7月6日付組合ニュース【公開版】では、当局側提案はそもそも法人化時の合意の修正になるのだから、まず合意の修正を行いたいという提案を行え、という趣旨の回答を行ったことを報じましたが、その後、当局側からは法人化時の合意そのものの存在や効力を疑問視する反応が返ってきたため、組合としては、(1)法人化時の合意の存在を再確認させることを最優先とし、さらに、当局側が市と同様の改訂が出来ない理由として法人財政の悪化を挙げていることから、(2)法人財政の状況は年度ごとに異なるはずであり、複数年度に渡る措置を現時点で確定的なものとする根拠はないので、来年度以降の措置についても個別に組合との交渉を求める、という2点を重視して交渉を行ってきました。
その結果、8月31日に当局側から最終的に以下のような回答がありました。
【組合要求1】これまでも繰り返し指摘してきたように、法人化時において市労連と市当局間で「法人固有職員の処遇は市職員に準じる」という合意が行われており、これを変更しようとするのであれば、まず合意の変更について提案、協議を行い両者間での合意形成を図るべきである。「法人化後10年が経過しており、合意は既に無効である」といった当局側の主張は、合意自体に期限が設定されていない以上、正当なものではなく、固有職員の処遇に関しては、法人化時の合意を出発点として、同一職場、同一業務を行う職員間に異なる処遇を適用すべきでないという原則に基づき、労使間の合意によって決定するよう求める。
【当局回答1】固有職員の勤務条件については、「法人発足時においては、基本的に横浜市の勤務条件に準じる」という合意が法人化時において市当局と市労連との間であったと聞いています。
固有職員と市派遣職員の勤務条件については、できる限り同じことが望ましいと考えていますが、昨今の厳しい財務状況や固有職員の住居手当の受給実態を踏まえ、今回はやむを得ず行った提案であるということをご理解ください。
また、提案内容については、職員労働組合と市大法人当局との間で、誠実に話し合ってまいりたい。
【組合要求2】今回提案に関して、職員労働組合及び病院労働組合の双方に対して同時に提案を行いながら、職員組合との合意を待つことなく病院労働組合との合意を先行させたことは、これまでの労使間の慣行に反するものであり、今後はそのようなことは行わないよう求める。
【当局回答2】今回の提案について、職員労働組合とは交渉継続中であると認識しており、それを踏まえて誠実に対応しています。
【組合要求3】今回の当局側提案に関しては、28年度に限ってはやむを得ない側面もあるものと認めるが、29年度以降の取り扱いについては、改めて組合と協議、合意の上で決定すること、および今回の措置はあくまでも住居手当のみに関するものであり、その他の手当及び本給には及ばないものであることを確認するよう求める。
【当局回答3】固有職員と市派遣職員の勤務条件については、できる限り同じことが望ましいと考えていますが、昨今の厳しい財務状況や固有職員の住居手当の受給実態を踏まえ、今回はやむを得ず行った提案であるということをご理解ください。
(人事課長コメント)
なお、固有職員の住居手当については、来年度に向けて、適切な時期に労使での話し合いを再開したいと考えています。
職員組合としては、あくまでも法人化時の合意に基づき固有職員の処遇を行うべきであるという立場に変わりはないものの、既に年度の半ばに達し、今年度に関してこれから当局側の提案を変更させることは難しいこと、最大の懸案であった「固有職員の処遇は市職員に準じる」という法人化時の合意について当局側に再確認させることができたこと、来年度以降の取り扱いについて組合と協議することを約束させ、さらに交渉の場で口頭ではあるものの、「適切な時期での再開」について、11月頃を目途とすることを確認できたことなどから、今年度に関しては当局側提案に基づく10月1日以降の20代、30代固有職員の500円の引き上げと40代以上の3600円の引き下げをやむを得ないものとして認めることとしました。
これにより、一昨年度より2年近く続いてきたこの問題に関する交渉は、今年度の取り扱いに関しては決着したことになります。
組合の主張が全面的に通ったわけではありませんが、当局側の、当初の固有職員については住居手当の引き上げ無し、さらには「法人化時の合意」の否定という状況から出発したこと、職員組合が少数組合であり交渉力には限度があることを考えると充分な成果が得られたものと言えます。
特に「法人化時の合意」を再確認できた点は大きな意義があります。合意自体あるいは合意の効力が否定され、これを組合が受け入れてしまった場合、当局側回答にもあるように「固有職員と市派遣職員の勤務条件については、できる限り同じことが望ましい」という一般論レベルの歯止めしか存在しなくなり、「法人財政」を理由とすれば(一般論では「財政悪化により」というロジックへの抵抗は難しくなります)すべての手当、本給についてどのような措置も俎上に載せることができることになってしまいます。
これは、この間の交渉で組合が最後まで諦めなかったこと、法人化時の合意の当事者である横浜市従本部から適宜必要な支援があったことなどによるものですが、同時にある外的要因の影響も大きかったのではないかと思われます。
7月27日付の組合ニュース【公開版】の「大学職員基礎講座」(特別編)「36協定と労働基準法」の記事に書いたように、6月に金沢八景キャンパスに労基署の調査が入り、相当厳しい指導があった模様で、その「指導」の中には組合との関係に関するものも含まれていたようです。交渉の最終局面にそのような労基署の指導が重なったことが土壇場での当局側のスタンスに影響を及ぼした可能性は高いでしょう。
「法人化時の合意」を再確認することができたので、今後、市職員と異なる処遇の固有職員への適用に関しては、全て組合との交渉事項となるはずです。しかしながら、今回の様な都合のいいタイミングで労基署の調査が入るといった幸運な偶然は期待できるものではなく、基本的には組合の交渉力により結果は大きく左右されることになります。
ですが、書いたように職員組合は少数組合であり、その点での交渉力は極めて限られています。法人化以降、市職員と同等の処遇の維持、常勤職員の任期制の廃止、無数の個別労働問題への対応等、組合の規模を考えれば十分過ぎる成果を挙げてきたと自負していますが、それもそろそろ限界に達しようとしています。
労働組合が交渉等によって勝ち得た成果は自動的に非組合員も含めた全従業員に適用されます。それ自体は組合が不平を並べ立てることではありませんが、そのような、いわば「フリーライダー」の存在が多くなればなるほど労働組合の交渉力は低下し、結局「フリーライダー」でいることによる利益も消滅することになります。
来年度から始まる第3期中期計画においては、大規模な組織の新設や改編が予定されており、それらにより法人財政がさらに悪化する可能性は相当高いと思われます。20代、30代の固有事務職員の月々数千円の手当の引き上げが出来ないほどにまで法人財政が悪化している、という主張とまるで整合性のない話ですが、そういった支離滅裂なロジックを覆すことができるかどうかも、偏に交渉力の程度にかかっています。
ということで、組合への加入を呼び掛けてこの稿を終わります。詳しくは以下をご覧ください。
横浜市立大学職員労働組合 加入案内
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