2019年2月8日金曜日

「一般職の処遇に関する要求書」への当局側回答

昨年11月12日付組合ニュース【公開版】で、5月以降、複数の組合要求への当局側対応が止まっており、改めてそれらについて対応を要求したことをお伝えしました。

1月28日、滞っていた諸要求のうち、「一般職の処遇に関する要求書」について、以下の通り、ようやく回答がありました。

要求事項回答
横浜市嘱託職員に比べ4万円以上の較差がある月額給与について、同額に引き上げること。 横浜市嘱託職員と同一の労働条件でないなど、比較は困難であり同額引き上げることは困難です。
一般職のパートタイムとフルタイムでは1時間当たりの給与額で大きな差がつけられており、このためパートタイムの一般職が残業してフルタイムの一般職と同じ時間の労働を行っても残業手当を含めた給与額はフルタイム一般職の給与を大きく下回っている。一部には残業が恒常化し、実際の労働実態がフルタイムの状態となっているケースもある模様である。同様の職種で同様の業務を行っているにもかかわらずこのような格差は不合理であり、パートタイムの一般職の1時間あたりの給与はフルタイムの一般職の給与と同額とすべきである。 給与水準については、業務の実態等を踏まえ決定するものと考えており、ご指摘の内容につきましても検討してまいりたい。
制度変更提案時の説明では、一般職の業務内容は当時の嘱託職員と同様とのことであったが、実際には総合職の業務を一部負担している事例も発生している。一般職の年間給与総額を嘱託職員時代と同額に抑える根拠として当局側が挙げたのが業務内容は変わらないという点であり、業務内容が変更されるのであれば、当然、それに見合った処遇の変更が行われるか、あるいは一般職としての業務以外を課すべきではない。 一般職と総合職の業務分担については、制度導入時に周知をしたところです。引き続き、制度の周知を図ってまいりたい。
一般職の位置付けが妥結後に曖昧になったこともあり、業務の割り当て、MBOの設定、評価について混乱が生じ、一般職の評価、処遇に対する不信を招いている。また、「職員人事考課実施要領」を見る限り、一般職に対しても総合職と同様の評価基準を適用するもののように思われるが、これも業務の違いを無視したものであり改善を求める。 人事考課について、制度の周知をしたところですが、引き続き周知を図ってまいりたい。
フルタイムを希望したにもかかわらずパートタイムとされた例がある一方で、多くの嘱託職員がフルタイムとして移行した部署もある模様であり、これらの部署間の取り扱いの較差について説明を求めるとともに、少なくとも残業が常態化し、実際にはフルタイムの勤務状態になっている一般職については、本人が希望する場合フルタイムに変更することを求める。 勤務時間の変更については、本人の希望ではなく職場の執行状況を踏まえ決定するものとしており、所属により変更される職員が異なる可能性はあります。引き続き、職場実態を踏まえ適正な人員配置をしてまいります。
4月時点で勤務期間が一般職への移行基準を満たさないとして嘱託職員にとどめ置かれた職員がいる一方で、4月以降に採用された非常勤職員がごく短期間に一般職に移行する事例も発生している模様である。制度運用の公平性が疑われるものであり、説明を求める。 有期雇用職員から一般職への転換については、職場の執行体制、人事考課や勤務実績を総合的に判断して決定しております。
異動を希望する一般職については、総合職と同様に対応する事を求める。 一般職については、原則として異動はありませんが、同一の業務に従事する所属がある場合などは異動の可能性があります。

読んでの通り積極的な回答はほぼなく、例外は最後の異動について可能性を認めた部分くらいです。それ以外については、回答の際の口頭のやりとりで問題の存在を一部認めるような発言もありましたが、基本的に回答の範囲を出るものではありませんでした。このように処遇改善に消極的な理由として、当局側は「雇用の保障に重きを置いて制度改革を行った」、つまり雇用契約法改正による終身雇用転換権への対応を行って任期制を廃止したのでそれで我慢して欲しい、財政が苦しいという趣旨の説明を繰り返しました。
組合としてはそれで納得できるわけではないので、この回答に対応じてさらに要求を行っていきます。

