1.働きやすい職場環境と職員参加の拡大について
国立大学法人制度・公立大学法人制度の発足から6年が過ぎ、大学を巡る環境は一層厳しさを増している。高等教育機関としての総合的な経営力が問われる中、特に本学においては、大学法人制度の想定を超えたレベルの設置者による直接コントロールの強化・拡大と極端なトップダウン型経営の導入により、従前より公立大学の弱点とされていた事務局機能や適切なトップダウンとボトムアップの組み合わせが不可欠な教育研究の改善等において深刻な問題を抱えている。
本来の公立大学法人として、大学の全職員が大学の民主的な運営と教育研究への取り組みに積極的に関われる環境整備と職場内におけるコミュニケーションの拡充が重要であり、教職員間のコミュニケーションを高めながら、多くの大学職員の理解と協力体制のもとに、大学教育への取り組みが進むよう運営の改善と取り組みを要望する。
【当局回答】市民が誇りうる、市民に貢献する大学となるよう、また、市民から信頼される大学として、持続可能な経営を確立していくために、所属する教職員が一丸となって大学運営に取り組んでまいりたい。【コメント】毎年行っている要求ですが、今年度は特に現行中期目標・計画の終了と次期中期目標・計画の策定を控えた重要な年です。昨年度までの、要求自体に全く回答していない、問題など存在していないというかのような回答に比べるとやや丁寧な内容となっています。要求自体には相変わらず直接は回答していませんが、教職員が一丸となって大学運営に取り組むという姿勢が表明されており、今後はこの点が単なる言葉だけのものとならないよう要求と監視を続けていきます。
2.超過勤務への対応について
昨年来、手当圧縮等の要請からくるものと思われるが、超過勤務の抑制が行われている。もちろん、超過勤務自体は削減することが望ましいが、その方策は多く個人の努力に帰せられており、組織としての合理的・効率的なマネジメントの遂行という観点が薄く、事実上のサービス残業の強制につながりかねないものとして強く懸念する。業務と残業の実態について把握と公表を行うと共に、現場の職員の要望に基づき、私立大学に比べ著しく非効率的と思われる事務局内部の意思決定や業務執行のプロセスの効率化に努めるよう要望する。
【当局回答】超過勤務の削減につながる事務改善の実績もあげられており、引き続き、改善に努めてまいりたい。【コメント】「事務改善の実績」というものが具体的にどのような指標に基づくもので、どの程度それが改善したとされているのかは不明ですが、引き続き現場の職員の要望に基づく改善という観点からの業務の改善やサービス残業の抑止の要求を続けていきます。
3.任期制の廃止について
現在、医療技術職を除く全職員に適用されている任期制に関しては、その法的根拠は曖昧であり、国会においてもその問題点が指摘されている。第1期中期計画期間の終わりを迎え、大学としての長期的な人事政策としても、職員の積極性やインセンティブを高める効果はかならずしも期待できず、法人化後絶えることのない職員の病気休職や退職に象徴されるように、かえってマイナスの影響の方が大きいことが明らかになったと考える。
大学の本来の目標である、質の高い教育研究の実現のためにも、本学の第1期中期計画期間の実績、民間企業の人事政策での教訓や他大学の実態を踏まえ、任期制を廃止、より適切な入事政策を検討するよう要望する。
【当局回答】職員の任期制度は、自発的な能力開発を動機づけ、職業人としての知識や経験の幅を広げていくことを趣旨としたものであり、今後も継続してまいりたい。【コメント】もともと公立大学の大きな弱点として事務局の能力の低さが指摘されていましたが、法人化以降、この点における国立大学、私立大学との格差はさらに拡大しつつあります。自治体職員の派遣による事務局経営を行っている公立大学ではその大学職員としての専門性の欠如と大学に対するロイヤリティや熱意の欠如が、プロパー職員の採用を進めている公立大学ではプロパー職員の“下請け”扱いと大学職員としての育成の欠如が問題となっています。「自発的な能力開発を動機づけ、職業人としての知識や経験の幅を広げていくこと」になど全くつながっていない横浜市大の現実に基づき、引き続きその廃止を求めていきます。
4.契約職員・嘱託職員雇い止め制度廃止について
契約職員、嘱託職員の多くは、実質的には不足する正職員の業務を担っており、雇い止めの強行は大学自身の経営力、大学間競争力にマイナスの影響を与えずにいられない。競争的環境の下、高等教育機関としての活動レベルの維持・向上に必要な人的資源の確保に悩む多くの地方国大が制度の撤廃や弾力的運用に動く中、本学においては、医療技術系の嘱託職員に関してのみ例外規定を活用した雇用の延長が認められているが、このような弥縫策ではなく、雇い止め制度自体を撤廃するよう要望する。
