2011年11月25日金曜日

横浜市立大学の人事制度・職場環境等に関する職場諸要求について

個別の紛争への対応に追われているうちに例年より遅くなってしまいましたが、11月22日、今年度の職場諸要求を当局に手渡しました。

 残念ながら基本的に要求を出しても積極的な回答が返ってこないため、過去の要求はそのまま残って積みあがり、その一方で新たな要求が出て項目としては増える一方です。

 今年度の項目は20項目、昨年度の要求項目のうち福浦キャンパスのトイレの洋式化については整備計画により整備が進んだため削除し、新たに3(メンタルヘルス)、12(人材育成)、13(障害者雇用)、20(危機管理)の4項目を加えました。また、5の契約職員、嘱託職員の雇い止めに関しては、雇い止めの撤回には至らなかったものの、昨年度末に5年目で雇い止めとなった嘱託職員について再度の嘱託職員としての応募を認めさせることができましたので、それに応じて記述を修正、新たに再応募して採用された嘱託職員の処遇がリセットされることを取り上げています。

 回答期限は12月19日を指定しています。回答があり次第、皆様にもお伝えすることにします。

2011年11月22日
公立大学法人 横浜市立大学
理事長 本多 常高 様
横浜市立大学職員労働組合
委員長 三井 秀昭

職場諸要求に関する要望書

 市民から期待され信頼される大学教育と運営の確立に向け、日頃の取り組みへのご尽力に敬意を表します。
 横浜市立大学職員労働組合は、上記目的を達成するための労働環境改善に向けた職場諸要求について、以下の通り取りまとめをおこないました。本学は、法人化後7年が経過し、第2期中期計画期間を迎えたものの、法人化時の混乱と不完全な制度設計、その後の運用の混乱等から未だに抜け出せず、教育研究のみならず経営面でも数多くの課題を抱えています。
 ご検討をいただき、12月19日までに改善に向けた回答をいただけますよう、ここに要望します。

Ⅰ.職場環境・職員参加
1.働きやすい職場環境と職員参加の拡大について
 国立大学法人制度・公立大学法人制度の発足から7年が過ぎ、大学を巡る環境は一層厳しさを増している。高等教育機関としての総合的な経営力が問われる中、特に本学においては、大学法人制度の想定を超えたレベルの設置者による直接コントロールの強化・拡大と極端なトップダウン型経営の導入により、従前より公立大学の弱点とされていた事務局機能や適切なトップダウンとボトムアップの組み合わせが不可欠な教育研究の改善等において深刻な問題を抱えている。 
 本来の公立大学法人として、大学の全職員が大学の民主的な運営と教育研究への取り組みに積極的に関われる環境整備と職場内におけるコミュニケーションの拡充が重要であり、教職員間のコミュニケーションを高めながら、多くの大学職員の理解と協力体制のもとに、大学教育への取り組みが進むよう運営の改善と取り組みを要望する。

2.超過勤務への対応について
 一昨年来、手当圧縮等の要請からくるものと思われるが、超過勤務の抑制が行われている。もちろん、超過勤務自体は削減することが望ましいが、その方策は多く個人の努力に帰せられており、組織としての合理的・効率的なマネジメントの遂行という観点が薄く、事実上のサービス残業の強制につながりかねないものとして強く懸念する。業務と残業の実態について把握と公表を行うと共に、現場の職員の要望に基づき、私立大学に比べ著しく非効率的と思われる事務局内部の意思決定や業務執行のプロセスの効率化に努めるよう要望する。

3.メンタルヘルス等への対応について
 詳細については不明であるが、先般、人事課より本学のメンタルヘルス等に関連して教職員の休職、復帰、ケア等に関する制度整備を行いたいとの説明があった。大学が法人化され横浜市より独立した時点で対応がされるべきであったものであり、遅ればせとは言いながら制度整備が行われること自体は歓迎する。
 しかしながら、休職及び休職からの復帰が辞令による処分として行われる以上、教職員の身分、処遇に関する問題であり、それにもかかわらずその内容について組合との協議を拒否したことは遺憾である。
 また、本学の場合、医療技術職を除く全教職員が任期制の下にあり、病気休職は契約更新の拒否等による失職につながる可能性があるなど、休職は必ずしも安心して療養を行う環境には結びつかない懸念がある。休職に至る以前の段階でのケア、更にはメンタルヘルス等の問題が引き起こされないような労働環境、職場環境の構築を含む労働安全対策としての総合的対応が必要であり、これらの体制整備のため、職員組合と協議を行うよう、改めて要望する。

Ⅱ.人事制度等
4.任期制の廃止について
 現在、医療技術職を除く全職員に適用されている任期制に関しては、その法的根拠は曖昧であり、国会においてもその問題点が指摘されている。
第1期中期計画期間が終了し、大学としての長期的な人事政策としても、職員の積極性やインセンティブを高める効果はかならずしも期待できず、法人化後絶えることのない職員の病気休職や退職に象徴されるように、かえってマイナスの影響の方が大きいことが明らかになったと考える。
 大学の本来の目標である、質の高い教育研究の実現のためにも、本学の第1期中期計画期間の実績、民間企業の人事政策での教訓や他大学の実態を踏まえ、任期制を廃止、より適切な人事政策を検討するよう要望する。

