に提案があったものではないものの、このまま看過するのは問題であると判断して、上記の回答と同時に組合側からの要求も手渡しました。昨年9月28日付の要求と一部重なる内容もありますが、以下の通りです。

2019年9月17日
公立大学法人 横浜市立大学
理事長 二見 良之 様
横浜市立大学職員労働組合 執行委員長
横浜市従大学支部 支部長 三井 秀昭

一般職の処遇等について(要求)

8月26日付で提案のあった「一般職への登用について」に関し、関連説明において今後の一般職の契約、処遇について懸念せざるを得ない点があったことから、以下について組合と交渉を行うよう要求します。

① 本年4月より実施された制度変更について、提案時の説明では、雇用契約法に対応して終身雇用となるが業務内容に変更はなく、そのため処遇も変わらないということであった。今般、提案に関連して一般職の在り方について、「一般職となったのであるから、今後はフルタイムを原則としたい」との説明があったが、これは多くの旧嘱託職員にとって雇用契約条件の変更に当たるものであり、短時間勤務からフルタイム勤務への変更は、あくまでも個別の職員一人一人との合意に基づく必要がある。また、その際には個別の職員の希望が尊重されなければならない。

② 「一般職となったのであるから」という言説自体が、制度変更提案時の説明に反して「一般職」という名称に引きずられ、処遇はそのままで業務負担や責任のみが重くなりつつあるという現場の実態と無関係ではないと考えられる。なしくずしに一般職の業務負担や責任を拡大するのであれば、制度変更交渉時にも問題となったように、一般職の処遇を最低でも横浜市の嘱託以上に引き上げる必要がある。

なお、法人化以降、繰り返し指摘及び要求しているところですが、組合側の要求に対しては長期間の放置やはなはだしい場合、結局交渉自体に応じないという対応が行われる一方、当局側提案に関しては組合に対し1,2週間での回答を要求するという極めて不均衡な状態が続いてきました。近年、ある程度の改善の傾向が見られたものの、再び以前と同様の状態に戻りつつあるのではないかとの懸念が生じつつあります。このため、本要求に関し10月31日までに交渉を開始するよう求めます。

以上

①は、契約条件の変更に当たるのであるから、当然双方が改めて合意を行う必要があるという雇用契約の大原則について確認するとともに、例えば短時間勤務かフルタイム勤務かに関して本人と当局側の希望が喰い違った場合の取り扱いについて予め釘を刺したものです。

②は、一つには給与等の殊遇は基本的に従前のままであるにも関わらず、業務内容について、なし崩しに責任と負荷が大きくなっていることが懸念されること、また、それにも関わらず横浜市の現嘱託職員との給与格差がきわめて大きい状態が放置されているという点について改めて指摘し、処遇と業務についてどちらかに合わせて均衡させるよう求めたものです。

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一般職への登用・処遇に関する組合回答・要求への当局側回答

