2020年7月27日月曜日

新型コロナウイルス感染症と関連した今後の勤務態勢・職場環境等に関する再要求

前回の7月13日付「組合ニュース公開版」で紹介した通り、「新型コロナウイルス感染症と関連した今後の勤務態勢・職場環境等に関する要求」への当局側回答に組合として受け入れがたい点があり、在宅勤務に関わる経費負担の点に問題を絞って再度、要求書を提出しました。

内容は下記の通りですが、ポイントとしては「在宅勤務は職員が自発的に、言い換えれば命令もないのに希望して行ったという当局側の主張は事実に反すること」こと、及び「業務として行う在宅勤務のために必要な費用を職員に負担させることは労働基準法第89条第5項に違反する」という2点です。

2020年7月15日
公立大学法人 横浜市立大学
理事長 二見 良之 様
横浜市立大学職員労働組合(横浜市従大学支部)
委員長 三井 秀昭

新型コロナウイルス感染症と関連した今後の勤務態勢・職場環境等に関する再要求

市民から期待され信頼される大学教育と運営の確立に向け、日頃の取り組みへのご尽力に敬意を表します。

さて、6月12日付で組合が行った「新型コロナウイルス感染症と関連した今後の勤務態勢・職場環境等に関する再要求」について6月30日に回答を受け取りましたが、特に要求事項3.についての当局側回答内容は組合として承服し難いものであり、再度、検討を行うよう要求します。

  1.  6月30日の回答時、当局側より口頭で「在宅勤務については必ずおこなうよう指示したものではなく、職員が自発的に行ったものであるため組合が要求する経費の補償を行う必要はない」という趣旨の説明が行われた。しかし、4月8日付「新型コロナウイルス関連第20報」では「教職員は原則在宅にてテレワーク等を行うこととします。」、4月16日付「新型コロナウイルス関連第22報」及び「「新型コロナウイルス関連第23報」では、それぞれ「①オフィスでの仕事は、原則として自宅で行えるようにする。」、「出勤者7割削減、接触機会8割削減を目途に取り組むよう」として、いずれも事務局長名で繰り返し指示が行われており、「職員が自発的に行ったのだから経費の補償は不要」という当局側主張は事実に反する。

  2. 回答文において「通知では、『原則テレワークにより業務を遂行することとしていますが、業務の性質等によりテレワークが難しい場合等については出勤可』としています」としているが、「業務の性質等によりテレワークが難しい場合」とは、当局側の当時の説明では「情報セキュリティ上の理由から学外からの情報システムへのアクセスが難しい一部の管理部門など」という事だった。「在宅勤務に伴う出費について法人の方針が示されていないため、在宅勤務は拒否する」などという理由が含まれるとは常識的に考え難く、事実、組合の把握する限り「在宅勤務に伴う費用の負担がどうなるか分からないので、その点を懸念するなら在宅勤務は断っていい」などという説明が行われた部署は存在しない。

  3. 労働基準法第89条第5項は、「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項」について就業規則に定めなければならないとしている。言い換えれば、就業規則に「在宅勤務の場合、それに伴う支出の一切は労働者が負担する」旨の定めがない限り、雇用者が在宅勤務に伴う負担を労働者に負わせることは禁止されている。本学就業規則にはその種の定めはなく、当局側回答は労働基準法第89条第5項に明確に違反するものと言わざるを得ない。

  4. また、口頭説明で「費用全てが法人の負担かどうかは議論の余地がある」としていたが、それ自体は事実であり、光熱水費、通信費のうち在宅勤務に伴う出費を厳密に算出することは困難であるとしても、それが「法人が費用負担を行わなくていい」論理的根拠となるわけではない。厚労省Q&A集で例示され、民間企業で実際に行われているように定額での負担とするなどの方法が考えられる。
以上に基づき、6月30日付回答を撤回し、改めてこれまでに職員が負担した費用への補償を行うと共に、今後の在宅勤務の継続に備え法令に則った就業規則の改訂等を行うよう要求します。

以上

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2020年7月13日月曜日

「新型コロナウイルス感染症と関連した今後の勤務態勢・職場環境等に関する要求」への当局側回答

6月17日付「組合ニュース公開版」でお知らせしたように、緊急事態宣言解除と神奈川県知事の大学への休業要請解除を受けて、「新型コロナウイルス感染症と関連した今後の勤務態勢・職場環境等に関する要求」を提出しましたが、6月30日、当局側より以下の通り、回答がありました