5.契約職員・嘱託職員雇い止め制度廃止について
 契約職員、嘱託職員の多くは、実質的には不足する正職員の業務を担っており、雇い止めの強行は大学自身の経営力、大学間競争力にマイナスの影響を与えずにいられない。競争的環境の下、高等教育機関としての活動レベルの維持・向上に必要な人的資源の確保に悩む多くの地方国大が制度の撤廃や弾力的運用に動く中、本学においては、医療技術系の嘱託職員に関して例外規定を活用した雇用の延長が認められ、さらに、昨年度から職員労働組合の取り組みの成果として、契約更新期間終了後の嘱託職員について再応募が認められたが、このような弥縫策ではなく、雇い止め制度自体を撤廃するよう要望する。また、再応募の結果採用された嘱託職員については、給与、休暇等がリセットされ、新規採用者と完全に同じ扱いとなっており、この点についても改善を要望する。

6.業務評価の適切な運用と本人公開の維持・改善について
 各職場における実際の業務評価の運用は、透明性の問題、客観性の確保など、その困難性が民間企業の多くの失敗事例を始めとして、広く指摘されているところである。
人事運用の失敗は、職場のモラール・業務能力の深刻な低下を招くばかりでなく、職員間の反目や間違いを指摘できないような非生産的な職場環境を生み出す温床となることも危惧される。
 評価制度の適切な運用、特に評価の客観性を担保するための評価者に対する専門的トレーニング及び評価の透明性を担保するための本人に対する一層詳細な評価情報(判断根拠に関する評価者の記述等)の公開を行うよう要望する。

7.紛争処理手続きにおける客観性の確保について
 本学におけるハラスメントや人事等に関する紛争処理に当たる委員会等は、基本的に学内者のみで構成されており、外部の弁護士等の客観的な第3者の参画が想定されていない。全員任期制という制度下においては、一般の教職員にとっては学内の幹部のみで構成される組織に対して各種の訴えを起こすこと自体ためらわれるケースがあり、紛争処理における客観性の確保、ひいては風通しのよい良好な職場環境の確保のために、これらの委員会等に客観的で大学及び設置者に利害関係を持たない第3者を加えるよう制度の改定を行うことを要望する。

8.契約職員の規程上への適切な位置づけについて
 これまでも職員組合が指摘してきたように、契約職員については、関係規程上に位置づけがなく、「公立大学法人横浜市立大学契約職員雇用要綱」なる根拠・手続きの不明な一枚の文書がその存在、雇用条件等の根拠となっている。このような状態はもちろん異常であり、規程上に明確に位置づけるよう要望する。また、その際、8時30分から5時15分までの勤務時間、週5日間勤務で残業もあるという雇用条件の契約職員を非常勤職員として扱うのはいかなる意味においても無理があり、当然、常勤職員として位置づけるよう要望する。

9.大学専門職制度の堅持と評価の客観性、透明性の確保について
 大学専門職制度は、本学の法人化に当たって大学職員の高度化、専門化の試みとして紛れもなく国内大学において先進的な取組であったが、実際には市派遣幹部職員によって制度運用段階で事実上存在しないか、単なるプロパー職員管理職に関する身分であるかのように変質させられた。さらに昨年度には、個別に一般事務職への身分変更か契約期間終了による雇い止めかを迫るなど、せ、職員制度を地方公務員制度に同一化させるがごとき動きが見られ、結果として本学の大学運営に関する告発本『キャリア妨害』の出版につながるなどの問題を生じている。
 大学専門職制度を堅持すると共に、その評価に当たっては、制度設計の趣旨に則り、その専門分野に関する業績・経験を有し、専門的見地から客観的に評価しうるものを参加させるなど、客観性・透明性を確保するための措置を取るよう要望する。

10.職場の職員配置内容を明確にすること
 職場の人員体制の明示は、労働環境を守る観点からも基本事項にとなる重要な問題である。職員の配置や配属のあり方においては、他大学等の調査をおこなうと共に、具体的に業務の実態を比較検討し、適切で働きやすい配置内容となるよう、要望する。また、昨年度要望に対する回答で「職員配置の変更等に際しては、職員組合とも協議してまいりたい」とされたが、実際にはその後、組合との協議は行われておらず、昨年度回答に従った対応を求める。

11.職員の配転基準の明確化について
 職員の配置基準についての骨格を明示するとともに組合と事前に協議するよう要望する。
職員配転に当たっては、職員のキャリア形成を図る観点からも、中・長期的な視点のなかで仕事に取り組めるような配転等の基準を要望する。

12.人材育成について
 本学に限らないが、公立大学における職員の育成は国立大学、私立大学に比べ大きく遅れをとっている。本学に関しては、人材の長期的育成と矛盾する全員任期制の存在が根本的な問題ではあるが、単なる資格取得などに留まらない、大学という独自のミッションと組織的特性を持った組織のスタッフとしての意識、能力の育成を目的として人材育成に取り組むよう要望する。