【当局回答】規程に基づく運用を基本としつつ、適切な対応に努めてまいりたい。【コメント】今回の職場諸要求提出後に、雇止めとなる嘱託職員に関して、引き続き嘱託職員の採用が行われる職場については再応募を認めるという制度運用上の変更が行われました。この点は、これまでの職員組合の取り組みが実ったものとして一定の評価をしますが、それでも嘱託職員、契約職員が引き続き雇止めという制度上の危険にさらされていることに変わりはありません。今後も雇止め制度の廃止を求めていきます。
5.業務評価の適切な運用と本人公開の維持・改善について
各職場における実際の業務評価の運用は、透明性の問題、客観性の確保など、その困難陛が民間企業の多くの失敗事例を始めとして、広く指摘されているところである。人事運用の失敗は、職場のモラール・業務能力の深刻な低下を招くばかりでなく、職員間の反目や間違いを指摘できないような非生産的な職場環境を生み出す温床となることも危惧される。
評価制度の適切な運用、特に評価の客観性を担保するための評価者に対する専門的トレーニング及び評価の透明性を担保するための本人に対する一層詳細な評価情報(判断根拠に関する評価者の記述等)の公開を行うよう要望する。
【当局回答】人事考課制度については、昨年度から全職員に開示とすることで、人材育成や能力開発をより効果的に行うことを趣旨としている。引き続き、評価の透明性や客観性の確保や考課者研修にも取り組んでまいりたい。【コメント】この問題については、現実に複数のトラブルが発生しています。「全職員に開示」されるのはあくまでも評価結果だけで、その評価が適切なものであるかどうかを検証するために必要な評価の判断根拠に関する評価者の記述は非公開のままです。「評価の透明性や客観性の確保や考課者研修」が適切なものか検証するためにも、引き続き評価の判断根拠に関する評価者の記述部分の公開を求めていきます。
6.紛争処理手続きにおける客観性の確保について
本学におけるハラスメントや人事等に関する紛争処理に当たる委員会等は、基本的に学内者のみで構成されており、外部の弁護士等の客観的な第3者の参画が想定されていない。全員任期制という制度下においては、一般の教職員にとっては学内の幹部のみで構成される組織に対して各種の訴えを起こすこと自体ためらわれるケ-スがあり、紛争処理における客観性の確保、ひいては風通しのよい良好な職場環境の確保のために、これらの委員会等に客観的で大学及び設置者に利害関係を持たない第3者を加えるよう制度の改定を行うことを要望する。
【当局回答】プライバシーを保護し、客観性が確保された制度運用に努めてまいりたい。【コメント】プライバシーの保護自体は当然のことであり、それを理由に紛争手続きに学外の弁護士等の第3者の参画を拒むことは完全に筋違いです。むしろ、この種の組織内部における紛争に中立的な立場の組織外の法律の専門家等を加えることは当然のことであり、学内の人間だけでこの種の組織を構成することは紛争処理手続きとしての客観性、ひいては有効性を失わせるものです。引き続き客観的で大学及び設置者に利害関係を持たない第3者を加えるよう要求していきます。
7.契約職員の規程上への適切な位置づけについて
これまでも職員組合が指摘してきたように、契約職員については、関係規程上に位置づけがなく、「公立大学法人横浜市立大学契約職員雇用要綱」なる根拠・手続きの不明な一枚の文書がその存在、雇用条件等の根拠となっている。このような状態はもちろん異常であり、規程上に明確に位置づけるよう要望する。また、その際、8時30分から5時15分までの勤務時間、週5日間勤務で残業もあるという雇用条件の契約職員を非常勤職員として扱うのはいかなる意味においても無理があり、当然、常勤職員として位置づけるよう要望する。
【当局回答】契約職員雇用における必要事項については、契約職員雇用要綱で定めるもののほか、契約職員の就業に関する事項は、非常勤職員就業規則で位置づけている。【コメント】地方公務員は、その存在と職務権限を法令及び条例に依拠しているはずですが、大学に出向している横浜市職員にはこの法令等に関する意識の点で奇妙な傾向を示す職員が多々見られます。上でも指摘したように、職員組合が入手した「公立大学法人横浜市立大学契約職員雇用要綱」には誰がいかなる権限において定めた文書なのかが全く記載されていません。また、非常勤職員就業規則は一読すれば明らかなように嘱託職員を対象として制定された規則です。何時からこのようなことになっているのかは不明ですが、横浜市大では学則、規程等の組織のルールの作成において問題がある状況が続いており、契約職員の位置づけはその一つです。引き続き契約職員に関する適切な規程上の位置づけを求めていきます。
