2010年9月2日木曜日

次期中期目標・中期計画に関する横浜市長への申し入れ

 4月14日付職員組合ニュース【公開版】で皆様にお知らせしたように、職員組合では次期中期計画の検討に関し、様々な問題点があると共に労働組合、一般教職員の意見が反映されていないことは看過できないとして、理事長に対し4月5日「次期中期計画に関する意見書」を提出し、特に法人経営に関する部分について6項目の問題点を指摘しました。しかし、残念ながら職員組合の指摘は当局によって黙殺され、問題点はそのまま残ったまま計画策定の事実上の終了を迎えようとしています。

 これについて、横浜市立大学職員労働組合のもうひとつの顔である横浜市従大学支部の親組織である横浜市従も、市大の現状には問題がありこの件についてこのまま放置するのは望ましくないという認識から、今回、横浜市従中央執行委員長名で次期中期目標の決定権、中期計画の認可権、そして法人に対する広範囲で強大な監督権を有する林横浜市長に対して次期中期目標等に関する申し入れを行うこととし、8月30日、市大を管轄する都市経営局に対し説明及び申し入れを行いました。内容的には、職員組合が大学理事長に対して提出した意見書の内容をほぼ踏襲していますが、市長及び市の関連当局が大学の現状についてどの程度正確に認識しているか疑わしい点も考慮し、前文の部分を変更、法人化後の市大の状況、問題点について大幅に説明を加えてあります。

 回答内容については、回答あり次第、皆様にまたお伝えします。

2010年8月30日
横浜市長 林 文子 様
横浜市従業員労働組合
中央執行委員長 菅野昌子
大学支部支部長 登坂善四郎

公立大学法人横浜市立大学 次期中期目標に関する申し入れ

 横浜市政の発展と市民サービスの向上に向け、日頃の取り組みへのご尽力に敬意を表します。

 ご承知の通り、横浜市立大学は、前市長によるイニシアティブの下、強引な行政主導により平成17年4月に公立大学法人化されました。本来は、日本の大学改革における先導者の一人であった慶応大学教授 故孫福弘氏が理事長として法人化後の大学の運営に当たるはずでしたが、法人化を前にした段階で孫福氏が急逝、制度設計も不十分な状態に終わり、以後の制度設計と法人化後の運営は事実上、市派遣幹部職員の手に委ねられました。それ以降、教育研究・大学経営に関して専門性を欠く市OB、市派遣幹部職員主導の大学運営により、教育研究、大学経営の双方で混乱が続き、他大学関係者・高等教育研究者・文科省関係者等の高等教育関係者、またジャーナリズムにおける横浜市立大学の評価も低下を続けています。

 横浜市従大学支部においても、市派遣一般職員組合員および法人化後新たに採用されたプロパー職員組合員の権利の保護、健全な職場環境の確保を目指し活動を続けていますが、市派遣幹部職員とプロパー職員間の事実上の上下関係、医療技術職を除くプロパー職員全員への任期制の導入、複雑な職員制度、市派遣幹部職員の大学経営に関する専門的知識の不足から来る非合理的、非効率的な指揮命令、市派遣幹部職員の労働関係法制に関する知識・認識の不足による雇用関係トラブルの続発等々の問題が山積しており、これらに起因するプロパー職員のモラールの低下、退職者やメンタル的要因による休職者の続発など、極めて厳しい状況が続いています。

 大学法人の中期目標の決定に関しては、地方独立行政法人法において「中期目標を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、当該公立大学法人の意見を聴き、当該意見に配慮しなければならない」とされていますが、実際には「大学法人の意見」とは、上記のように市派遣幹部職員等市関係者―大学経営、教育研究いずれの領域においても専門家ではない―を中心にしたごく一握りの“大学関係者”の意見であり、実際に大学の活動の大半を担い、数十年にわたって大学で活動し、あるいはそうなるであろう一般教員、プロパー職員はその意見を伝える機会もありません。また、この点は、中期目標に基づく次期中期計画の策定についても同様です。

 横浜市従大学支部は、このような有効な経営計画の策定に必要な専門的知識を欠いた少人数のトップダウンによる策定作業の進行に危惧を抱き、本年4月5日、法人理事長宛に「次期中期計画に関する意見書」を提出しました。しかし、その後の検討状況を見る限り、残念ながら大学支部の意見は大学当局により完全に黙殺されたものと考えざるを得ません。

