2015年11月5日木曜日

ドラッカー 『マネジメント』より

悪い組織の症状

「まず第1に、頻繁に見られる症状は、マネジメント階層の増加である。(中略)階層の増加は、組織内の相互理解と共同歩調を困難にする。目標を混乱させ、間違った方向に注意を向けさせる。数理的な情報理論によれば、一つの中継点の追加によって、伝達される情報は半減し、雑音は倍増する。」

「第2に多くみられる症状は、組織構造に関わる問題が頻繁に発生することである。(中略)典型がメーカーにおける製品開発活動である。マーケティング部門は、それが自分たちの仕事だとする。研究開発部門も自分たちの仕事だとする。(中略)同一の問題が何度も起こるのは、典型的職能や「ラインとスタッフ」などの昔ながらの組織論を考えもなしに使うからである。(中略)繰り返し出てくる組織構造上の問題を、紙の上で、小さな箱の絵を機械的に動かすことによって解決しようとしてはならない」

「第3に、同じように多く見られる危険な症状が、要となる者の注意を重要でない問題や的外れの問題に向けさせることである。(中略)縄張り争いはもちろん、態度、礼儀、手続きに関心を向けさせるようでは、人は間違った方向へ進む。」

「あまりに大勢の人間を集める会議を開かざるを得なくなることである。これが第4の症状である。(中略)トップマネジメントの数人は別として、マネジメントの人間の多くが、自らの時間の4分の1近くを会議に使うようでは、組織構造が悪いというべきである。会議が多すぎるということは、仕事の分析が十分でなく、仕事の大きさが十分大きくなく、仕事が真に責任を伴うものになっていないことを表している。」

「第5に、組織の間違いは、調整役や補佐役など実際の仕事をしない人たちを必要とするようになることに現れる。活動や仕事が細分化されすぎている証拠である。あるいは、活動や仕事が明確な単一の成果に焦点を合わされることなく、あまりにいろいろなことを期待されている証拠である。」

慢性病

「今日多くの組織、特に大企業が組織病という病いにかかっている。組織中で組織構造を気にしている。常にどこかで組織改革を行っている。(中略)次から次へと組織改革が試みられる。(中略)これもまた悪い組織の典型である。組織病は、組織構造の基本をおろそかにしたときに発症する。(中略)組織改革は気軽に行ってはならない。組織改革は、いわば手術である。たとえ小さなものであっても、手術には危険が伴う。安易な組織改革は退けなければならない。」

ドラッカー,『マネジメント(中)』, 上田惇生訳, ダイヤモンド社, 2008 年, P236-242


  • 原著は 1973 年出版。古典は大事、というべきか、それとも原理、原則は大事というべきか(そして滅多に守られない)。

  • 企業組織を念頭にしたものなので、大学、特に教員組織にそのまま適用するのは間違いのもと、服用注意。事務局、あるいは経営陣と事務局を対象とする場合は有用。ただし、もっと初歩的なレベルでの問題として説明可能な場合も多い。
(菊池 芳明)

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