8.大学専門職制度の堅持と評価の客観性、透明性の確保について
大学専門職制度は、本学の法人化に当たって大学職員の高度化、専門化の試みとして紛れもなく国内大学において先進的な取組であったが、実際には市派遣幹部職員によって制度運用段階で事実上存在しないか、単なるプロパー職員管理職に関する身分であるかのように変質させられ、さらに次期中期計画においては制度自体を消滅させ、職員制度を地方公務員制度に同一化させるがごとき動きが見られる。大学専門職制度を堅持すると共に、その評価に当たっては、制度設計の趣旨に則り、その専門分野に関する業績・経験を有し、専門的見地から客観的に評価しうるものを参加させるなど、客観性・透明性を確保するための措置を取るよう要望する。
【当局回答】大学専門職の評価についても、客観的で公平な手続きを実施しているが、要望の趣旨も含め、引き続き適切な対応に努めてまいりたい。【コメント】大学専門職を消滅させようとする動きについては、これまで当局側は「そのようなことは決まっていない」としてきましたが、実際には今年度更新の大学専門職に対して「理事長(ないしは人事委員会)が大学専門職の廃止を決定した」と言って、密室で一般事務職への転換か退職を迫るという不当労働行為を行っています。このような不当な行為には断固として抗議し闘います。
9.職場の職員配置内容を明確にすること
職場の人員体制の明示は、労働環境を守る観点からも基本事項にとなる重要な問題である。職員の配置や配属のあり方においては、他大学等の調査をおこなうと共に、具体的に業務の実態を比較検討し、適切で働きやすい配置内容となるよう、提案と説明を要望する。
- 各職場における職員の配置状況と内容の実態について、明確に組合に説明・提案するよう要望する。
- 職員配置の変更に当たっては、組合協議事項であり事前に提案をおこなうよう要望する。
【当局回答】引き続き、効率的な執行体制とするとともに、職員配置の変更等に際しては、職員組合とも協議してまいりたい。【コメント】法人化後、組合を無視、軽視するような大学経営が続いてきましたが、職員配置の変更等に関して職員組合と協議していきたいという約束が取り付けられたのは大きな成果です。職場において配置の変更等に関して不安や不満をお持ちの方は、この機に是非職員組合に加入してください。
10.職員の配転基準の明確化について
職員の配置基準についての骨格を明示するとともに組合と事前に協議するよう要望する。 職員配転に当たっては、職員のキャリア形成を図る観点からも、中・長期的な視点のなかで仕事に取り組めるような配転等の基準を要望する。
【当局回答】職員の異動は、人事異動の基本方針に示しているが、今後人材育成プランを策定する中で、人材育成策やOJTの拡充につなげていくよう努めてまいりたい。【コメント】「3.任期制の廃止について」の項で触れましたが、公立大学の職員育成には大きな問題があることが、文科省や高等教育研究者をはじめとする大学関係者にも認識されつつあります。人材教育プランの策定内容に注意を払っていきます。
11.派遣社員の対応について
各職場における派遣社員の配置においては、その必要性や運用の効果と課題を見極め、職場内で十分な論議をおこなうとともに、慎重な対応を要望する。また、職場における変更事項として、変更が生じた場合には組合に事前提案をおこなうよう要望する。
【当局回答】人材派遣については、引き続き、適切な運用に努めてまいりたい。【コメント】派遣社員については、嘱託職員、契約職員とともに各職場で大きな役割を果たしているものの、職員組合としては組合員がいないこともあってその現状についても満足に把握できていない状態です。今後、その把握に努めていきたいと考えています。
12.教室業務に係る出張手続きついて
医学部教室における業務出張について、大学の出張として認められないケ-スがある。事故の際の取扱等の問題もあり、大学の業務として事務手続き上も位置づけるよう要望する。
【当局回答】具体的な内容を確認のうえ、適切な事務手続きに努めてまいりたい。【コメント】今後、この回答を受けて適切な手続きが取られるか注視していきます。
13.コンプライアンス重視の経営の確立について
