2017年2月23日木曜日

住居手当ほか固有常勤職員に関する給与体系変更提案:第3報 当局側提案の裏付けとなるデータの提示とその問題点

2月17日夜、この問題での第3回の交渉を行いました。

内容としては、2回に分けて行われた当局側提案の根拠、裏付けとなる各種データの提示等で、1月20日の提案からちょうど4週間が経過しています。

当局側の説明内容は、以下の通りです。

  1. 勤勉手当のA評価の成績率(支給額の上乗せ率)・分布率(A評価者の割合)の拡充について、その原資は「上位昇給の廃止による680万円」+「市での住居手当の上乗せに追随しないことによる原資+勤勉手当の算出基礎からの扶養手当の除外による計1820万円」で総額2500万円、 それに対して勤勉手当のA評価の分布率・成績率の拡充により必要となる年間の総額が2410万円で、差し引き90万円の残。
  2. 平成29年度から平成34年度までの次期中期計画の収支計画の概要について。第3期における業務費は、第1期、第2期に引き続き上昇、第2期の約3388億に対して約4152億に。業務費に占める職員人件費は、第1期の33.6%、第2期の33.0%から34.9%に上昇の見通し。収支計画としては、6年間で約9億3千万の赤字でこれを目的積立金の取り崩しで穴埋めする計画。
  3. 制度見直しにより、モデルケースで見直し前と賃金差はどうなるかについては、単純な比較は困難、業績による評価の差がある等の理由によりモデルケースの提示は困難。
  4. 来年度検討する人事考課制度についての考え方としては、より職員のモチベーションを上げる仕組み、大学・病院に適した制度に見直す。
  5. 固有常勤事務職員のうちの1級在職者の数は、29年1月1日時点で63人、看護・医療技術職も含めた固有常勤職員全体では849人。

各項目に対する組合の見解等は以下の通りです。

  1. 見直しによって引かれる額と勤勉手当A評価者に回される額を比較すると、固有常勤事務職員全体として引かれる予定額の方が90万円多いことが判りました。ただし、この程度の差額は簡単にプラスマイナスゼロに調整できます。今後、譲歩の体裁を整えるために使える、いわば“見せ餌”として置いてあるものかもしれません。いずれにせよ、前回の組合ニュースで指摘したように今回の提案の最大のポイントは法人化時の「大学固有職員の処遇は横浜市職員に準じる」という合意を変更することにあると考えられ、そのためには今回はむしろ変更自体の度合いは小さくした方が交渉戦術上望ましいでしょうから、プラスマイナスゼロでも少額のマイナス(固有常勤事務職員全体にとって)でも大きな差は無いと言えるでしょう。また、前回も書いたように、市に準じた住居手当の引き上げの原資があるのであれば、当然ながら、それはまず住居手当に回すべきです。
  2. 相変わらず法人の規模の拡大を続けるようです。大学としての教育研究活動にせよ、大学付属病院としての医療活動にせよ、本質的に“儲かる”ものではなく、一定上の質を維持しつつ規模を拡大すればするほど赤字が拡大する可能性は大きくなります。規模の拡大を続けつつそれを避けようとすれば、方法としては「国内のマンモス私学のようにST比(学生・教員比)を現在の教員1人当たり10人程度から30人以上に増やす」か「アメリカの大学のように年間授業料を100万円単位にする」、あるいは両者を組み合わせる位しかありません。また、職員人件費については、圧倒的多数である看護・医療技術職員と合算しての数字では、固有常勤事務職員を巡る状況は把握できず、固有常勤事務職員のみの数字を示すよう求めましたが、「算出困難」という回答で(本当に?)、やむを得ず保健管理センターの医療技術職等も含めた「大学部門」の数字を示すよう求め、こちらについては了解を得て次回に提示されることになりました。
  3. モデルケース、モデル賃金の算出は困難という主張に対しては、それを計算しないで人件費が増だの、どう変えたらいいのか等の話ができるわけが無く、最終的に固有常勤職員の平均年齢の職員で「現在の制度では上位昇給に当たり、当局側提案の新制度では勤勉手当がA評価になる場合の差額」「現在の制度では上位昇給に当たり、当局側提案の新制度では勤勉手当がB評価の場合の差額」さらに「横浜市と同様の昇給の運用を行った場合と当局側提案内容での運用を行った場合の差額」という3通りでの数値を次回提示させることになりました。
  4. これについては予想通りあまり実のあるものは出てきませんでしたが、素直に読めば「今回の給与制度の変更に合わせて人事考課制度を設計する」、言い換えると1月20日の説明通り「大学・病院に適した」が「(職員人件費に関する)財政的制約を前提とした」、「より職員のモチベーションを上げる仕組」が「職員全員ではなく、勤勉手当評価の高い職員への抑制する人件費の優先的配分を行う」という事になるでしょう。
  5. 「1級在職者」というのは組合ニュースで取り上げるのは初めてかと思いますが、要するに年齢・在職年数が低く、月例給の上位昇給の対象外にされている職員のことです。前回の交渉で、月例給の引き上げより勤勉手当の引き上げの方がインセンティブになるという主張の根拠として、職員のプロジェクトチームの検討で上位昇給に重きを置く在り方に対して「報われていない」と不満が出たから、という主張をしていましたが、今回の数字で明らかになったのは「そもそも上位昇給の対象外とされる1級在職者が多数いるのだから上位昇給では報われないというのは現時点では当然で(昨年度、一昨年度の時点ではさらに多いはず)、そして数年待てばそれらの職員は上位昇給の対象になる」ということです(固有常勤事務職員の平均年齢は20代かせいぜい30代初めの筈ですので)。この点を指摘すると、当局側は「だからこそ、このままでは財政負担が大変で変える必要がある」という予想外の主張を返してきました。月例給の上位昇給の対象外の職員が多数いる現状で「上位昇給では報われない」という不満を制度を変える根拠として持ち出しながら、「実は皆が上位昇給の対象になっては人件費上困る」と言っているわけで、これではその「プロジェクトチーム」の検討は本来の意図とは逆の方向につまみ食いされたことになります。また、この当局側発言自体が制度変更の目的が固有職員の人件費抑制にあることを明確に裏付けています。

