2017年1月23日月曜日

住居手当ほか固有常勤職員に関する給与体系変更提案 -法人化時労使合意に基づく市職員に準じる処遇の事実上の終了の危機-

一昨年から昨年にかけて、横浜市における若手職員住居手当引き上げに対応した大学固有職員の住居手当の取り扱いに関する交渉の経緯をお伝えしました。

http://ycu-union.blogspot.jp/2015/04/blog-post.html
http://ycu-union.blogspot.jp/2016/04/blog-post.html
http://ycu-union.blogspot.jp/2016/06/blog-post.html
http://ycu-union.blogspot.jp/2016/07/blog-post_94.html
http://ycu-union.blogspot.jp/2016/09/blog-post.html

こちらについては、2年近くにわたる交渉の結果、①法人の財務状況が厳しいこと、及び②固有職員の年齢構成が極端に若年層に偏っていて、市と異なり住居手当の廃止対象職員が殆どいない一方で固有職員の大半が増額対象となり法人財政への負担が大きいという当局側の主張にも一定の配慮すべき点があり、横浜市からは1年半遅れ、かつ額としては市の引き上げ額9000円に対して平成28年度はわずか500円の引き上げで組合としてはやむを得ず合意しました。

29年度以降の取り扱いについては引き続き当局側と組合で交渉することになっていたのですが、今年度の横浜市職員の給与について、昨年10月に市人事委員会から民間給与との差額分について引き上げの勧告があり、その中に住居手当をさらに1600円引き上げ月額19600円とすることが含まれていたため、29年以降の話の前にこの今年度の横浜市の住居手当引き上げにどう対応するかが問題となりました。
こちらについては、昨年11月に3度にわたって組合ニュースで状況をお知らせしたところです。

http://ycu-union.blogspot.jp/2016/11/1.html
http://ycu-union.blogspot.jp/2016/11/105002.html
http://ycu-union.blogspot.jp/2016/11/105003.html

上記のニュースで書いたように、11月の当初時点では法人の財政状況を理由に今年度の市の引き上げには倣わないというのが当局側の反応でしたが、その後、継続協議とすることで合意、取り扱い未確定のまま越年となっていました。

この問題について、先週末の1月20日夜に当局側から新たな提案がありました。内容は、法人財政の見通しが不明確であることを理由に住居手当のみは市に準じないというこれまでの提案内容から大きく変わるもので、① 住居手当については今年度の横浜市の引き上げには追随しない、② 月例給の上位昇給の廃止、③ 勤勉手当の算出基礎からの扶養手当の除外、④ 以上の①~③の措置と引き換えの勤勉手当の成績率・分布率の拡充というもので、法人化時に法人固有職員と市職員・大学への市派遣職員の処遇に格差を設けさせないために組合側が要求、合意した「法人固有職員の処遇は横浜市職員に準じる」という内容から大きく逸脱するものです。実施時期についても、上位昇給の廃止は29年4月、つまり2か月後から実施したいという性急なものでした。

また、このような提案を行った背景としては、① 常勤固有職員の年齢構成が若年層に大きく偏っており、中長期的に年齢構成が異なる横浜市職員と同様の処遇を続けることは困難、② 大学という市とは異なる組織の職務等に応じた人事給与体系としたい、という2つを挙げ、それらを踏まえ、職員の意欲・能力・実績を反映できるメリハリのある人事給与制度として今回の変更を提案するという説明でした。


20日夜に当局側から組合に対して示された具体的な提案文書は以下の通りです。

平成29年1月20日
企画総務部人事課

法人職員の給与体系の見直しについて


1 提案理由

公立大学法人化後12年目を迎え、平成29年度からは、「第3期中期計画」がスタートします。 現在策定がすすめられている「中期計画(素案)」の中でも「大学職員・病院職員としてのプロ フェッショナルな人材育成」に基づき、職員の専門性や業務の継続性を高めるキャリア形成を進 めるとともに、現行の人事給与制度の課題を検証し、職務、職責に応じた大学・病院の実態に相 応しい人事給与制度の検討を進めるとしています。

こうした背景を踏まえ、職員の意欲・能力・実績をより一層反映できるメリハリの
ある人事給 与制度とするため、法人職員の昇給制度の運用を見直すとともに、勤勉手当における業務実績評価の充実を図ります。