法人化以後、学位授与等を巡る問題などで本学のコンプライアンスが問題となった。その一方で労働三法を始めとする労働関係法規に関する法人化以降の本学の対応の問題は、社会的には明らかになっていないため批判を受けるようなことにはなっていないが、非常に問題のある状態が続いている。最近数ヶ月の有給休暇の時間単位取得にかかる労基法の改正に対する対応や育児休業・介護休業等に関する法改正に対する対応に現れたように、法人化された大学においては(地方公務員法等ではなく)基本的に民間企業と同様の労働関係法規が適用されるにもかかわらず、そもそも関係法規をきちんと読んでいないと思われるケースや、民間の雇用の基本的ルールである「契約」という概念を理解していないのではないかと思われるケースなど、法人化された大学の運営の前提となる法的リテラシーに関して担当部署、市派遣幹部職員等の理解には危惧を覚えざるを得ない。本来の意味でのコンプライアンス(法令に則った組織運営)を徹底させるよう要望する。
【当局回答】コンプライアンスに対する意識をより高めていくことが重要と認識しており、要望の趣旨も含め、適切な対応に努めてまいりたい。【コメント】「要望の趣旨も含め、適切な対応に努めてまいりたい」という回答が本当に守られるかどうか、具体的な今後の問題への取り組みを通じ確認していきます。
14.給与システム等人事システムの信頼性の確立について
今年度の2度に渡る職員組合のチェックオフに関する誤り(職員組合とは何の関係もない付属病院教員が何故が職員組合員として登録、問題発覚の翌月も同様のミスが繰り返され、しかも原因は最終的に組合に対し明らかにされていない)や福浦キャンパスの臨床系教員の諸手当について間違いが頻発しているなどの状況は、給与システム等人事システムの信頼性に対し不安を覚えさせるものである。以上の2つのケースについては当事者の組合や教員側が気づけば是正可能な問題ではあるが(もちろん本来あってはならないミスである)、一般的な月々の給与・手当等の支給額が正確かどうかなどは各教職員にとって確認の困難な問題であり、信頼しうるシステムの存在は教職員が安心して業務に取り組むための大前提である。給与システム、給与等の処理に関する作業手続き等人事システムの信頼性の確立を要望する。
【当局回答】システムの見直しについて検討をしているところであり、正確な給与事務に努めてまいりたい。【コメント】給与・賞与等の正確な支払いは高等教育機関としてのガバナンス云々以前の問題であり、問題が起きないか引き続き注意を払っていきます。また、この問題で不信や疑問をお持ちの方は職員組合にご連絡ください。
15.昼食時間中の拘束性の高い入試業務においては、従事者に弁当を支給することについて
入試の実施に際しては、安全・公正な実施環境の保持のため、関係者の不要な外出を制限し、また実施時間割の関係から、関係者が試験本部等の限られた場所と時間において、拘束性の高い状態で昼食を取る必要がある。
昨年度、弁当の公費負担が認められず、関係者から私費負担で代金を徴収して対応したが、このような金銭管理を担当者が行わなければならないことは好ましいことではなく、従事者に対し弁当の支給を行うよう要望する。
【当局回答】現状でご理解願いたい。なお、金銭の扱いは適切な管理とするよう努めてまいりたい。【コメント】この問題については現在当局に協議を要求しているところですので、後日改めて皆様にはお伝えします。
16.施設整備・管理に関する体制の整備
金沢八景、福浦キャンパス等における施設の整備や管理体制は整理されておらず、日常的な施設設備の利用や管理、将来に向けた適切な整備において問題がある状態となっている。権限と責任を明確化した体制の整備を行うよう要望する。
【当局回答】各キャンパスにおける管理体制のもと、施設整備・管理を行っている。【コメント】そもそも施設自体が横浜市の所有で大学の自己所有ではないという、これまた国公立大学法人に類例のない状態であり、将来整備も自分で決められない有様なのですが、利用、管理自体についても錯綜した複雑なものとなっています。今後、必要があれば個別の具体的な問題について要望・要求を行っていきます。
17.福浦キャンパストイレの洋式化について
福浦キャンパスの医学科の建物は、一部整備が行われたものの、洋式トイレの比率が少ない状況にある。学生利用への配慮を含め、引き続きトイレの洋式化を図るよう要望する。
【当局回答】各キャンパスにおける管理体制のもと、施設整備・管理を行っている。【コメント】この問題については、当局の回答以前に、整備計画自体は既に作られているという指摘が福浦の職員の方からありました。ありがとうございました。今後は計画通りの整備がされるかどうか注視していきます。
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