その前に2点ほど改めて注意すべき点について触れておきます。
第1に、この労使協定書の第1条第2項(4)に「非常勤職員にあっては、子が1歳に達する日から1年を経過する日までに雇用契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと」とありますが、これは法令に従えば「更新されないことが明らかであること」の誤りで、協定書の記述では法令とは意味が反対になってしまっています。第1条第2項は「育児休業をすることができない」場合の条件を挙げている項目ですので、「任期更新がされないことが明らかでない場合」には育児休業を認めないでは意味が通りません。
因みに規程上では、この部分は「非常勤職員の育児・介護休業等に関する規程」の第2条第1項(3)において、育児休業をすることができる条件として「更新されないことが明らかでないこと」とされていて、こちらについては法令の趣旨どおりとなっています。言い方を変えれば労使協定書と規程では意味が反対になってしまっています。
すでにお伝えしたところですが、職員組合はこのような本来労使協定に盛り込む必要のない項目を(しかもどのような基準で加えたり加えなかったりしているのかもよく分からない)加えること自体に反対し、労使協定には法令上協定で定めるとしている項目だけを取り上げ、その他については規程、規則で定めて、その内容について法令との齟齬がないか精査するよう求めてきました。その理由の一つは、まさにこのような誤りが起こるであろうことを懸念してのことです。必要のない協定書本体と規程の双方に条件を記載し、しかもわざわざ片方は「取得できる条件」、もう片方は「取得できない条件」として記述しているのですから、誤りが起こる可能性は当然高くなります。
職員組合では、法令との内容の齟齬については規程、規則においてチェックし、協定書本体については(このような誤りを防ぐ意味でも)不要な項目は加えないよう求めていたので、このようなわざわざ規程とは反対の記述の仕方をした部分の誤りまではそもそもチェックしていません。前回組合ニュースでもお伝えしたように、制度の利用を予定、検討している方には、協定書、規程、規則の関連部分総てをご面倒でも確認するよう、改めて呼びかけます。
第2に、基本的に厚労省の法令解釈に則り制度設計及び運用を行うよう求めましたが、これが容れられなかったことにより、制度の運用、適用において教職員が不利益をこうむる可能性があります。
例えば、育児短時間勤務について、労使協定第5条第1項(2)ウで短時間勤務の対象外になる場合として「業務の性質又は業務の実施体制に照らして、所定労働時間の短縮措置を講ずることが困難と認められる業務に従事するもの」が挙げられています。この部分は、厚労省の「子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針」第2の9(3)における例示を見ると、国際線等の客室業務員等の業務などが挙げられていて、単にその部署が忙しいから育児短時間勤務の取得は認められない、といった運用を行うことが想定されているわけではないことがわかります。しかし、このような原則の確認は行われず、法人化後の本学の職場環境、当局の人事政策を考慮すると、「忙しいのだから認められない」と言って、短時間勤務の確保のための対応や努力は何ら行わずに申出を却下するケースなども十分に考えられます。
また、任期の更新をまたいで育児休業などを取得する場合、厚労省の「育児休業や介護休業をすることができる期間雇用者について」(期間雇用者という言葉は言われてみると随分と不安定そうで不安を招く言葉ですが、事実我々は期間雇用者なのです)を見ると、雇用契約の期間が例えば3年で、契約が切れる1年前から育児休業を2年間取った場合、新たな契約期間3年間の最初の1年は引き続き育児休業期間、その後2年間は復帰して勤務、ということになります。
ところが、当局側が主張している職員任期規程の第4条によれば、このような場合、次の任期については、とりあえず育児休業を取っている1年は再任となりますが、それ以後については「育児休業となる前の期間、育児休業の期間及び休業前の再任の回数を考慮し決定する」とされていて、どうなるかは休業を取得する教職員の側には分からない、当局側の決定次第ということになってしまいます。
このように、厚労省の法令解釈に則った制度設計・運用がなされる保証がない状況下、様々な問題が発生する可能性が残ってしまっています。