質問及び要求回答
1.教職員・学生の心身健康、生命を守るための適切な措置の実施

国、神奈川県、関連学会等の各種ガイドライン、チェックリストなどを参考に、例えば職員の職場における物理的距離を確保すること、教職員・学生の健康状態を把握することなど教職員・学生のキャンパスにおける心身の健康、生命を守るための適切な措置を講ずること。また、今後第2波、第3波の再流行も懸念されるところであり、今回対応が泥縄となり確保が困難であった消毒液等の物資、機材について、その流通が回復している間に必要量の確保に努めること。
これまでも適宜通知において、執務室等内の消毒、3密の回避、マスク着用の励行や換気の実施を依頼してきたところです。県のガイドラインにおいても、「十分な距離を保てず、近距離での会話や発声が必要な場合は、飛沫を飛ばさないよう、マスクの着用を徹底させること。」とありますので、引き続き、新たな生活様式と併せて、周知していきます。

健康管理や感染予防対策については、学生、教職員のための大学における感染予防の手引きを作成し、周知しています。

心身の不調への対応については、保健管理センター、2病院の健康管理室で相談を受けています。

消毒液等の物資、機材については、執務室消毒用の次亜塩素酸ナトリウムや防護資材は一定量を、手指消毒液は例年の2倍量を確保したところです。
2.教職員の育児、介護等の負担に関する適切な配慮

緊急事態宣言は解除されたものの、幼稚園、小学校、保育園、福祉施設等に関しては、新型コロナウイルス感染拡大前と同じ状態での利用が出来ない施設も多い。家庭において育児、介護の負担のある職員については、個別の事情を考慮した勤務形態、業務配分とすること。
育児、介護の負担がある職員については、休暇の取得や短時間勤務制度の活用を推進するなど、ダイバーシティ推進計画を着実に進めてまいります。
3.在宅勤務に伴う教職員の業務準備、業務実施の費用負担に対する補償

今回の原則在宅勤務への移行は、組合ニュース(公開版)(4月9日)で指摘したように、4月8日に突然「明日から原則在宅勤務」という指示のみが出されて始まった泥縄式のものであり、後に(組合の指摘もあってか)決定した「大学のPCを自宅に持ち帰って業務に使用することも可」という措置を除けば、そのためのPCや周辺機器の購入、通信費、在宅勤務による光熱水費の増等についてすべて各教職員の負担とされたままである。業務命令に基づく業務を遂行するための費用は雇用者側が負担するのは当然であり、この点に関し制度面での改善並びにこれまでの各教職員の私費による負担分について補償を行うよう求める。
通知では、「原則テレワークにより業務を遂行することとしますが、業務の性質等によりテレワークが難しい場合等については出勤可」としています。なお、いただいた課題等については今後の制度設計の際の参考とさせていただきます。
4.有期雇用職員、アルバイト職員等の雇用の維持

今回の緊急事態宣言、またその前段階での「自粛」に伴う経済面での影響は現在進行中の事態でもあり、その全体像を明らかにすることは困難だが、既に一部で解雇などの問題が発生している。緊急事態宣言に基づく業務縮小の間、アルバイト等についても解雇を行わず法定の休業手当の支払いに努めた経営姿勢について評価するとともに、今後も有期雇用職員、アルバイト職員等も含め教職員の雇用を維持するよう求める。
有期雇用職員及びアルバイト職員の雇用については、法令に則り適切に運用してまいります。
5.給与の維持

