2010年11月11日木曜日

雇い止め嘱託職員の再応募と、嘱託職員・契約職員等の事務系職員への応募について

 嘱託職員・契約職員の雇い止め問題については、ご承知のように、職員組合では昨年度来その撤廃を要求し続けており、今年度の職場諸要求においても、任期制の廃止等と並んでその要求を掲げていますが、回答要求期限の10月22日を過ぎた11月10日現在、内容を整理中とのことで未だ回答は得られていません。

 ただし、職員組合のこれまでの取組や要求とは無関係という体裁を取っていますが、この問題について当局側で一部取扱の変更があったのでお知らせします。

 10月25日、当局より職員組合委員長に対して、5年での雇い止めを迎える嘱託職員に関して、嘱託職員への再応募を認めること、及び嘱託職員、契約職員、アルバイトについて、事務系職員の募集に際して応募要件に関して配慮を行う旨の連絡がありました。

 嘱託職員への再応募については、既に一部国立大学で同様の対応が行われているものでありますが、今回は経営企画室、学務・教務センター、学術情報センター、研究推進センター、保健管理センター、木原生物学研究所等での募集が検討されている模様です。公募は今月末の予定です。

 事務系職員の募集に際して応募要件の配慮を行う件については、(今年度の第2回の募集は既に先週末で締め切りとなっていますが)「4年制大学を卒業した方(平成23年3月までに卒業見込みの方を含む)で、大学卒業後(学士の学位を授与された後)10年未満の方」という事務系職員の応募資格を、本学の嘱託職員、契約職員、アルバイトについては「60 歳未満(年齢基準日:平成23 年4 月1日)」として、学歴及び卒業後の期間は問わないというものです。

 これらについては、最初に書いたように当局側はあくまでも独自の検討の結果としての変更を組合に対して連絡した、という体裁を取っており、職員組合のこれまでの雇い止めに関する問題点や国立大学における動向に関する指摘、制度撤廃の要求とは無関係という姿勢(そこまで組合の指摘や要求を認めるのが嫌なのか、とも思いますが)ですが、職員組合のこの問題に対する昨年度来の運動がなければそもそも雇い止めが問題であるという認識すら持たなかったであろうことは明らかであり、その意味では、職員組合の取組の結果、これまでの問答無用で雇い止めという対応からは幾分なりとも改善を勝ち取ることができたと言えると考えます。

 ただし、職員組合としては、既に今年度の職場諸要求においても雇い止め自体の撤廃を要求しており、今後もこれを目標として引き続き取組を継続していきます。今年度の職場諸要求の回答がありましたら、この問題も含め、その内容を皆様にお知らせします。

 また、今回の取扱の変更については、当局側からの連絡では、対象となる職員に対して各課の課長から周知が行われるとされていましたが、残念ながら、その後、少なくとも一部の職場で関係職員に対する周知が行われなかったことが確認されています。事務系職員の募集の締め切りが数日後に迫っていたことから、念のため組合員に対しては職員組合から連絡を行いましたが、本学の人事制度・運用を巡り問題山積という状況から考えると、臨時の公開版組合ニュースの発行を考えるべきであったかもしれません。もし知らずに今年度の応募の機会を逃してしまった方がいらっしゃいましたら、申し訳ありませんでした。今後は組合としても気をつけるようにします。


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期末手当・勤勉手当について

 11月10日、当局側から12月の期末手当・勤勉手当について説明がありました。

 内容としては、期末手当・勤勉手当の合計について年間4.15か月から4.00カ月とし、12月の期末手当・勤勉手当については2.05カ月分としたい。また、給与表を切り下げ、それに伴う4月~12月分の給与及び6月の期末手当・勤勉手当の引き下げ分について調整数を乗じた額を今回の期末手当の支給額から差し引くというものです。支給日は12月10日です。