上記の組合からの回答及び要求について、10月7日に下記の通り当局側より回答がありました。

令和1年10月7日
一般職への登用について(質問等への回答)
要求(質問等)事項回答
①今年4月の制度変更時に在職期間等の理由で一般職へ移行できず有期雇用職員とされた昨年度までの嘱託職員、契約職員については、原則、一般職に移行させること。 有期雇用職員から一般職への登用については、職員配置計画に基づき、職場の執行体制、人事考課や勤務実績等を総合的に判断して決定していきます。
②担当単位で一般職のポストについて指定、人事部が管理を行うとのことであるが、業務についてそれが一般職のものか有期雇用職員のものか、適用が恣意的なものとなることが懸念される。個別のケースにおいて疑義が発生した場合は、組合との協議を経ること。 個別のケースについてお答えすることはできませんが、必要に応じて協議は継続していきます。
③今回提案のスキームは各課の課長の裁量の余地が大きいが、制度変更を巡る交渉時においても指摘したように、人事考課と所属長の推薦という要件は個人的関係に起因する客観性や公平性の問題を生じる可能性が高い。この点について、すくなくとも所属長の推薦は不要とすべきである。 平成29年度当時に示した「無期労働転換のルール」から変更はなく、所属長の推薦も踏まえ一般職登用の判断をしていきます。
④本年4月より実施された制度変更について、提案時の説明では、雇用契約法に対応して終身雇用となるが業務内容に変更はなく、そのため処遇も変わらないということであった。今般、提案に関連して一般職の在り方について、「一般職となったのであるから、今後はフルタイムを原則としたい」との説明があったが、これは多くの旧嘱託職員にとって雇用契約条件の変更に当たるものであり、短時間勤務からフルタイム勤務への変更は、あくまでも個別の職員一人一人との合意に基づく必要がある。また、その際には個別の職員の希望が尊重されなければならない。 有期雇用職員から一般職への登用については、職員配置計画に基づき、職場の執行体制、人事考課や勤務実績等を総合的に判断して決定していきます。勤務時間については本人の意向を確認しつつ、適切に運用していきます。
⑤「一般職となったのであるから」という言説自体が、制度変更提案時の説明に反して「一般職」という名称に引きずられ、処遇はそのままで業務負担や責任のみが重くなりつつあるという現場の実態と無関係ではないと考えられる。なしくずしに一般職の業務負担や責任を拡大するのであれば、制度変更交渉時にも問題となったように、一般職の処遇を最低でも横浜市の嘱託以上に引き上げる必要がある。 平成29年度に示した雇用形態別の役割を変更する考えはありません。


①については、「制度変更前に嘱託として採用されていた人達が制度変更の狭間で不利益を被らないよう」求める組合要求に対して、あくまでも「各課の人員配置計画が前提で、そこに一般職員の配置が必要であれば」という当局側の回答であり、残念ながらこの点について距離を埋めることはできませんでした。職員配置計画でその課において一般職員の配置が認められない場合、有期雇用職員の方が雇止めになる可能性があることを当局側は明言しました。

②については、一般的な「労使間トラブルがあり、組合から要求があれば交渉に応じる」という一般論としての確認で、それ以上の回答を得ることはできませんでした。このため、この項に関連して組合のサポートを受けられるのは基本的に組合員である方に限られます。

③については、読んでの通りゼロ回答でした。

④ですが、口頭説明も含め「雇用契約はあくまでも双方の合意に基づくもので、一方的変更は出来ない」という労働雇用契約法上の基本原則については当局側も異議の無いところであることは確認できました。問題は、例えば家庭の事情などで短時間勤務の継続を希望しているのに、大学は「職員配置計画に基づき、職場の執行体制(中略)を総合的に判断」してフルタイム勤務の人を望むなど、双方の希望が喰い違う場合の扱いです。この点について回答は「適切に運用していきます」という一般論のみなので、具体的な個別の取り扱いがどうなるかは判りません。この問題についても組合員以外の方への対応を組合が行うことは困難になります。

⑤については、制度変更に関する最初の提案説明時では「一般職の業務内容は嘱託職員と変わらない」という説明でしたが、妥結後の説明会では「定型的業務 (連絡調整等含む)について、上位者の包括的指示の下、実務経験・業務知識に基づき、業務を遂行」となっていました。これがそれまでの「非常勤職員就業規則」による「業務遂行を補助する」という定義との関係で同じかどうかは微妙なところがありますが、現場の管理職レベルで「一般職になったのだからこれまでとは違う」といった言動がなされ、実際に一般職の方から「仕事の量や責任が重くなった」という声が組合に届いている以上、定義上の問題というより制度運用の実態に照らして考えるべき問題と思われます。

このように、組合の回答、要求に対する当局側の回答は満足できるものではなく、今後も交渉を継続することを求めて、その点に関しては当局側も了解しました。とはいうものの、来年度に向けた一般職への登用の手続きに間に合う形で合意ができる可能性は現段階では低く、今年度に関しては当局側がその主張に沿った形で登用手続きを行うことが予想されます。そのような状況においては、個別に問題があっても組合員に関する案件という形以外で組合が関与することは難しくなります。有期雇用職員の方には改めて組合への加入をお願いします。

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