同様に安易な教職員給与の引き下げ等を行わないよう求める。本学の財政については、例えば2019年7月29日付の「本学の財務・人件費の状況と今後の職員の処遇に関する質問書」とそれへの回答に見られるように、組合が懸念し自制を求めてきたにもかかわらず近年経営方針として支出を増大させる拡大路線を取り続けてきたものであり、それに伴う財政状況の悪化については一般の教職員が責任を負うべきものではない。今般の新型コロナウイルスに関しても、日本の地方財政制度、大学法人の会計制度の仕組み等により、すでに例年並みの資金が確保されており、今回の新型コロナウイルス感染症を理由として安易な教職員給与の引き下げ等を行う環境にはない。
法人職員の給与については、地方独立行政法人法第51条で「退職手当以外の給与及び退職手当の支給の基準は、同一又は類似の職種の国及び地方公共団体の職員の給与を参酌し、かつ、他の特定地方独立行政法人の職員及び民間事業の従事者の給与、当該特定地方独立行政法人の業務の実績及び認可中期計画の第26条第2項第3号の人件費の見積りその他の事情を考慮して定められなければならない。」とされておりますので、給与改定の際にはこれらの要件を考慮するとともに、引き続き組合と協議してまいります。
6.就業規則、規程の適切な改正

在宅勤務、時差出勤については、既に組合より就業規則、規程等の根拠が無いか疑義のある状態であることを指摘し、当局側もその点については対応を約束したものの、未だに改正がなされていない。改めて適切な改正を行うよう求める。
在宅勤務及び時差出勤については、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、時限的かつ緊急的に試行実施しているものです。

今後、本格的に実施する際には、組合及び職場代表者の意見を聞いて必要な改正を行ってまいります。

1.については、基本的に職員の感染等を防ぐための対応としては「マスク」と「部屋の換気」、それに「手洗い、手の消毒」などで、担当や係ごとに机をくっつけた「島」になって数10センチから1メートル程度の至近距離で仕事をするという密集した執務環境については特に対応は行わないという事でした。要求文にある通り、組合としては在宅勤務との組み合わせなどにより出勤する職員を2分の1から3分の1程度として職員間の物理的距離を確保することを求めていました。本学に限らず、多くの大学が実験、実習などで部分的に対面授業の再開を試みていますが、その際には教室の収容人数を2分の1や40%程度に限定して学生間の物理的距離を確保するのが普通で、学生に関してはそのような対応を取りながら、職員については密集した業務スタイルを放置するのでは意味がないのではないかと危惧します。

また、手指消毒液については例年の2倍を確保したとのことですが、例年であれば各校舎の入り口に置かれた手指消毒液を利用する人は少数で、それを基準として2倍ではとても足りないのではないかと懸念されます。現時点では後期の授業形態をどうするか決まっていないようですが、例えば対面授業を拡大するといった決定を下して、その後で必要な消毒液の量を計算、確保しようとしてもその時点で確保できる保証はないでしょう。いつもながらstrategyやlogisticsについては、ちぐはぐな対応が目につきます。

2.については、当局側回答の様なダイバーシティ推進計画の遂行という観点ではなく、非常事態下における必要な対応として要求したものです。当局側もとりあえず対応自体は否定していませんが、問題が発生した場合には速やかに組合までご相談ください。

3.ですが、事務局長指示により原則在宅勤務という方針が取られていたはずですが、回答受け取りの場では「在宅勤務は職員が自発的に行ったものだから経費補償は不要」という予想していなかった斜め上の説明が返ってきました。回答文においても「業務の性質等によりテレワークが難しい場合等については出勤可」とありますが、これについては、原則在宅勤務という指示が出た際には学内情報システム利用の関係で在宅勤務が難しい業務を担当している場合などを想定しているという説明でした。常識的に考えても「在宅勤務をしたくないので出勤したい」などの事態を想定、許容している文章とは読めません。この問題については、到底承服できない回答のため、近く再度要求を行う予定です。

4.及び5.については、現時点というよりは今後のために組合として立場、見解を示し、予め当局側の対応について釘を刺しておきたいという趣旨のものです。特に5.については、これまでも度々指摘してきたように「財政難を謳いつつ推進された拡大方針」により新型コロナ感染症拡大以前から財務状態が悪化しており(例えば「本学の財務状況と職員の処遇に関する質問書への回答 ― 組合の警告通りの赤字転落、そして教職員人件費へのつけ回しの懸念 ―」)、今回の事態による収入減や支出増への対応に潜り込ませる形で、いわばどさくさ紛れにその処理が行われることを強く懸念してのものです。

最後に6.ですが、在宅勤務については現在も事務局長名で「推奨」されている状態であり、新型コロナの感染状況を見ても、在宅勤務が続くという前提で直ちに制度改正を行うべきものです。