 日本の高等教育を巡る環境は極めて厳しいものがあり、今後さらに悪化が予想されます。教育、研究、大学経営、さらに地域貢献・地域連携といった総ての面で、時にトレードオフの関係にある様々な課題への対応を、減少する資源を活用しつつ達成することが求められています。しかしながら、市OB、市派遣幹部職員による、大学法人制度の趣旨に全く反した民間流経営ならぬ公務員流大学経営という現在の横浜市立大学のあり方は、このような高度で複雑な経営課題への対応を困難なものとしています。このまま、現行次期中期目標案及びそれに基づく計画案によってさらに6年間の時間を重ねた場合、高度化、専門化の試みが続くプロパー大学職員と教員との協働、さらには経営陣のトップダウンと一般教職員のボトムアップの組み合わせにより改革を進める国立大学や私立大学との競争力格差は決定的なものとなることを強く懸念します。

 市民の共有財産である横浜市立大学を発展させ、市民の中により良く根付いた存在とするためにも、公立大学法人の設置者である横浜市の首長として大学法人に対する監督責任と法人の人事・財務・評価等の広範かつ強力な権限を有し、また大学法人の意見に配慮しつつ次期中期目標の策定を行う権限を有する共に、法人が作成する次期中期計画に対する認可権を持つ貴職におかれては、大学法人制度の本来の趣旨に基づく大学運営を行うよう市派遣管理職の主導下にある法人を監督すると共に、以下のような現行中期目標・中期計画において明らかになった問題点を踏まえ、広く一般教員・プロパー職員の意見を聴き、これに配慮した中期目標の決定並びに中期計画の認可に当たるよう要望します。

1.大学の教育研究、経営の向上には教員・職員の密接な協力による大学の運営が不可欠になっているが、現在の案はそのような教職協働の見地を完全に欠いており、これを盛り込むこと。

2.市派遣職員及び医療技術職を除く全職員に対する任期制の導入は、優秀な職員の確保や職員のモラールの維持の面で問題があり、また、任期制と表裏一体の関係にある評価制度についても度々問題が発生している。これら制度が大きく関係すると思われる度重なる職員のメンタル面での問題からの休職や退職者の続発等は到底無視しえないものであり、制度に関する再検討を盛り込むこと。

3.プロパー職員の採用について、わずか数年間で大量の新卒、第二新卒者の採用が行われているが、このような極端な採用行動は、20年後、30年後の組織のあり方(職員の年齢構成、処遇等)についての懸念を抱かせる。また、職員の能力育成に関して、大学職員には地方公務員とは全く異なる課題が課せられているという点が認識されているかどうかも不明である。独自の社会的役割と課題を持った大学としての中長期的な観点に立った固有職員の採用、育成を行うこと。

4.非常勤職員制度に関し、制度の実態の検証を行うと共に必要であれば改善を行うことを盛り込むべきである。その際、短期的な人件費に係る視点からのみ判断するのではなく、大学の中長期的、総合的な経営力の維持・向上という観点を考慮すること。

5.20年ほど前までは、大学職員の業務の多くは、先例の踏襲や教授会の決定事項の遂行など定型的な処理が可能なものであったが、このような状況は既に終わり、今や大学職員は、急激な変化を迎えている大学という独自の社会的役割と課題、特色を持った組織体の経営の担い手としての能力の高度化と専門化を求められている。本学の大学専門職制度は、このような状況の変化に対する国内大学では初の先進的な取組の試みであったはずだが、実際には、法人化直後からこのような大学を巡る経営上の課題に対する知識・認識を欠く市派遣職員によって制度運用が骨抜きにされ、むしろ国レベルでの中央集権体制を前提としたジェネラリスト志向の強い地方公務員制度に同化させるが如き動きが進められている。現在公表されている次期中期計画関連文書に至っては、大学専門職という言葉自体含まれていない。大学専門職制度の堅持と本来の趣旨に則った運用を行うこと。

6.市派遣職員の段階的削減が現行中期計画同様盛り込まれているが、現行中期計画での市派遣職員の解消から内容が後退し、大学支部に対する大学当局の説明では、市派遣職員の解消は見直し、次期中期計画では市派遣職員削減の数的目標は設けないとのことであり、市派遣幹部職員が大学の経営を直接掌握する現状が恒久化される懸念が出てきた。現在、企画、財務、人事といった経営中枢部門の管理職の大半は市派遣幹部職員によって占められているが、本学の場合、事務局の実質的な権限、影響力は他の国公立大学に比べ非常に強く、大学のパフォーマンスに大きく影響することから、専門性を欠く市派遣幹部職員によるこれらのポストの占有の継続は大学経営上望ましくない。大学法人制度の趣旨に則り、原則として早期に市派遣幹部職員の引き上げを行うと共に、それまでの間、異動及び(大学の教育研究、経営に関する専門的な)研修を活用し、適切な人材の確保に努めるべきであり、このような方針を明記すること。

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