この文書自体は、法人の設置者である横浜市の「横浜市懲戒処分の標準例」をほぼそのまま流用したものですが、幾つか横浜市のものには含まれていない項目があります。このうち、標準例の一番初めにある項目、「信用失墜行為」は、二重の意味で非常に危険なものとなる可能性があります。
第一に「信用失墜行為」という言葉自体はきわめて曖昧なものであり、何をもって「信用失墜行為」に該当するかの判断を、当局が恣意的に行うことが可能です。実際、この「信用失墜行為」という言葉は、単に組織の構成員が犯罪を行うなど組織の評判に傷を付ける行為をさすだけでなく、民間企業で社員が会社の問題点・不祥事などを社外で口にしたり、会社を批判したりするのを防ぐ目的でも使われています。その場合、事実その会社に問題があるか否かに関わらず、マイナスの情報を外部に流出させ、会社の評判に負の影響を与えたこと自体が処分の対象になるのです。そして自明のことですが、問題のある企業であるほど「信用失墜行為」という言葉で社員の言動をおさえようとするでしょう。
さらに「信用失墜行為」という言葉は確認できた限りでは、国立大学の同種の文書では処分の対象としては挙げられていません。公立大学についても、本学同様、設置者の強い統制下に置かれている首都大学を見ても「信用失墜行為」を処分の理由とはしていません。横浜市からの派遣職員が主導権を握り、市の意向に沿って大学運営を行っている本学において、モデルとした横浜市の文書においても、他の国公立大学でもどうやら処分の理由としていない項目をわざわざ付け加えていることには何らかの特定の目的があると考えられます。
また、第二に処分の範囲が戒告から懲戒解雇までの広範囲にわたっていることも問題です。どのような処分を課されるのかが不明なだけでなく、大学の教職員は懲戒解雇という重大なリスクにさらされることになるからです。
このように二重の意味で「信用失墜行為」という項目は、教職員の正当で自由な言論まで圧迫する危険性があります。今回、まずその意図、内容の確認を行うために当局に質問書を送ることとしました。内容は以下の通りです。こちらについても、回答あり次第、内容を皆様にお知らせします。
2009年12月22日 公立大学法人 横浜市立大学理事長 本多 常高 様 横浜市立大学職員労働組合 (横浜市従大学支部) 委員長 登坂 善四郎 懲戒処分の標準例に関する質問書 市民から期待され信頼される大学教育と運営の確立に向け、日頃の取り組みへのご尽力に敬意を表します。 先般、人事課より職員組合に対して“懲戒処分の標準例”なる文書が示されましたが、これについて、以下の通り質問します。なお、回答は1月22日(金)までに書面にて行うよう要求します。
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