 この内容は、職員組合の上部組織である横浜市従等により形成されている横浜市労連と市当局との間で先週妥結した内容と同一、つまり市職員と同じ扱いになります。

 ちなみに今回の期末手当・勤勉手当の内容は、附属病院の医療職等で構成されている横浜医従の要求 - 2.5カ月以上の支給 - に対する大学当局の回答という形で示されたものです。職員組合としては、今のところ大学の給与等は横浜市のそれと完全に連動しており、その横浜市における給与等の条件については上部組織である横浜市従が横浜市労連を通じて要求を行っていること、及び職員組合としては、給与云々以前の問題として、常時組合員や場合によっては非組合員の雇用そのものをめぐる問題を抱え、その対処に追われており、あえて横浜市従とは別個に大学当局に独自要求を行うということはしていません。

 とは言うものの、いつまでも横浜市と完全に同一という状況が続く保証はありませんし、その場合は当然、職員組合独自で要求を行う必要が出てきます。また、横浜市職員と同一という条件が続くとしても、今回の切り下げで年間の支給は4.0カ月となり、これ以上切り下げられれば3カ月台になってしまいます。加えて給与や手当の計算の母体になる給与表自体も切り下げになります。つまり、どう転んでも少しでも自分たちの労働条件、労働環境を守るためには労働組合の交渉力、端的にはできる限り組合員の数を増やすことが重要になってきます。今回の切り下げに不満や不安を覚えた方、ぜひ組合に加入してみてください。


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第55回はたらく女性の中央集会について

 11月20日(土)、21日(日)の両日、「第55回はたらく女性の中央集会」が鶴見会館及び横浜総合高校を会場に開催されます(横浜市も後援しているそうです)。特に21日(日)は、弁護士などによる派遣、パート、非常勤職員等に関する労働法講座や働くことと子育て、セクハラ・パワハラなど女性と労働を巡る様々なテーマに関する分科会が開かれるようです。詳細については、神奈川労連の>HPhttp://www.kanagawa-rouren.jp/topics/49/1.jpg をご覧ください。因みに男性も参加可だそうです。


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公立大学法人横浜市立大学次期中期目標について

 8月30日に横浜市従委員長と職員組合委員長(横浜市従大学支部支部長)の連名で行った次期中期目標等に関する申し入れですが、依然として市からは何の反応もないままです。予定では今月中には中期目標の最終案が決定されるはずであり、春に行った本学理事長宛の意見書と同様、残念ながら無視されて終わりという結末を迎える可能性が高くなってきました。

 そういう状況ではあるのですが、正式な時間切れを迎える前にもう少しだけこの問題について書いておきたいと思います。

 横浜市大の現段階での次期中期目標案(そして恐らくこのまま“案”が取れることになるのでしょう)における「基本的目標」はこのようになっています。

 横浜市立大学は、知識基盤社会の進展の中で、横浜市が有する大学として、発展する国際都市・横浜とともに歩み、市立大学の国際化を進め、グローバルな視野をもって活躍できる人材を育成すること。

 研究成果や知的財産を活用して横浜市を始めとした大都市の抱える課題、横浜市民の生活に密着した課題等に対して積極的に取り組むこと。

 この2つの目標を実現するため、「教育重視・学生中心・地域貢献」という基本方針のもと、横浜市立大学の自主的・自律的な運営と更なる発展を目指して、第1期中期目標期間中に整備した組織・体制の強化と、教育・研究を一層活発に進めるための取組について具体的な中期目標を定める。

 ここで基本的な問題に立ち返ってみると、大学の中期目標や中期計画といったものは一体誰に対して表明されたものなのでしょうか(あるいは約束されたものなのでしょうか)?大学人が真っ先に思い浮かべるのは、「社会に対するもの」という位置づけではないでしょうか。しかし、上記の中期目標案は基本的な目標として「横浜市立大学は ~ すること」という命令形で記述されています。これは一体誰が誰に命令しているのでしょうか?素直に読めば、設立団体の長である横浜市長が大学に対して命令しているということなのでしょう。