ただ、ここで一つお断りしておかなければなりませんが、基本的に厚労省の法令解釈に則り制度設計及び運用を行うべきである、という職員組合の見解は、あくまでも、今回の育児・介護休業等の取得に関する厚労省の解釈が育児・介護休業等の取得を促進するという観点に立っていて同意できる点が多く、当局側によるこれまでの本学での人事制度の設計・運用よりは遥かにましである、という認識からのものであり、厚労省の法令解釈を絶対基準とする、というものではありません。例えば、この問題について教員組合との意見交換の中で、休業期間は任期に加えないという考え方もあるのではないかという話もありました。このような厚労省の法令解釈や法令の基準を超えた水準の確保を要求することも問題によっては当然ありうると思います。今回の育児・介護休業等に関する問題では、職員組合が最初に指摘した問題点を巡る議論に終始し(しかもその多くは受け入れられませんでした)、これまでのところ、残念ながらそのような細部に渡る議論や合意といったレベルまでは至らないという結果になってしまっています。
では、以下から労使協定書の本文になります。因みに、この文書自体は金沢八景キャンパスのものですが、他のキャンパスに関しても本文は全く同じとのことです(ただし、福浦キャンパスについてのみ、この文書から第17条の部分が除かれています)。
公立大学法人横浜市立大学職員の育児・介護休業等に関する労使協定書 公立大学法人横浜市立大学理事長 本多常高 と、金沢八景地区の職員の過半数を代表する者 山田俊治 とは、公立大学法人横浜市立大学職員就業規則第44条及び公立大学法人横浜市立大学非常勤職員就業規則第30条に基づき定められる育児・介護休業等について、次のとおり協定する。 (育児休業の対象者) 第1条 育児のために休業することを希望する職員であって、3歳に満たない子(非常勤職員にあっては1歳に満たない子)と同居し養育する者は、この規程に定めるところにより育児休業をすることができる。 2 前項の規定にかかわらず、次の職員については育児休業することは出来ない。 (1) 継続雇用1年未満の者 (2) 休業の申し出があった日から起算して、1年以内に退職することが明らかな者 (3) 1週間の所定労働日数が2日以下の者 (4) 非常勤職員にあっては、子が1歳に達する日から1年を経過する日までに雇用契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと。 (育児休業の期間等) 第2条 育児休業の期間は、原則として子が3歳に達するまで(非常勤職員にあっては1歳に達するまで)を限度として、育児休業申出書に記載された期間とする。 (育児休業している職員の賃金等の取扱い) 第3条 育児休業期間は、無給とする。 (育児部分休業制度) 第4条 職員で小学校就学の始期に達するまでの子(非常勤職員にあっては3歳に満たない子)と同居し、養育する者は、理事長に申し出て、所定勤務時間の始め又は終わりにおいて、1日を通じ30分単位で2時間を超えない範囲で必要な時間を休業できる。ただし、次のいずれかに該当する職員からの申し出は拒むことができる。 (1) 1日の所定労働時間が6時間以下である者 (2) 労使協定によって所定労働時間の短縮措置を講じないと定められた次の者 ア 勤続1年未満の者 イ 週の所定労働日数が2日以下の者 2 部分休業取得期間は、無給とする。 (育児短時間勤務) 第5条 職員で小学校就学の始期に達するまでの子と同居し、養育する職員は、理事長に申し出て、所定勤務時間を短縮することができる。ただし、次のいずれかに該当する職員からの申し出は拒むことができる。 (1) 1日の所定労働時間が6時間以下である者 (2) 労使協定によって所定労働時間の短縮措置を講じないと定められた次の者 ア 勤続1年未満の者 イ 週の所定労働日数が2日以下の者 ウ 業務の性質又は業務の実施体制に照らして、所定労働時間の短縮措置を講ずることが困難と認められる業務に従事する者 2 短縮する勤務時間は別に定める。 3 請求期間は、1月以上1年以下で、子が小学校就学の始期に達するまで引き続き延長することができる。 4 育児短時間勤務をしている時間については、報酬は支給しない。 (介護休業の適用対象者) 第6条 要介護状態にある家族を介護する職員は、介護休業をすることができる。 2 前項の「家族」の範囲は、次のとおりとする。 (1) 配偶者、父母、子、配偶者の父母 (2) 同居し、かつ、扶養している次の者 祖父母、孫及び兄弟姉妹 3 第1項の「要介護状態」とは、負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり、常時介護を必要とする状態をいう。