2009年12月24日木曜日

「懲戒処分の標準例に関する質問書」

 先般、学内に「懲戒処分の標準例」が公開されました。学則や規程ではなく、重要な文書という位置づけでもないので見過ごされた方もいるかもしれません。隅々までチェックされた方は殆どいないと思います。

 この文書自体は、法人の設置者である横浜市の「横浜市懲戒処分の標準例」をほぼそのまま流用したものですが、幾つか横浜市のものには含まれていない項目があります。このうち、標準例の一番初めにある項目、「信用失墜行為」は、二重の意味で非常に危険なものとなる可能性があります。

 第一に「信用失墜行為」という言葉自体はきわめて曖昧なものであり、何をもって「信用失墜行為」に該当するかの判断を、当局が恣意的に行うことが可能です。実際、この「信用失墜行為」という言葉は、単に組織の構成員が犯罪を行うなど組織の評判に傷を付ける行為をさすだけでなく、民間企業で社員が会社の問題点・不祥事などを社外で口にしたり、会社を批判したりするのを防ぐ目的でも使われています。その場合、事実その会社に問題があるか否かに関わらず、マイナスの情報を外部に流出させ、会社の評判に負の影響を与えたこと自体が処分の対象になるのです。そして自明のことですが、問題のある企業であるほど「信用失墜行為」という言葉で社員の言動をおさえようとするでしょう。

 さらに「信用失墜行為」という言葉は確認できた限りでは、国立大学の同種の文書では処分の対象としては挙げられていません。公立大学についても、本学同様、設置者の強い統制下に置かれている首都大学を見ても「信用失墜行為」を処分の理由とはしていません。横浜市からの派遣職員が主導権を握り、市の意向に沿って大学運営を行っている本学において、モデルとした横浜市の文書においても、他の国公立大学でもどうやら処分の理由としていない項目をわざわざ付け加えていることには何らかの特定の目的があると考えられます。

 また、第二に処分の範囲が戒告から懲戒解雇までの広範囲にわたっていることも問題です。どのような処分を課されるのかが不明なだけでなく、大学の教職員は懲戒解雇という重大なリスクにさらされることになるからです。

 このように二重の意味で「信用失墜行為」という項目は、教職員の正当で自由な言論まで圧迫する危険性があります。今回、まずその意図、内容の確認を行うために当局に質問書を送ることとしました。内容は以下の通りです。こちらについても、回答あり次第、内容を皆様にお知らせします。

2009年12月22日
公立大学法人 横浜市立大学
理事長 本多 常高 様
横浜市立大学職員労働組合
(横浜市従大学支部)
委員長 登坂 善四郎

懲戒処分の標準例に関する質問書

 市民から期待され信頼される大学教育と運営の確立に向け、日頃の取り組みへのご尽力に敬意を表します。

 先般、人事課より職員組合に対して“懲戒処分の標準例”なる文書が示されましたが、これについて、以下の通り質問します。なお、回答は1月22日(金)までに書面にて行うよう要求します。

  1. “懲戒処分の標準例”は、横浜市の“横浜市懲戒処分の標準例”をもとに作成されているようであるが、公立大学法人化された本学においては、地方自治体の一部局としてではなく、独立した高等教育研究機関である「大学」としての教育・研究・医療を基本とした経営が期待される。横浜市が本学を法人化したのもそのような公立大学法人制度の趣旨に則ったものと考えられるが、この標準例の作成に当たっては、そのような高等教育研究機関としての「大学」の特性、社会的責任等についてはどのように考慮されたのか。
  2. “横浜市懲戒処分の標準例”をそのまま転用したにもかかわらず、2(1)①~③のみは大学独自のものとして付け加えられており、さらに、この種のものは確認できた範囲において他の国公立大学の同種の文書にも含まれていない。これらの項目は、基準の適用を曖昧にするものとなっているが、どのような考えに基づき付加されたのか。
  3. 2(1)①の“信用失墜行為”とは、具体的に倫理規定違反以外にどのような行為を対象とするのか。また、それは誰が判断するのか。さらに“法人の運営に重大な支障”とは具体的にどのような状態を意味し、また、どのような手順を踏んで誰が判断するのか。
  4. 2(1)①の“信用失墜行為”に関する処分は、懲戒解雇から戒告まで、すなわち総ての処分が記されているが、具体的にどのような行為がどの処分に当たるのか、基準は何か。また、どのような手順を踏んで誰が判断するのか。

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