 前回ご紹介した国立大学の中期目標の場合、紹介した事例以外でも命令形で基本目標が記述されているものは見当たりませんでした。

 次に公立大学の場合、例えば本学と同様に首長の意向によってトップダウン式の改革が行われた首都大学の中期目標を見ると、最初の「基本的な考え方」という部分が基本的に設置者の観点が色濃く出ている印象で、その末尾は「東京都はこの中期目標を策定し、指示する」という言葉で締めくくられています。ただし、その次にある「基本的な目標」の項は命令形ではなく、国立大学同様に、大学が何をするかという表現になっています。それ以外にも幾つかの公立大学で、首都大学と似た構成で、前文の部分で「設置者が ~ 定める」、「設置者が ~ 策定し、指示する」といった表現になっているものがあります。また、実は一つだけ、本学と同様に「基本的な目標」を「~ すること」という設置者からの命令形で記述されている大学も見つかりました。それ以外の法人化された公立大学の場合、国立大学と同様、基本的な目標は大学が何をするかという表現で書かれています(中期目標全体についても同じです)。

 もう一つ、公立大学法人制度は、国立大学法人法という独立した法律に基づく国立大学法人制度とは異なり、地方独立行政法人制度の一部になっていますが、この地方独立行政法人の事例を見ると、実は中期目標が命令形で記述された事例が沢山出てきます。例えば神奈川県立病院機構の場合、「目標期間」の次に書かれている「県民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する事項」という項を見ると「医療環境の変化や県民の医療ニーズ等を踏まえて、県の政策医療として行う高度・専門医療等、質の高い医療を提供すること」等、その内容は命令形で記述されています。

 このように見ると、一部の公立大学に関しては、中期目標を作成するに当たって国立大学よりも大学以外の地方独立行政法人を参照している、少なくとも国立大学や他の公立大学だけでなく、大学以外の地方独立行政法人の中期目標を参考にしている可能性がありそうです。大学関係者が主導的役割を果たす場合は、他の国公立大学の事例をまず参考にする可能性が高く、一方、設置自治体側が主導する場合は、地方独立行政法人制度の一部という観点から大学以外の地方独立行政法人のあり方を参照する可能性が高いのではないでしょうか。

 では、この中期目標の前文や基本的な目標の記述の仕方の違い、それを命令形で記述することにはどのような問題があるのでしょうか?

 国立大学や多くの公立大学の場合、「○○大学は ~ する」という中期目標を見た一般の人たちは、当然、中期目標は大学が社会に対して何をするかを表明した文書であると受け取るでしょう。また、これに国立大学法人法や地方独立行政法人法の公立大学法人に関する特例規程 -文部科学大臣や設置自治体の長は大学の教育研究の特性に配慮することや中期目標の策定に当たっては大学法人の意見を聴き、当該意見に配慮することを求められている- を併せて考えると国立大学や多くの公立大学の中期目標は図のように捉えることができるかもしれません。


 これに対して、設置自治体の長から大学に対して命令形で記述された中期目標は少し違った印象となります。


ここでは中期目標は、大学以外の独立行政法人と同様に、第一に設置者の大学に対する命令を成文化した設置自治体と大学間での文書という色彩が強くなるでしょう。

 国立大学法人法や地方独立行政法人法の公立大学法人に関する特例規程、法案成立時の国会の付帯決議、大学法人化の趣旨、それに設置形態に関わらず共通する大学としての社会的役割、特性等を踏まえれば、このような中期目標の表現は「大学」の在り様として望ましいのでしょうか。そして、それは単なる表現上の問題なのでしょうか。

 林文子現横浜市長は、ご存知のように市長となる前は企業経営者でした。そして横浜市は前市長の下、企業的経営を標榜していたように記憶しています。そこで横浜市を企業にたとえてみると、横浜市立大学は、単なる子会社というよりは、企業フィランソロピーを目的として設立された企業財団(例:サントリー文化財団、トヨタ財団など)という位置付けがよりふさわしいと思います。さて、もし林市長がこの企業のトップであったとしたら、あるいは財団の活動を見守る一市民であったとしたら、財団の中期目標が社会に対する活動・貢献の目標を示すというよりは、企業本社の財団に対する命令の性格が強い文書として作成、発表されたならどのように思われるのでしょうか?


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