ただし、同項の規定にかかわらず、次の職員については介護休業することは出来ない。 (1) 引き続き雇用された期間が1年未満の者 (2) 申し出の日の翌日から93日以内に雇用関係が終了することが明らかな者 (3) 1週間の所定労働日数が2日以下の者 (介護休業の期間等) 第7条 介護休業の期間は、介護を必要とする対象家族1人につき、原則として、連続する6月の期間内までとし、最初に申し出た日から1年以内の期間で120日(非常勤職員にあっては、93日まで)(勤務を要しない日及び休日を除く。)までとする。 2 前項にかかわらず、次の各号に定める事情が発生した場合は、終了予定日を待たず当該期間は終了する。 (1) 対象家族が死亡したとき (2) 介護を行っていた職員が負傷し又は疾病等により介護が困難になったとき (3) 介護を行っていた職員が産前・産後休業、育児休業又は新たな介護休業に入ったとき (4) その他介護休業に係る家族を介護しないこととなったとき 3 介護休業の適用は原則として対象家族1人につき要介護状態ごとに1回とする。 (介護休業の単位) 第8条 介護休業の単位は、1日、半日又は1時間(非常勤職員にあっては、1日又は半日を単位)とし、1時間を単位とする介護休業は、1日を通じ、始業の時刻から連続し、又は終業の時刻まで連続した4時間の範囲内とする。 (介護休業期間中の賃金等の取扱い) 第9条 介護休業期間中は、無給とする。 (育児・介護のための時間外労働の制限) 第10条 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する職員が当該子を養育するために申し出た場合には、当該申し出をした職員の業務を処理するための措置を講ずることが著しく困難である場合を除き、1か月について24時間、1年について150時間を超えて時間外労働をさせることはない。 2 前項の規定は、日常生活を営むのに支障がある者を介護する職員について準用する。この場合、前項中「小学校就学の始期に達するまでの子を養育する職員が当該子を養育するため」を、「要介護状態にある者の介護その他の世話を行う職員が、当該世話を行うため」と読み替えるものとする。 3 前2項の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当する職員の育児のための時間外労働の制限の申し出は拒むことができる。 (1) 引き続き雇用された期間が1年未満の者 (2) 1週間の所定労働日数が2日以下の者 4 次の各号に掲げるいずれかの事由が生じた場合には、制限期間は終了するものとし、当該制限期間の終了日は当該各号に掲げる日とする。 (1) 家族の死亡等制限に係る子を養育又は家族を介護しないこととなった場合 当該事由が発生した日 (2) 制限に係る子が小学校就学の始期に達した場合 子が6歳に達する日の属する年度の3月31日 (3) 申出者について、産前産後休業、育児休業又は介護休業が始まった場合 産前産後休業、育児休業又は介護休業の開始の前日 (育児のための所定外労働の免除) 第11条 3歳に満たない子を養育する職員が当該子を養育するために申し出た場合には、事業の正常な運営に支障がある場合を除き、所定労働時間を超えて労働をさせることはない。 2 次の各号に掲げるいずれかの事由が生じた場合には、制限期間は終了するものとし、当該制限期間の終了日は当該各号に掲げる日とする。 (1) 子の死亡等免除に係る子を養育しないこととなった場合 当該事由が発生した日 (2) 免除に係る子が3歳に達した場合 当該3歳に達した日 (3) 申出者について、産前産後休業、育児休業又は介護休業が始まった場合 産前産後休業、育児休業又は介護休業の開始の前日 3 第1項の規定にかかわらず、次の職員からの所定外労働の免除の申し出は、拒むことができる。 (1) 継続雇用1年未満の者 (2) 1週間の所定労働日数が2日以下の者 (育児・介護のための深夜業の制限) 第12条 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する職員が当該子を養育するため又は要介護状態にある家族を介護する職員が当該家族を介護するために申し出た場合には、事業の正常な運営に支障がある場合を除き、午後10時から午前5時までの間(以下「深夜」という。)に労働させることはない。 2 前項にかかわらず、次の職員は深夜業の制限を申し出ることができない。 (1) 引き続き雇用された期間が1年未満の者 (2) 申し出に係る家族の16歳以上の同居の家族が次のいずれにも該当する者 ア 深夜において就業していない者(1ヶ月について深夜における就業が3日以下の者を含む。)であること。 イ 心身の状況が請求に係る子の保育又は介護をすることが出来る者であること。 ウ 8週間(非常勤職員にあっては、6週間)(多胎妊娠の場合にあっては、14週間。)以内に出産予定でないか、又は産後8週間以内でない者であること。 (3) 1週間の所定労働日数が2日以下の者 (4) 所定労働時間の全部が深夜にある者 3 次の各号に掲げるいずれかの事由が生じた場合には、制限期間は終了するものとし、当該制限期間の終了日は当該各号に掲げる日とする。 (1) 家族の死亡等制限に係る子を養育又は家族を介護しないこととなった場合 当該事由が発生した日 (2) 制限に係る子が小学校就学の始期に達した場合 子が6歳に達する日の属する年度の3月31日 (3) 申出者について、産前産後休業・育児休業又は介護休業が始まった場合 産前産後休業・育児休業又は介護休業の開始の前日 (子の看護休暇) 第13条 子の看護休暇は、9歳に達する日(非常勤職員にあっては、小学校就学の始期に達する日)以後の最初の3月31日までの間にある子(子に準ずる者も含む。)を養育する職員が、当該子の看護(負傷し、又は疾病にかかった当該子の世話を行うことをいう。)のほか、当該子の疾病予防のための予防接種や健康診断を受けさせるため、勤務しないことが相当であると認められる場合、当該休暇年度において、5日まで(当該子が2人以上の場合は10日まで)取得することができる。 2 前項の規定にかかわらず、次の職員については、看護休暇を取得することはできない。 (1) 継続雇用6か月未満の者 (2) 1週間の所定労働日数が2日以下の者 3 子の看護休暇は有給(非常勤職員にあっては無給)とする。 (子の看護休暇の取得単位) 第14条 子の看護休暇の取得単位は、1日又は1時間(非常勤職員にあっては、1日又は半日)とする。1時間単位で取得する場合は、1時間を超える部分については15分刻みで取得できることとする。 (介護休暇) 第15条 介護休暇は、負傷、疾病、身体上若しくは精神上の障害又は老齢などにより、2週間以上にわたり日常生活を営むのに支障がある者(以下「要介護者という」の介護その他の世話を行う職員が、当該世話を行うため、勤務しないことが相当であると認められる場合、当該休暇年度において、5日まで(要介護者が2人以上の場合は10日まで)取得することができる。 2 前項の「要介護者」の範囲は、次のとおりとする。 (1) 配偶者、父母、子、配偶者の父母 (2) 同居し、かつ、扶養している次の者 祖父母、孫及び兄弟姉妹 3 第1項の規定にかかわらず、次の職員については、介護休暇を取得することはできない。 (1) 継続雇用6か月未満の者 (2) 1週間の所定労働日数が2日以下の者 4 介護休暇は有給(非常勤職員にあっては無給)とする。 (介護休暇の取得単位) 第16条 介護休暇の取得単位は、1日又は1時間(非常勤職員にあっては、1日又は半日)とする。1時間単位で取得する場合は、1時間を超える部分については15分刻みで取得できることとする。 (協議) 第17条 この協定の遂行にあたって、運営上の問題が生じたときは、横浜市立大学及び金沢八景地区事業場の双方で誠実に協議する。 (有効期間) 第18条 この協定の有効期間は、平成22年6月30日から平成23年3月31日までとする。 平成22年6月30日 公立大学法人横浜市立大学 理事長 本多 常高 横浜市立大学教員組合 委員長 山田 俊治 |
前回の組合ニュースでも触れましたが、この制度について、疑問等がある方は職員組合までご相談ください。非組合員の方でももちろん構いません。ただ、最初に触れたように、本学における制度設計・運用と厚労省の法令解釈との間にはずれがあり、その辺りについての実際の取得の際の問題については、非組合員の方に対してできることは、労働組合としての制度上の限界から組合員に対するものとは違ってきてしまうかもしれません。できればこの際に組合にご加入いただければ組合としても大いに助かります。今回の交渉でも明らかなように、組合員の数の多寡はどうしても当局との交渉力に影響します。一人でも多くの方が組合に加入することが結果的に職員全体の権利や立場を守ることにつながります。よろしくお願いします。
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