繰り返しになりますが、労働組合の交渉力の源泉の一つは組合員の数です。「法人財政が苦しい」として一般教職員の人件費抑制・削減への動きを強める一方で、経営の拡大政策に転じているのですから、本学は何もしなくても処遇が改善されるという環境にはありません。このような回答の状態が続いて構わないとは思わない方は組合に加入するようお願いします。

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「住居手当問題に関する要求書」への回答について

こちらについては要求以降8か月以上が経過、「秋の横浜市人事委員会勧告が出たら交渉再開」で合意していたはずであるのに今回も回答がありませんでした。「一般職の処遇に関する要求書」への当局側回答の際にこの点について質したところ、「財政が苦しく、市人事委員会勧告に応じた本俸部分などについては頑張っているが、手当まではなかなか手が廻らない。積極的な回答が出来ないので回答を見送っていた」という説明でした。「理由や回答の内容がどうかの問題ではなく、要求にはまず回答すること」と求めています。

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政府主導型大学再編の始まりと”戦略の醍醐味”(4)「グランドデザイン答申」

 このシリーズ、最初に書いたのがなんと約1年半前、最後の(3.5)を書いたのが昨年2月と完全に途中放棄のパターンだったのですが、そもそも(1)を書いたきっかけが今回の「グランドデザイン答申」のための諮問だったということもあり、答申が出たのを機にもう少し続けてみようと思います。

さて、今回の答申は「概ね 2040年頃の社会を見据えて,目指すべき高等教育の在り方やそれを実現するための制度改正の方向性などの高等教育の将来構想」(大臣諮問)という超長期に渡る政策的射程を持ち、中教審答申として初めて「グランドデザイン」をその名称に冠した存在です。本来であれば、文字通り2040年ごろまでの高等教育の全ての起点、出発点と受け取るべきものでしょう。

しかし、筆者はいくつかの理由から今回の答申をそのような存在として扱うことに疑問を覚えます。根拠、具体的な分析については、3月3日に神戸大学で開催される大学評価学会第16回全国大会において「『グランドデザイン答申』策定過程と構造的特徴」というタイトルで発表を予定しているので割愛しますが、大まかには、

①今回答申の策定過程においても、官邸に設置される各種有識者会議とそれに基づく閣議決定等がしばしば影響や制約を及ぼし、文科省、中教審の検討、決定に優越するものであることが示された、

②しかもこれらの官邸の有識者会議は、高等教育政策を扱うものにおいても高等教育論の研究者はおろか大学関係者も少数しか加わっておらず、高等教育政策に専門的な知見を持っているとは思えない人々がごく短期間、非公開の検討で次々と決定を行っている、

③一方、高等教育論の専門家たちは、今回の審議では大学分科会の下部の将来構想部会、そのまた下部のワーキングに集められ、部会からバラバラに降りてくる各論の個別検討以外には基本的に関与できず、答申には高等教育に関する専門的知見は十分に反映されていない、などが挙げられます。

これらの結果、答申は2040年ごろまでの高等教育の全ての起点、出発点というよりは官邸の政策の従属変数としての側面を色濃く持ち、非常に不安定な性格を内包していると考えます(例えば答申では「必要な人材像」としてジェネリックスキルに加え「数理・データサイエンス」を挙げていますが、検討が2年早ければおそらく「数理・データサイエンス」ではなく「地方創生」が、さらに2年早ければ「グローバル化」が挙げられていたのではないでしょうか)。今後の官邸の「有識者会議」の決定次第で高等教育政策の方向性は簡単に変わってしまう可能性があります。変わらないものがあるとすれば、底流を流れる「産業経済政策の下部政策としての高等教育政策」という位置づけくらいでしょうか。

では、そのような答申を大学のとるべき戦略という面から考えるとどうなるのか、という点については、現在、長い文章を書くことが困難なこともあり次回以降で続けてみようと思います。

(菊池 芳明)

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