2 内容

(1)昇給幅の見直し

ア 上位昇給区分(6号)を廃止し、人事考課結果を勤勉手当における業務実績評価へ反映します。

イ 下位昇給の昇給幅を人事考課結果がC評価の場合は「2昇給」、D評価の場合は「昇給なし」とします。

(2)勤勉手当における成績率及び分布率の拡充

昇給幅の見直しの財源に加え、「勤勉手当基礎からの扶養手当除外」及び「住居手当の改定見送り」により、勤勉手当における成績率及び分布率の拡充を図ります。

(3)その他

昇給制度の見直しに伴い、人事考課制度についても見直しを検討します。

3 実施時期

(1)昇給幅の見直し

平成28年度人事考課結果を反映する、平成29年4月昇給から実施

(2)勤勉手当

平成29年12月期


2.(2)の勤勉手当の成績率、分布率については今回、具体的な数字が示されておらず、これについては1,2週間中に改めて提案するとの説明があり、組合側からは1月中に提案するよう求めて、当局側も同意しました。また、提案の内容に関する当局側としての裏付けとなるような数値-例えば法人財政の現状や4月以降の次期中期計画における見通し、特に次期中期においてまるで十分な基本金を持った私学のような拡張政策を取っていることとの整合性、そもそもこの当局側提案によって個々の項目でどのように支出額が変わり、全体としての固有常勤職員への人件費支出額はどう変わるのか等-も一切出ていないため、これらについても早急に示すよう求め、対応を約束させました。

組合側の対応としては、個々の具体的な提案内容以前の問題として、まずは、① 固有常勤職員の処遇の大きな変更であり、法人化時合意の変更にあたる重大な問題である、② これだけの重大な問題は十分な時間をかけて交渉・合意することが大前提であり、実施のわずか2か月前に提案されても実質的な交渉期間がほとんど取れない、③ 常勤固有職員の年齢構成の極端な偏りが人事政策・法人財政上どういう問題を生むかは最初から分かっていたことであり、過去の交渉で組合側から指摘もしてきた。それにも関わらず新卒者・第2新卒者の大量採用を続けてきたのは当局側であり、その責任を問うことなく負の結果のみを常勤固有職員に押し付けることは許されない④ 同一職場において同一の業務を行っているにもかかわらず処遇に格差が生じることはおかしい(ことに市派遣管理職、市OB管理職が大量に存在している状況下においては)、という大原則の指摘を行いました(そもそも平均年齢が大幅に低い分、本来であれば、人件費負担は市よりずっと低いはずです)。また、一昨年度の横浜市における20代、30代職員の住居手当の9000円引き上げに対して、昨年8月に最終的に今年度分としては500円のみの引き上げでやむをえず合意したのは、法人財政の悪化という当局側の説明に対して配慮したためであり、⑤ 今年度の横浜市の住居手当引き上げ額1600円に対応するだけの財源が実はあるのであれば、それはまず市と同様に若手職員の住居手当の1600円引き上げに充てるべきであるという点や⑥ 職員の意欲・能力・実績に報いるというのであれば、制度設計として本俸での上位昇給の廃止は本末転倒ではないか等についても指摘しました。

個別項目に関しては、1月中に行われるはずの勤勉手当の具体的な成績率・分布率の提案及び今回提案に係る具体的な諸データの提示に基づき検討することになりますが、組合としてはまず、上記の大原則に関わる問題点がクリアされる必要があると考えます。

この問題が浮上して以降、たびたび固有職員の皆さんには組合への加入を呼び掛けてきました。今回の提案内容が現実化すれば、それは法人化時の合意が防波堤となっていた法人固有職員の処遇の切り下げによる人件費削減という、民間企業でも多用されてきた(そしてまさにその「合成の誤謬」の結果として日本経済全体の低迷につながった)法人財政政策上の道を開くことになります。そしてそれは、多くの官公庁や民間企業において存在する外郭団体、子会社の職員・社員の“2級市民”的位置づけへとつながりかねないものです。法人化時の労働組合の組合員と当時の執行部の努力の所産としての合意が危機に瀕している現在、皆さん自身の努力によらずして現在の処遇を維持することは困難です。職員組合は少数組合であるにもかかわらず、法人化時の合意と労働基準法等の法令上の根拠に基づき、この12年、非組合員が過半数である法人固有職員の権利と処遇の擁護を続けてきました。しかし、それももはや限界に達しつつあります。重ねて組合への加入を呼び掛けてこの稿を終わります。

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