13.障害者の雇用について
 昨年度、多数の障害者の方が職員として雇用された模様であるが、これらの方のサポートが各部署任せになっているという指摘がある。大学としてのサポート体制等の現状について説明を行うよう要望する。

14.派遣社員の対応について
 各職場における派遣社員の配置においては、その必要性や運用の効果と課題を見極め、職場内で十分な論議をおこなうとともに、慎重な対応を要望する。また、職場における変更事項として、変更が生じた場合には組合に事前提案をおこなうよう要望する。加えて、昨年度センター病院における派遣社員の取り扱いに関して労基署の指導があった模様であるが、これを受け大学として派遣社員に関してどのような見直しが行われているのか、現状について説明を行うよう要望する。

15.教室業務に係る出張手続きについて
 昨年度、医学部教室における業務出張について、大学の出張として認められないケースがあり、事故の際の取扱等の問題もあり、大学の業務として事務手続き上も位置づけるよう要望を行った。この項については、改善が行われた模様であるという情報も一部から寄せられているが、全体の対応の確認が取れないため、改めて要望を行う。

Ⅲ.コンプライアンス
16.コンプライアンス重視の経営の確立について
 法人化以後、学位授与等を巡る問題などで本学のコンプライアンスが問題となった。その一方で労働三法を始めとする労働関係法規に関する法人化以降の本学の対応の問題は、社会的には明らかになっていないため批判を受けるようなことにはなっていないが、非常に問題のある状態が続いている。
 これまでの労基法の改正に対する対応や育児休業・介護休業等に関する法改正に対する対応にも現れたように、法人化された大学においては(地方公務員法等ではなく)基本的に民間企業と同様の労働関係法規が適用されるにもかかわらず、そもそも関係法規をきちんと読んでいないと思われるケースや、民間の雇用の基本的ルールである「契約」という概念を理解していないのではないかと思われるケースなど、法人化された大学の運営の前提となる法的リテラシーに関して担当部署、市派遣幹部職員等の理解には危惧を覚えざるを得ない。本来の意味でのコンプライアンス(法令に則った組織運営)を徹底させるよう要望する。 

Ⅳ.給与等
17.給与システム等人事システムの信頼性の確立について
 昨職員組合のチェックオフに関する誤り(職員組合とは何の関係もない付属病院教員が何故か大量に職員組合員として登録、問題発覚の翌月も同様のミスが繰り返され、しかも原因は最終的に組合に対し明らかにされていない)や福浦キャンパスの臨床系教員の諸手当について間違いが頻発しているなどの状況は、給与システム等人事システムの信頼性に対し不安を覚えさせるものである。以上については当事者の組合や教員側が気づけば是正可能な問題ではあるが(もちろん本来あってはならないミスである)、一般的な月々の給与・手当等の支給額が正確かどうかなどは各教職員にとって確認の困難な問題であり、信頼しうるシステムの存在は教職員が安心して業務に取り組むための大前提である。給与システム、給与等の処理に関する作業手続き等人事システムの信頼性の確立を要望する。
 この問題については、今年度、職員組合が協議要求書を提出しているにも拘らず、いまだに協議が実現していない。関係システムの更新が予定されているとのことであるが、問題は情報システムのみに帰すべきものとも思われず、協議要求に応ずるよう求める。

Ⅴ.入試業務
18.昼食時間中の拘束性の高い入試業務においては、従事者に弁当を支給することについて
 入試の実施に際しては、安全・公正な実施環境の保持のため、従事者の不要な外出を制限し、試験本部等の限られた場所と時間において、拘束性の高い状態で昼食を取れるように配慮する必要がある。2年前に公費での弁当支給が一律に認められなくなったが、実情に応じて必要な弁当の公費負担を認めるように要望する。
 特に、全国一律にタイトな実施時間が定められている事などにより、円滑な実施の為には組織的な弁当の手配が不可欠となっている大学入試センター試験においては、現状は従事者から私費負担で代金徴収を徴収して対応しているが、金銭管理や運営負担などの点から看過しがたい問題であり、すみやかな協議を求める。

Ⅵ.施設整備
19.施設整備・管理について
 金沢八景キャンパスにおける校舎の建て替え、耐震工事等が計画されている模様であるが、これらの計画及びその前提となる本学の施設整備に関する中長期的考えについて、学内に対する説明や学内外に対する情報公開を要望する。

Ⅶ.危機管理
20.災害発生時等の対応について
 夏季の節電への取り組みなどにおいても同様の傾向が見られたが、本学の災害発生時の対応について、本来大学として責任を持った統一的な対応が求められる場面、例えば先日の台風15号接近時の対応などにおいて、実際には課、係といった個別部署単位での判断に任されている事例があるようである。学生はもちろんのこと、勤務する教職員の安全の確保という観点から、単なる文書としての危機管理マニュアルの作成に止まらない現実レベルでの実効的な対応が確保されるよう、責任ある体制の確立を要望する。また、関連して現状においては大学として把握していないとされている非常勤職員、派遣社員等の各部署での配置状況について、大学として統一的に把握するよう要望する。

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