2011年4月15日金曜日

被災学生への支援と公立大学

 今回の震災では、直接の被害を受けた東北、茨城の各県の公立大学に止まらず、それ以外の公立大学においても被災地出身の在学生、新入生に対する支援が課題となっています。

 この問題では、既に多くの国立大学、本学も含めた公立大学、私立大学で授業料や入学金の免除、大学によってはさらに支援金の給付などの支援が行われることが報道されています。

 ただ、これらの措置のうち、学費の減免措置に関して少し気になる点もあります。

 設置形態の如何に関わらず、学費の減免には裏づけとなる財源が必要となります。国立大学・私立大学の場合、内部資金や独自基金などとは別に、文科省による学費減免のための支援があり、今年度予算については、国立大学・私立大学あわせて昨年度から約38億円の増額、合計約274億円の支援が行われることになっています(4月12日の新聞各紙の報道によれば、今回の震災を受け、更に約6千人分の授業料減免と約5千人分の無利子奨学金貸与用として約80億円が補正予算で追加されるとのことです)。これに対して、公立大学には国からの支援はなく、自己資金と設置自治体からの援助で手当を行う必要があります(なぜ公立大学だけが文科省の補助の対象外なのかという問題は、公立大学のあり方や存立基盤を考える上では非常に重要ですが、とりあえず今回は措きます)。

 公立大学の場合、大阪市大、首都大などを除けば殆どの大学が中小規模で、大学自身の財政上の余裕は元々余りありません。また、設置自治体からの交付金は、自治体財政が悪化する中、①そもそも教育という事業は費用対効果がわかりにくい、②さらに教育分野の中で見ても、高等教育は初等中等教育とは異なり、制度上、自治体にとっての義務的な事業ではない(たとえあえて自ら設置した大学であっても)等、自治体が行う他の業務との間での予算配分上の競争という点からは必ずしも十分な額は望めない、まして学費免除のための上積みなどは…というのが大方の状況でしょう。被災地である岩手、宮城、福島などの公立大学は別として、被災地以外の公立大学においては、被災地出身学生への学費免除措置は、その対象学生がある程度の数になった場合、経営的に余裕のない私学同様に「ない袖は…」ということになりかねません。

 その一方で、財政的な負担をあまり伴わずに出来る被災学生への支援措置という点で、山口県立大学及び公立大学協会が注目すべき対応を打ち出しています。一部の国立大学、私立大学でも同様の措置が発表されていますが、山口県立大学が、他大学の被災学生に対して、試験料、入学料、履修料を免除の上、科目等履修生として受け入れ、学生の在籍大学において取得単位として認められるよう働きかけるという対応を3月28日に表明しました。さらに、公立大学協会が山口県立大学の対応を受けて加盟校に対して同様の措置を取るよう呼びかけ、30大学がこれに賛同した模様です。また、公立大学協会は国大協、私大連に対しても連動を呼びかけたとのことです。

http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20110329-OYS1T00206.htm
http://www.nikkan.co.jp/news/nkx0720110401ecac.html
(菊池芳明)

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