また、「時差出勤」については、「ずらし勤務」という名称でなんと2010年から「試行」が続いています。組合はこの間、「何年にも渡って実施するものを『施行』とは言わない」、「休憩時間の確保、残業開始時間の調整などで対応がしっかり行われるのであれば基本的に反対するものではないので、正式に制度改正の提案を行うよう」求め続けてきましたが、なぜか当局側は一向に対応を行おうとせず「試行」状態を続けることに固執し続けています。「試行」のギネス世界記録でも狙っているのでしょうか、わけがわかりません。

回答はこのようなものでしたが、上に書いたように少なくとも3.の在宅勤務に関わる経費の問題については再要求を行います。続報をお待ちください。

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「大学部門の一斉休業日に関する要求書」と当局側回答

 6月30日付で大学部門の「一斉休業日」についての要求を行いました。

これは、昨年11月に金沢八景キャンパス過半数代表者が行った残業実態調査において、調査内容とは本来無関係な特別休暇の取得に関する不満が多数寄せられ、それを機に年末及び夏季の休暇、休業に関して事務局長通知などを見直したところ、問題があるという認識になったため要求を行ったものです。

要求は下記の通りです。


2020年6月30日
公立大学法人 横浜市立大学
理事長 二見 良之 様
横浜市立大学職員労働組合(横浜市従大学支部)
委員長 三井 秀昭

大学部門の一斉休業日に関する要求書

市民から期待され信頼される大学教育と運営の確立に向け、日頃の取り組みへのご尽力に敬意を表します。

さて、2017年度より導入された大学部門における一斉休業日の設定について、夏季は夏季休暇として付与される日数のうちから取得するよう局長通知にて推奨されています。

また、2019年度には年末における一斉休業日が新規に設定され、年次有給休暇または振替休暇を設定日に取得するよう通知がありました。

しかし、そもそも年次有給休暇については、法律上、労働者の請求する時季に与えられるものとされており(労基法第39条第5項)、雇用者による制限は原則として認められません。

特別休暇の取得については、年次有給休暇のような雇用者に対する法令上の制約はありませんが、「推奨」などというあいまいな形で事実上その取得に制限を課すことには問題があると考えます。

以上を踏まえ、次の通り要求します。

  1. 年末における一斉休業日について、法人の指示により年次有給休暇を取得させることは労基法第39条に違反するものであり、撤回するよう要求します。
  2. 夏季休暇の取得が「推奨」される「夏季一斉休業日」とはそもそもいかなる内容、位置づけのものであるか、まずは説明を求めます。
上記2点について、2020年7月10日までに回答及び説明を行うよう求めます。

以上

1. については、他の用務などに追われていたこともあり、うかつにも指示が違法であることを見落としていたものです。

たまにはこちらも、ということで早めの回答期限にしてみたのですが、7月10日、当局側から回答がありました。

1. については、「年次有給休暇の取得については法に則り適切に運用していきます。」というものでした。これにより、今年末については年次有給休暇を強制取得させるという通知が出ることはないはずです。

2. については、「夏季一斉休業日については、平成27年10月1日に説明したとおり、職員が休みやすい環境を作ることを目的に窓口対応及び施設管理等を日曜日や年末年始と同様の扱いとしたものですが、勤務を要しない日としていないことから、出勤しない場合は休暇等の対応となります。」というものでした。

若干、意味が判りにくいですが、要するに「一斉休業日」とは「職員が休みやすいように窓口等対外業務を行わないことにした日」のことで、「休まなければならない」日のことではありません。あくまでも職員の利便性 ― 例えば「窓口などの対外業務が無いのだから休ませてください」と言いやすくする ― のためで、大学側が「『一斉休業』する日にしたから休暇はこの日に取るように」と強制するような日のことではないということです。他の日に取得したいので「一斉休業日」には休まないとしても一切問題はありません。

この点について、そもそも「一斉休業日」という名称が紛らわしいものであり、それが「その日に特別休暇を取得させられる」職員と「その日に特別休暇を取得させる」現場管理職に誤解を生んでいる可能性があり、当局側には注意を促しました。

繰り返しますが、「一斉休業日」は強制的に特別休暇を取得させられる日ではありません。組合の要求と当局側の回答という形で確認がなされましたのでお知らせします。

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