さて、当局側が提示してきた各種データは以上のようなもので、既述のように幾つかのものに関しては修正、ないし追加して改めてデータの提示を行うよう求め了解を得ました。また、更にこれも前回の組合ニュースで指摘したように4月から始まる次期中期計画での市よりの運営交付金は大幅に増額されており、それはなぜなのか、具体的にどのような費目が増額されているのかについてもデータの提示を求め了解させました。

それ以外では、組合が繰り返し指摘している「本当に財政難だというのであれば次期中期の拡大路線は何か?そんなに財政状態が悪いのであれば、そもそも拡大路線を取るべきではないのでは」という指摘に関して、当局側のロジックが次第に明らかになってきました。

この問題についての当局側のやり方ですが、財政状態に関する認識がまず全体の前提としてあるのではなく、それと新たな組織の設置等の拡大路線については切り離したうえで組織の新増設等をまず決定、その後、財政上の辻褄合わせを行うという方法、発想がとられているのではないかという印象が回を重ねるごとに強くなってきました。

(1)組合が「財政難」、言い換えれば「金が無い」という当局側主張に沿って「金が無いのであれば、金がさらに出ていくような組織の新増設等の拡大路線は合理的でない」という、全体を資金の観点で考えるのに対して、(2)当局側は、自身が考える「社会的ニーズに対応した取り組み」については、法人財務の状況を念頭に置いてその範囲内で計画するのではなくコスト面は棚上げして「社会的ニーズに対応した取り組み」という独立項目でまず計画、決定、その後、他の項目の費用を削ることにより全体としての財政上の辻褄を合わせればいいと考えているようなので、その意味では話がかみ合うわけがありません。

(1)の組合の観点に立てば、仮に「社会的ニーズ」が本当にあるとしても、財政が脆弱、将来の見通しも楽観できないのであれば、その経費は全体の資源配分の大まかな方向性の枠内、スクラップ・アンド・ビルド、あるいは吸収可能な経費微増という範囲内で検討することになるでしょうし、あるいは私学ではなく公立大学だという前提を考慮しても、「社会的ニーズ」に対応した増分は設置者が交付金増で支え続けるという合意が強固に存在していることが前提だと考えます。「いくらかかるか分からないが、まず、これをやる」「ついで、他の部分を削って何とかする」という手法は最終的に「何とかなる」保証などありませんし、中長期的な観点からはなおのことです。実際、本学の法人化以降の歩みは、拡大路線が経済的にはペイするどころか一層の財政上の窮地を招くことを示しています。まして、労働組合の立場からは、後出しで「何とか辻褄を合わせる」ための削減項目として職員人件費を俎上に挙げることは容認できません。職員の質が大学経営上非常に重大な要素だという認識が国内大学においてもようやく定着しつつあり、全員任期制という無理のある制度もようやく撤廃したというのに、これでは本学は「公立大学の弱点は事務局」という俗論を裏打ちする方向へと一直線という事にもなりかねません。

また、当局側の主張する「社会的ニーズ」が、「流行」や「文科省推奨」以上の、自前のきちんとした検討を経たものなのかも心もとないところです(ここ数十年の「流行」や「文科省推奨」の少なからざる部分が、今となっては「やらなければよかった」になっていることを考えればなおのこと)。

それに、繰り返しますが、大学だの大学付属病院だのというものは本質的に“儲かる”ものではありません。特区制度で株式会社立大学の設置が認められるようになったのが2003年度、本質的に“儲かる”のであれば、溢れかえる内部留保の投資先に悩む国内大企業が先を争って参入してきてもおかしくないはずです。ですが、実際には株式会社立大学は減少を続け消滅寸前です。

さて、1月20日に第1の提案があり、3回目でようやく当局側の提案とその根拠の全容が伺えるようになってきました。しかし、組合側が完全に当局側の提案とその根拠となる情報を受け取るまでに要した時間は既に1か月以上、しかも根拠となる各種データはまだ不足しており第4回が既に予定されています。当局側が指定してきた回答期限は3月10日で最早2週間しかありません。次回で当局側提案とその根拠の全体がようやく全て明らかになるとしても、それを受けての組合の検討と交渉のための期間は1週間から10日程度、やはりこれを真っ当な交渉と呼ぶことは無理があり過ぎると言えるでしょう

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