2011年4月20日水曜日

医学部長解任問題

 先週4月16日の新聞各紙に、本学の医学部長が郵便で解任を通知され、それに対して医学部長は横浜地裁に地位保全の仮処分を申し立てた、という記事が掲載されました。

【神奈川新聞】 任期半ばの学部長解任は不当、横浜市大医学部長が地位保全求める/横浜地裁

【毎日新聞】 横浜市大:解任通知受け医学部長、地位保全申し立て

【読売新聞】 学部長解任「理由ない」

 各紙の記事を照らし合わせても情報量は僅かで、かつ大学側は取材に対して事実上回答を拒否しているため、詳細も事実関係の如何もろくに分かりませんが、職員組合がかねてから懸念、指摘していた問題と関連してくる可能性もあり、疑問点等について記しておきたいと思います。

 まず、2学部しかない学部の一方の長が、それも郵送による通知で解任を宣告され、それに対して仮処分を申し立てるという、どう考えても異常な事態であるのに、これまでのところ学内には一切何の情報もありません。人事の発効日である5月1日以降も何の説明も無いとしたら、いくら本学のいわゆる部局長人事が上からの一方的な任命によるものだとしても、いささか問題だと思われます。

 次に、報道によれば、学部長側は次期理事長の擁立を画策したと疑われたのが原因ではないか、という趣旨の説明をしていますが、本学の場合、地方独法の公立大学法人に関する規定の理事長と学長を別にする場合の手続きにより、理事長は市長によって一方的に任命される存在です。大学にも市にも「理事長選考委員会」だの「理事長候補推薦委員会」だのといった類の組織は存在していないはずです。総ては市長の一存で決定されるものであり、論理的には、次期理事長を擁立しようとするなら、最終的には市長自身に働きかけるしかありません。そんなことが起こった、あるいは起ころうとしていたのでしょうか。

 3番目に、職員組合としては関心を持たざるを得ないのですが、学部長に郵送された解任通知書には、解任の理由として「理事長に対する背信行為及び法人に対する信用失墜行為」が挙げられていたと各紙の報道には書かれています。

 本学における教職員に対する各種処分の際の事実上のガイドラインとして機能していると思われるものとして「懲戒処分の標準例」という文書が存在していますが、この文書は、横浜市の同種の文書に幾つかの項目を大学独自に付け加えて、一昨年平成21年の年末に職員組合に対して提示されたものです。職員組合では、特にこの大学独自に加えられた項目のうち、まさに今回理由として使われたという「信用失墜行為」について、その意味するところが曖昧で恣意的な運用が可能であること、「信用失墜行為」に対する処分が懲戒解雇から戒告までと、いわば総ての処分があり得るとされていて基準も明確でなく、教職員は「信用失墜行為」という曖昧な言葉で懲戒解雇のリスクにさらされ、組織内の正当な言論の自由までが脅かされる危険性があることを懸念し、平成21年12月22日付で理事長に対して質問書を提出しました。

YCU Staff Union:「懲戒処分の標準例に関する質問書」(2009/12/24)

 これに対して、平成22年5月7日にようやく回答が寄せられましたが、その内容は、まず「信用失墜行為」とは何を指し誰が判断するのかという問いに対しては、「倫理規程に反しなくても、信用失墜させた場合は懲戒処分となり、理事長からの付議に基づき、懲戒審査委員会で処分の要否や内容の審査を行った上で、最終的には理事長が発令する」、また、具体的にどのような行為がどの処分に当たるのか、基準は何かという問いに対しては、「信用失墜に至る具体的事案の個々に対する基準はない。個別の処分内容については、基本事項の各項目に照らし判断することになる」という、要約すれば経営側が総て判断するとしか言っていない回答でした。

YCU Staff Union:「懲戒処分の標準例に関する質問書」に対する回答(2010/5/12)

 今回の学部長解任劇が、職員組合が1年以上前に危惧した事態の始まりなのか、懸念を抱きつつ、今後の情報を待ちたいと思います。


【追記】
横浜市大医学部長解任、「全く身に覚えなし」
地位保全を求め仮処分を申立、弁護士が事の経緯を語る
2011年4月18日 橋本佳子(m3.com編集長)


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2011年4月21日 橋本佳子(m3.com編集長)


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2011年4月28日 橋本佳子(m3.com編集長)


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